刻の流れー63
- カテゴリ:自作小説
- 2023/04/28 01:58:02
近くのハンバーガーショップで軽い昼食を済ませた後、要は手持ち無沙汰で興津の病室と待合室を行ったりきたりしていた。
「バイク雑誌でも持って来ればよかったな。」
本屋に買いに行こうかと思いをめぐらしている所に廊下の向こうから若い女を車椅子に乗せて男が二人歩いてきた。
すれ違うまでお互いに気付かなかったのが、急に同時に振り返り、
「要?」
「アキラじゃないか?」
と思わず大声を上げて看護婦達の顰蹙を買ってしまった。
「こ、こんなとこで何してんねん?」
「それはこっちのセリフだ!」
殴り合いのあとの苦い別れから5年を経てまさかこんなところで会う事になるとは思っていなかった二人は手を握り合って再会を喜んだ。
「要?」
「アキラじゃないか?」
と思わず大声を上げて看護婦達の顰蹙を買ってしまった。
「こ、こんなとこで何してんねん?」
「それはこっちのセリフだ!」
殴り合いのあとの苦い別れから5年を経てまさかこんなところで会う事になるとは思っていなかった二人は手を握り合って再会を喜んだ。
最初は余所余所しい態度で話し始めた要たちだがお互いに相手の気持ちを理解するにつれ、友を思いやる感情が誤解をまねいていた事実に気付くのだった。
5年前と変わらぬはにかんだ様なアキラの笑顔を見ながら要は沸々と煮え滾っていたあの頃の自分たちを急速に懐かしく思いだしていた。
5年前と変わらぬはにかんだ様なアキラの笑顔を見ながら要は沸々と煮え滾っていたあの頃の自分たちを急速に懐かしく思いだしていた。
真剣勝負で走った峠、一緒に入った銭湯、夢を語り合った古アパートの一室。
アキラと昔話に笑うと同時に要の心はあの頃に戻っていくのだ。
「足はもうええんか?」
何はさておきと、アキラが聞いた。
「足はもうええんか?」
何はさておきと、アキラが聞いた。
5年も経っているのだから、治っていないはずがないのに、アキラの中でも時間が止まっていたようだ。
「ああ。」
要が笑いながら右足をぽんぽんと叩いた。
「あのとき、アキラが俺を放り出してくれていなかったら・・・」
きちんと治さなければ後遺症が残ると言った原田の言葉を思い出し、要の目が潤んだ。
「ああ、あのときのパンチは痛かったぜ。」
と顎をさするアキラに
「すまなかった。」
要は素直に頭を下げる。
「おまえが原田さんに告げ口したと勝手に早とちりしちまった。」
恥ずかしさに目を足元に落としたまま続ける。
「おまえは何も喋らなかったって原田さんに聞いた時、ガックリきたよ。」
短い間の付き合いとは言え唯一の友達だったアキラ達と若気の至りで食い違ったまま離れ離れになっていたのだ。
「原田さんのこと悪く言われたからなあ、ついカッとなってもたんや。」
アキラは昔のように屈託なく笑う。
「ああ。」
要が笑いながら右足をぽんぽんと叩いた。
「あのとき、アキラが俺を放り出してくれていなかったら・・・」
きちんと治さなければ後遺症が残ると言った原田の言葉を思い出し、要の目が潤んだ。
「ああ、あのときのパンチは痛かったぜ。」
と顎をさするアキラに
「すまなかった。」
要は素直に頭を下げる。
「おまえが原田さんに告げ口したと勝手に早とちりしちまった。」
恥ずかしさに目を足元に落としたまま続ける。
「おまえは何も喋らなかったって原田さんに聞いた時、ガックリきたよ。」
短い間の付き合いとは言え唯一の友達だったアキラ達と若気の至りで食い違ったまま離れ離れになっていたのだ。
「原田さんのこと悪く言われたからなあ、ついカッとなってもたんや。」
アキラは昔のように屈託なく笑う。
5年のギャップが瞬く間に埋まっていく、要はそれが嬉しかった。
「足が治ってから、探したんだぞ。」
要は恨めしそうに友を見た。
「へへ、実はな・・・」
アキラが照れた顔になって答える。
「あれからすぐにスポンサーがついたんや。それで、東京へ出た。」
「へえ、やっぱりなあ。すごいや。」
要は目を輝かせて心から友を祝った。
「でもなあ、要。東京はほんまに凄いとこや。
「足が治ってから、探したんだぞ。」
要は恨めしそうに友を見た。
「へへ、実はな・・・」
アキラが照れた顔になって答える。
「あれからすぐにスポンサーがついたんや。それで、東京へ出た。」
「へえ、やっぱりなあ。すごいや。」
要は目を輝かせて心から友を祝った。
「でもなあ、要。東京はほんまに凄いとこや。
こっちとは比べもんにならん。
俺みたいなんがゴロゴロおるし、1年でスポンサーから外されてもた。」
アキラはさほど残念でも無いように言った。
アキラはさほど残念でも無いように言った。
4年経って、落胆の傷もかなり癒えている。
「それなら、さっさと帰って来ればよかったのに・・・」
「いや、意地でも帰れんし。しゃあないからバイク便のバイトをやっとったんや。」
「相変わらず苦労してるんだな。」
要が労る表情になった。
「なーに、苦労はこおてでもせえゆうて、死んだ親父がゆうとったわ。」
しんみりした会話を盛り上げようとアキラがまた元気よく笑った。
「そやけどな、今は、さっきの犬飼さんてルポライターに雇われてんねん。」
少し事実と違うがアキラは見栄を張った。
「それなら、さっさと帰って来ればよかったのに・・・」
「いや、意地でも帰れんし。しゃあないからバイク便のバイトをやっとったんや。」
「相変わらず苦労してるんだな。」
要が労る表情になった。
「なーに、苦労はこおてでもせえゆうて、死んだ親父がゆうとったわ。」
しんみりした会話を盛り上げようとアキラがまた元気よく笑った。
「そやけどな、今は、さっきの犬飼さんてルポライターに雇われてんねん。」
少し事実と違うがアキラは見栄を張った。
キラキラと輝いているアキラのその目が要には羨ましく映る。
うんうんと頷きながら、
「なぜ、神戸へ帰って来たんだ?取材?」
ルポライターの仕事がよく解らないまま、要が聞く。
「内緒やけどな、ひろみさんって女の人を守るためやねん。」
アキラが自分が守ってるように胸を張って言った。
「ひろみさんて さっきの女の人?」
「そうや 綺麗な人やろ。傍にいてた人が犬飼さんや。彼の彼女やねん。」
「なんかスパイ映画みたいだな、すごいなあ。」
要もだんだん興奮してきた。
「で、何から守らないとだめなんだ?」
「それは・・・ 言われへん」
とアキラは口を濁した。再会が嬉しいばかりに調子に乗ってしゃべりすぎた。
「なぜ、神戸へ帰って来たんだ?取材?」
ルポライターの仕事がよく解らないまま、要が聞く。
「内緒やけどな、ひろみさんって女の人を守るためやねん。」
アキラが自分が守ってるように胸を張って言った。
「ひろみさんて さっきの女の人?」
「そうや 綺麗な人やろ。傍にいてた人が犬飼さんや。彼の彼女やねん。」
「なんかスパイ映画みたいだな、すごいなあ。」
要もだんだん興奮してきた。
「で、何から守らないとだめなんだ?」
「それは・・・ 言われへん」
とアキラは口を濁した。再会が嬉しいばかりに調子に乗ってしゃべりすぎた。
東京から遠い神戸だし、心配は無いかもしれないが、相手はプロなのだ。
要にも危険が及ぶかもしれない。
要は、少なからず残念に感じたが、それ以上は聞かなかった。
アキラは、はっと気がついて背中に負っているバックパックを前に回した。中をゴソゴソひっくり返していたが、やがて随分すれ切れた封筒を探り当ててきた。
「これやこれや、長いこと気になっててん。」
と、要に渡す。
「なんだ?」
そういいながら受け取った封筒を開けると中に高額紙幣が何十枚も入っている。
「これは?」
要は顔を上げて不審そうにアキラの顔を見た。
「ほらあの時、お前金を置いていったやろ。」
「?・・・あ、ああ・・・」
それは喧嘩別れした夜、怒りに任せてアキラの部屋にばら撒いてきた金だった。要がすっかり忘れていた50万円をアキラは未だに後生大事に持っていたのだ。
要は顔が赤くなるのを感じた。
要は、少なからず残念に感じたが、それ以上は聞かなかった。
アキラは、はっと気がついて背中に負っているバックパックを前に回した。中をゴソゴソひっくり返していたが、やがて随分すれ切れた封筒を探り当ててきた。
「これやこれや、長いこと気になっててん。」
と、要に渡す。
「なんだ?」
そういいながら受け取った封筒を開けると中に高額紙幣が何十枚も入っている。
「これは?」
要は顔を上げて不審そうにアキラの顔を見た。
「ほらあの時、お前金を置いていったやろ。」
「?・・・あ、ああ・・・」
それは喧嘩別れした夜、怒りに任せてアキラの部屋にばら撒いてきた金だった。要がすっかり忘れていた50万円をアキラは未だに後生大事に持っていたのだ。
要は顔が赤くなるのを感じた。
アキラの真意もわからず友情を踏みにじった自分の行為が記憶の中によみがえってくる。
「もっとはよう、返したかってんけどな。おまえの住んどうとこがわからんかったんや。」
アキラが言い訳をした。
「すまない。ほんとうに。」
と頭を下げる要の肩をポンと叩いて
「おまえが謝る事ないやろ、あほやな。」
と言う。
「ほんなら、それで今晩はぱーっと飲みにいこか?」
アキラがビールのジョッキを持つ振りをして、にやりと笑う。
「あ、それと、2、3枚へってるかもしれんで。堪忍な。」
アキラが頭をかきながら舌を出した。
要とアキラは同時に噴出した。
「もっとはよう、返したかってんけどな。おまえの住んどうとこがわからんかったんや。」
アキラが言い訳をした。
「すまない。ほんとうに。」
と頭を下げる要の肩をポンと叩いて
「おまえが謝る事ないやろ、あほやな。」
と言う。
「ほんなら、それで今晩はぱーっと飲みにいこか?」
アキラがビールのジョッキを持つ振りをして、にやりと笑う。
「あ、それと、2、3枚へってるかもしれんで。堪忍な。」
アキラが頭をかきながら舌を出した。
要とアキラは同時に噴出した。
巡回訪問してま~す^^又来るね♪
ぶちょもピノ48粒 サクレ3個 パルム6本買って来たんだ~
ゼリーだってマカダミアチョコだってポテチもあるよんw
連休は引きこもって食べまくるぞ! 外国人だらけだしどこにも行かないぞ!w
関西弁が心地よいです。
し~ちゃさんの頭の中で物語を組み立てて物語が出来ていくのか
経験した事を文章にまとめていくのか
一番すごいと思うのは読んでいて頭の中に映像が浮かんでくる
どうして小説家の人は活字を長くリズミカルにトントントン書いていけるのかが不思議です
訳が分からない感想で申し訳ありません。
お祝いコメントとと残ってくれてありがとう(˶ᵔ ᵕ ᵔ˶)
これからもよろしくね(*^▽^*)
明日からGWは出勤です<(_ _)>
ステキとお水、4皿ごちそうさまでした(*'ω'*)
週末を前に一安心です(笑)
お祝いメッセージありがとうございます。
支援して頂いたおかげです。