Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


小人への手紙 (4)

ローレンス.ブコワスキーから返信の手紙が届いた。
手紙を出してから10日後だ。
便せんを開けて二人でそれを読んだ。

「あなたたちにいただいた内容と同じような手紙を年に一度は受け取ります。その全てが空想のものか、からかい半分なものばかりでした。
しかし、あなたたちの手紙のように小人の言語で手紙をつづったものは初めてです。
そればかりではなく、何よりあなたたちの真実味が文章より、便せんより、伝わってまいりました。私も一介の物書きとして、その程度のことは感ずることが出来るのであります。そして、万が一いただいた手紙の内容が空想上のものだとしても、実に興味深いものでありました。実は私も私のパートナーであったメリー・リリアンも、あなたたちと同様に同じような体験をもつ他の人間と出会ったことがありませんし、また、他の妖精に出会ったこともありません。
私はもう物書きも引退し(彼女が亡くなってからはまるで書く気が起きないのです)、おいぼれたじいさんで、隠居生活の身であります。
時間ばかりはいつでもあふれる泉のごとくありますので、いつでも訪問なさってください。その際は妖精に教わった料理をふるまいたく思っておりますので、事前に電話を一本いただけると十分なおもてなしの準備ができるのでありがたく存じます。
(33)42-499-9995
お会い出来ることを楽しみにしております。
ローレンス.ブコワスキー                        」


おれたちはすごくすごくうれしくなって、彼女なんて、飛び跳ねて喜んでいた。
早速、日取りを決めた。
週末にダンスパーティがあって、彼女がいなくてはそのパーティは盛り上がらないので、その後、来週の月曜日に出発することに決めた。
少し緊張しながら、電話をかける。
7回コールしてから、相手が出た。
ローレンス本人だ。
手紙を出したものだと伝え、来週の月曜日にここを発つので、水曜日にお邪魔したいと伝えた。
ローレンスは教養のある老人特有の落ち着いた声で、
わかりました。
とこたえた。
彼女が、ぼくにも電話をかわってくれよ。ってせかした。
電話をかわってあげると彼女は小人の言語で、
ぼくはあなたと出会えることをとても嬉しく思っているわ。ありがとう。
と伝えた。
驚いたことにローレンスはおれと同じように小人の言語をすんなりと理解した。

週末のダンスパーティでは彼女は風のように踊り、ときに花火のように弾け、人々をおおいにわかせた。
彼女がダンスは、とても貴重なワインをこぼしてしまうことと同様に、ひとときでも目を離すことはもったいないとさえ感じさせるものだった。
もしも、彼女がブロードウェイにでも出たら、間違いなく一躍トップスターになってしまうことだろう。
もちろん、そんな気は彼女にもおれにもさらさら無いし、彼女にとってはブロードウェイなんかより自分の力を思い切り解き放って、地元のみんなを喜ばせることこそが何より魅力があり幸せなことなのだ。
その日の彼女は、いつもより長く踊っていた。
彼女のダンスを見たものが彼女のダンスを形容する時、誰だって詩人にならざるを得なかった。

その夜のダンスパーティは誰もがワインとダンスに頬を赤らめて、恋人たちはキスをしてチークを踊り、子供たちは跳ね回り、オヤジたちは、大いに酒を飲んで笑っていた。
みんなが幸せな夜だった。


おれたちは月曜日の早朝、特急電車に乗り、翌朝にパリへ着いた。
ローレンスは南フランスに住んでいるので、まずはパリに行く必要があった。
二人とも飛行機よりも電車を選んだ。
時間はかかったが、ヨーロッパを電車で旅してみたかったのだ。
予想通り、とてもワクワクする電車の旅だった。
そのまま一日パリを観光して、パリで1泊する。 

パリの夜、二人でセーヌ川沿いを散歩した。
オレンジ色の街灯でなにかゆらゆらと漂うような気持ちになって歩いていた。
しばらく歩くと左手にオルセー美術館が見えた。
彼女は悪い提案をした。
おれはその提案に乗った。
夜中、閉まっているオルセー美術館にしのびこんだのだ。
ふたりだけの美術館だった。
彼女はモネの睡蓮や傘を持つ女の絵を観て、とても嬉しそうに絵の前で踊った。
広い美術館には誰もいないから、彼女は広々とスペースを使ってのびのびと手足を伸ばして踊った。
くるくるくるくる、たっ、たっ、たっ、
壁一面の睡蓮の絵の前で踊る彼女は今までに観たどんな映画よりも素敵だった。


そういえば、おれと彼女の名前を紹介していなかった。
今度紹介することにしよう。

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2023/08/18 08:16
ルルルのルさん、

ユーレイルパスはワクワクしますね〜〜〜〜!!!

おれは当時、10カ国も回ったので、買ったような気もするけど、、ちょっと覚えてないです。
買ってないかな??

確かに!
妖精の言語、ぼんやりとしたイメージはあるのですが、どんなのなんでしょう?
この後の話で、どんな言語かに触れているか、ちょっと覚えてないですね〜。。
もし、触れてなかったら、そこについて書くのも面白そうです。
それをどう言語で表現できるか、ちょっと挑戦ですね〜。
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2023/08/18 08:13
べるさん、

確か、これを書き始めた初めは、おっしゃる通り、名前をあえて書かないことにしてたと思います。
でも、途中から、彼らに、特に小人のことがおれ自身好きになってきて、名前が欲しくなったんだと思います(^ー^)あと、読んでいてお気づきかもしれませんが、書き方のスタイルも少しづつ変わっているんですね。
初めは、あえてだいぶシンプルに説明をわざと落として書いていたのですが、二人の冒険が濃さを増していくごとに、その書き方より、もう少し詳細も書いていったほうが合ってるように思ったのですね。
そうすると、やはり、名前が必要になってくる感じだったと記憶してます。

そうなんですね〜!
おれもパリはそれほど濃くは滞在してなくて、また行きたい街の一つです〜!

はい、次回以降もまた読んでいただければ幸いです。
ただ、ノープレッシャーで。
(え〜と、英語で、ノープレッシャーは、、なんと言えば良いか、気軽に、とか、読まなきゃいけないなんて思わないで、気が向いたらって感じです)
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2023/08/17 21:52
ヨーロッパは、ユーレイルパスで、回った事がありまする
昔々のことですが、、

妖精の言語、、どんな感じなんだろう?

どんなお料理がでてくるのか、、楽しみです^^
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2023/08/17 18:52
そうそう、名前をあえて書かない形式なのかと思ってました。

彼女さんはホントにヤンチャですね(笑)そこが魅力だとは思いますが♬

フランスは昔ヨーロッパツアー行った時に確か1泊しただけで、パリしか行ってません。
でもタクシーのおじさんとかデパートの店員さんとか気さくに話しかけてくれて楽しかった覚えがあります^ ^

南フランスでのローレンスさんとのお話も楽しみにしてますね〜



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