刻の流れー65
- カテゴリ:自作小説
- 2023/04/29 17:11:31
店に戻った梶は5階のビデオ室に直行した。
中で作業していた男達が手を止め会釈する。
それを無視して、モニターの一つを調整し、表のホテルの一室を映し出した。
中で男が一人ドロのように眠っている。斎藤だ。
横浜の資料はもともと、神戸店がまとめ、送った物を元に作られている。
横浜の資料はもともと、神戸店がまとめ、送った物を元に作られている。
その二つのデータが相違するはずがない。この男は丸一日掛けてもそこに気付かないのだ。
「先が思いやられる・・・」
呆れたように呟く。
「先が思いやられる・・・」
呆れたように呟く。
資料の信憑性を疑うなら、その資料の出所をひとつひとつを調べる事が求められる。
「何時それを要求してくるかと待っていたが・・・」
斎藤の無能振りを横でゆっくり楽しんでやろうと思っていたのだが、井上医院で犬飼ルポライターに偶然出会い、状況が変わった。
「何時それを要求してくるかと待っていたが・・・」
斎藤の無能振りを横でゆっくり楽しんでやろうと思っていたのだが、井上医院で犬飼ルポライターに偶然出会い、状況が変わった。
梶はビデオ室を出ると今度は自分の部屋へ戻り電話を待った。
午後4時、田中の連絡時間だ。程なく電話のベルが鳴る。
「はい、梶です。」
「俺だ、斉藤はどうしている?」
田中の声は相変わらずいらついている。
「勝見議員の来店記録を確認しています。」
「そうか。」
「ところで、3代目・・・」
「なんだ?」
「人探しをしておいでと伺いましたが?」
「ほう、相変わらず情報通だな、」
「恐れ入ります。」
抑揚の無い声で梶が礼を言った。
「ねずみが2匹うろついているので、室長に処理を命じておる。」
田中は苦々しげに答えた。
「なるほど・・・」
いらつきの原因はそっちかと、梶はしばらく顎を撫でながら考えていたが、
「ルポライター、犬飼 明とその恋人ですな?」
と言う。田中はさほど驚いた様子でもなく、
「どこでその名前を調べた?」
と笑いながら聞き返した。
「情報室とは日頃から懇意にしておりますので。」
「ふん、まあいい。」
田中は深く追求せずに
「何か知っているのか?」
と、言葉を繋いだ。梶は
「私は犬飼と言うルポライターには面識がありませんが・・・」
と前置きして、
「三宮の井上病院で、車椅子の女を連れたそれらしい人物を見かけました。」
淡々と報告する。
「ううむ・・・」
田中はうなった。
「はい、梶です。」
「俺だ、斉藤はどうしている?」
田中の声は相変わらずいらついている。
「勝見議員の来店記録を確認しています。」
「そうか。」
「ところで、3代目・・・」
「なんだ?」
「人探しをしておいでと伺いましたが?」
「ほう、相変わらず情報通だな、」
「恐れ入ります。」
抑揚の無い声で梶が礼を言った。
「ねずみが2匹うろついているので、室長に処理を命じておる。」
田中は苦々しげに答えた。
「なるほど・・・」
いらつきの原因はそっちかと、梶はしばらく顎を撫でながら考えていたが、
「ルポライター、犬飼 明とその恋人ですな?」
と言う。田中はさほど驚いた様子でもなく、
「どこでその名前を調べた?」
と笑いながら聞き返した。
「情報室とは日頃から懇意にしておりますので。」
「ふん、まあいい。」
田中は深く追求せずに
「何か知っているのか?」
と、言葉を繋いだ。梶は
「私は犬飼と言うルポライターには面識がありませんが・・・」
と前置きして、
「三宮の井上病院で、車椅子の女を連れたそれらしい人物を見かけました。」
淡々と報告する。
「ううむ・・・」
田中はうなった。
石橋と梶を失ったのは倶楽部にとって大きな痛手たったのかもしれない。
この二人を手放してからクラブの裏の顔は確実に精彩を欠いている。
今のメンバーは道具としては動いても、適切な判断を行なわない。切れが無いのだ。
「わかった。斉藤が神戸にいるなら、あの男にやらせよう。」
「勝見議員の件はいかがなさいますか?」
「先にねずみ退治だ。」
「斎藤殿ならうまく処置するでしょう。」
梶が如才なく応える。
「ほう、そう思うか?」
「なんと言っても石橋室長の補佐だった人ですから、抜かりはないでしょう。」
田中は満足そうに
「そうだな。」
そう言って電話を切った。梶はすぐに何軒か続けさまに電話を入れ、それが終わると店用のタキシードをクロゼットからとり出してきた。
「勝見議員も、ルポライターも・・・」
鏡の前で蝶ネクタイを整えながら呟く
「斎藤には荷が重い・・・」
斎藤が失敗すれば田中が神戸の石橋や梶に助力を要求するのは目に見えている。
「三代目の要請とあれば、手を貸さぬわけにはいかんだろう・・・」
鏡に映る梶の無表情な白い顔からはその心中は決して計り知れないのだった。
「わかった。斉藤が神戸にいるなら、あの男にやらせよう。」
「勝見議員の件はいかがなさいますか?」
「先にねずみ退治だ。」
「斎藤殿ならうまく処置するでしょう。」
梶が如才なく応える。
「ほう、そう思うか?」
「なんと言っても石橋室長の補佐だった人ですから、抜かりはないでしょう。」
田中は満足そうに
「そうだな。」
そう言って電話を切った。梶はすぐに何軒か続けさまに電話を入れ、それが終わると店用のタキシードをクロゼットからとり出してきた。
「勝見議員も、ルポライターも・・・」
鏡の前で蝶ネクタイを整えながら呟く
「斎藤には荷が重い・・・」
斎藤が失敗すれば田中が神戸の石橋や梶に助力を要求するのは目に見えている。
「三代目の要請とあれば、手を貸さぬわけにはいかんだろう・・・」
鏡に映る梶の無表情な白い顔からはその心中は決して計り知れないのだった。