海の見える町 (2)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/09/04 09:31:24
たぶん寝たのがまだ9時ころだったので、翌朝はずいぶん早く6時ころには目が覚めた。ワインを相当たらふく飲んだのに、二日酔いにはなってなくて、むしろ腹が減っていた。昨日、あれだけ食べた料理はどこに消えたんだろう、と思うほど健康的に腹がぐう、と鳴った。
歯磨きをして顔を洗い、トイレへ行く。一通りの朝の儀式を済ませてから、着替えて一階へ降りた。
主人はもう朝食の準備を始めているらしく、なにやらいい匂いと活気のある料理をしてる音が聞こえた。
主人はおれが降りてきたことに気がついたらしく、エプロン姿でキッチンから出てきた。
おはようございます。よく眠れましたか?今朝食を作ってますから、浜辺を散歩でもしてらっしゃい。朝の海は特にいいですよ。
教えてもらった道順の通りに歩くと、6~7分で浜辺についた。
海はスカッと晴れ渡り、弓なりに続く長い浜辺と、水平線が遠くまで見渡すことができた。
嬉しいのはおれの住む街の海とは違って、砂浜に足跡が無いことだ。たった一晩の間、風に吹かれただけで足跡が全て消えてしまう程度しか、人間の数が少ないのだ。
昨晩の主人の話では、この辺りの海は大洋から流れ込んで来る5つの大きな海流が混ざり合う地点で、他では見られないいくつかの特徴があるそうだ。
海の色はわずかに黄緑がかっており、昨日食べたフルシアンテと似た柑橘類の匂いが、言われないと気づかないほどではあるが、潮の香りに混ざっていた。
浜辺には見渡す限り人がおらず、
ゆうゆうとした贅沢な気分で散歩していた。
歩いてるときのくせで、ポケットからタバコを出して咥えた。火を付けようとして、やっぱりやめた。今タバコを吸うのがもったいないように思えたのだ。
水平線の辺りの上空に海鳥が群れていて、昨日TVで観たエスパーかな、と思って目を凝らした。遠くてよく見えないけど、たぶんカモメだろう。
群は徐々にその数を増し、5分も見ていると相当な数になっているようで、その濃度が増し、何か黒く大きな生き物がその上空一帯を支配しているように見えた。
きっと相当魚影が濃いのだろう。
やはりとても豊潤な海なんだな、と思って海を眺めていた。
何か足元にちらりと影が動いたような気がして振り向くと、犬がいた。
白い中型犬で、たぶん雑種だろう。犬の素直な性格そのままのつぶらな目が可愛らしく、よお。と声をかけた。
犬はおしりをぺたんと砂浜につけて、しっぽをふりふりしながらおれをじっと見つめている。
この町の子かい?と、聞くと、
私ははつみ。あなたは?
こんなふうに思い切り目を見られるのはどぎまぎするけど、嫌な感じではなかった。
いつまでここにいるの?と聞かれた。
決まっているわけじゃないけど、もう少し滞在しようと思ってるよ。あの宿の食事も美味しいしね。と答えると、じゃあまた会うかもね。バイバイ。と言って、さっさと帰っていった。
なんだか、突然にきれいなものを手に握らされて、あっさりとそれをまた取られたような気分だった。
読んでいただいて、こちらこそありがとうございます!
でも、体調とかしんどい時に無理して読まないでくださいね〜!
気軽な気持ちでちょっと楽しんで読んでいたけたら嬉しいです。
褒めていただいて、嬉しいです!
ありがとう!!
読んでて爽やかな気分になりました。ありがとうございます♪
最終行が最高
ありがとうございます(^-^)
また続き載せますので、気が向いたら読んでください。