小人の名前 (5)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/08/18 11:46:12
出会った時、彼女は自分の名前を覚えていないと言った。
もしかしたら、ぼくに名前なんて無いかも知れないよ。と、さみしそうに言っていた。しばらくは、ねえ、とか、君、なんてふうに呼んでいたけれど、彼女は自分の名前をほしがった。
おれに付けてほしいと言うので、二人で考えてみよう。と提案した。
彼女がいい。と言ったのは、エルザ、フィエゴ、フローラなどと言った名前だったけど、おれには彼女にぴったりだとは思えなかった。
そして、いつものボッツェリーニのレストランへ夕食へ出かけた。
(彼女が大立ち回りのケンカをしたよりももうちょっと前の話だ。)
みんなにアイデアをもらおうと、彼女の名前についてのことを話した。
みんなはりきって、じゃあ素敵な名前を考えよう、と店主のボッツェリーニもウエイトレスの女の子もワインをしこたま飲んでいた赤ら顔の牧場のおじさんもしわくちゃのばあさんも頭を寄せ合って、ああでもないこうでもないと話し合った。
そして、そもそも彼女はどこから来たんだ?という話になった。
彼女自身にもよくわからないのだった。
なぜなら、浜辺で気絶して倒れていたところをおれに助けられたときの、それ以前の記憶が無いらしい。
そのときは絶望と孤独だけがぼくの全てだったんだ。と彼女は言った。
そのことを聞いて、レストランのみんなはしょんぼりしてしまった。
みな少しうつむいてしんみりとしているとき、ウエイトレスのそばかすの女の子が口を開いた。
「彼女はきっと女神だわ。ほら、この地方の神話の女神。
その女神は海から生まれたことになっているじゃない。
だから、彼女も海から生まれた女神なのよ!」
それを聞いて、店主のボッツェリーニの赤ら顔のおじさんもしわくちゃのばあさんも口々に賛同した。
その女神の名前はミルと言った。
こうして、彼女の名前はミルになったんだ。
本当は彼女はこの北欧の国の海ではなくて、日本の海の浜辺で出会ったから、そのウエイトレスのそばかすの女の子の言ってることは勘違いしているのだが、そんなことよりも、その名前の響きと、海の女神という意味が、彼女にぴったりで、おれも彼女もその子がそう言ってくれた瞬間にもうとっても気に入ったんだ。
ついでにおれの名前はさくみだよ。
女みたいな名前だけど、れっきとした男だ。
これで二人の名前についてのことはおしまいだ。
今は、ローレンス.ブコワスキーに会うために、パリからの列車に乗ってる。
彼の住んでいるアルルへ行くためにはまず、パリから2時間半かけてアビニョンへ行く。
アビニョンに着いたら、バスに乗り換えてアルルへと向かう。
実は昨日の夜、オルセー美術館に忍び込んで、はしゃぎすぎて警備員に見つかったんだ。
二人とも大慌てで美術館から逃げ出して、夜の街へ飛び出した。
なんとか逃げおおせたからよかったけど、彼女はずっとおなかをかかえて笑っていた。
バーへ行って、ワインを飲んだ。
珍しくミルはたくさんのワインを飲んで、すごくご機嫌になったけど、あとで気分を悪くしてしまった。
そんなわけで今日は疲れた身体をゆっくり休ませるためにも、アビニョンに着いたらゆっくりと休憩して、明日の朝にバスに乗ることに変更した。
ローレンスにも電話をしてその旨を伝えて謝ると、急に変更したことよりも彼女の体調を心配してくれた。
ホテルのキッチンを借りて、おれはスーパーで買ってきた材料で豆腐サラダを作った。
近所の中華屋で買った胃に優しい中華粥もある。
ミルは今日は少しおとなしく、きちんと全部料理をたいらげた。
すごく美味しかった。ありがとう。
彼女が急にしおらしくなって、珍しく素直にそんなことを言うもんだから、ドキドキしたんだ。
ありがとうございます(^ー^)
ちょっとおれも考えてみますね。
観る
視る
診る
美流
漢字表記だと、、最後の感じがいいかな?
早速、ミルちゃんって呼んでくれて嬉しいです〜(^ー^)
確かに、どこから来たのかも気になりますね。
ミルちゃんがどこから来たのか気になるところです。