21世紀型JAZZを巡る個人的諸問題
- カテゴリ:音楽
- 2023/02/26 11:38:37
ジジババ世代の慣れ親しんだジャズの要素は今や、
ほぼ全ての音楽で引用敷衍され活用されている。
レコード復権、和ジャズ和フュージョンも一部でブーム。
いちばん恩恵を受けてるのは高齢のジャズ好きでしょうか。
廃盤屋で5万、8万の値がついていた国内の自主盤や廃盤が、
海外レーベルでCD化され、逆輸入して日本語の解説つきで売られてる。
さて今年は2023年。よく買うのは60~70年代の録音ばかり。
半世紀前の日本ジャズを買いあさって聴く状況というのは、
若い世代からはどう見えるのかと妄想してみる。
私にとって思春期に古臭いと思った音楽は何だったかな?
大正から昭和。戦前戦後の国民歌謡はことごとく古臭く感じた。
エノケンのカジノフォーリー、市丸のお座敷小唄、浪曲や長唄……
これらを好んで聴く爺に対する幼い私の印象と、
今の若者が私を見て感じる印象は全く同じものであろう。
では今の音楽は、ジャズはどうであろう……うーむ。積極的に聴かない。
内外の現代ジャズをかける番組はそれなりに(意図的に)聴いています。
名を知らぬ若い世代の俊英の『開かれた』音楽を聴くと、
壮絶な違和感、いや、はっきり言えば反感を覚えてしまうのです。
『開かれた』というキーワードがそもそも好きではない。
このワード、多文化共生やグローバリズム、LGBTQ、
環境問題や反戦反核といった現代の『良識』を根っこに持っている。
音楽は愛と平和と理想を語るものになっているらしい。
正義と道徳と良識を謳うことが音楽の定義になっているように見える。
体制に順応するフリで生き長らえた半端者アナーキストとしては承服できない。
音楽的な話に限っても、クラシック/ロック/ジャズ/民族音楽を、
全て平等に取り入れ構築していくという趣が強い。
ここにも凄く引っ掛かる。意固地さ、頑迷さ・無意味な拘りが好きなのです。
一匹狼的な流浪のインプロヴァイザーなんてヤツも珍しくなった。
ネットやSNSで全人類と繋がり、意思疎通し理解しあうのが音楽人の責務。
メッセージ性も大切。世界の『良識』に沿う主張しか認められない。
コンポーザー志向の強い音楽家ばかりなのも苦手な理由の一つ。
優れた演奏家がパーツとして扱われ、意図的な音響空間の共有と構築に、
非常に知的で技巧的なアプローチをしているように聴こえ、すぐ飽きてしまう。
評論家や音楽界の重鎮が褒める若手を聴く。うわー、ゴメン、ご勘弁を。
まことに理知的な、賢く尊い音楽のご制作、ご苦労様でございます。
神も民主主義も普遍の真理も人権も、仮説としか思わない年寄りには無縁の音楽。
マイノリティという単語がありますよね。
現代のマイノリティは胸を張り、堂々として輝いている。
これも全く理解できない……うー、危ない話題になりそうだから方向転換。
日本アングラ界では知らぬ者のいない知己がアルバムを出していた。
2か月かけて取り寄せた。アナログレコードに同内容のCD-R付き。
偉い、分かってるねぇ。既に試聴していたが通して聴いた。凄すぎた。
世界をどう認識し、個人はどう在るべきかというテーマを、
何の工夫もなくプリミティブに呟き、我が事として放り出している。
今の世界情勢をどう凌ぎ生き延びれば良いのかの答えすら感じさせる。
共演した知人がジョンゾーン派の連中とアメリカで演っていた。
彼は福島出身で、311以降音楽性を大きく発展させ現在に至る。
一部では富樫の精神的後継者と評価される真摯な姿勢が頼もしい。
ピットイン昼の部、アケタ系というのは差別用語として有名。
ここに分類される不遇な方々の自主盤も復刻され、飛びついた。
生で観た衝撃が蘇える。若くして亡くなっても引退しても、音は遺っている。
知己や有名音楽家が亡くなるたびにギター提げてスタジオに行き、
数テイク録って帰るということをやる。けっこう面白い。
集めて自主盤作り配ろうかなと考え、継続している。
脳というハードウェアに第一言語でプログラム入れて人は動く。
だからバイリンガル、マルチリンガルというのは勿論のこと、
関西人や東北人、九州人とも決して理解しあえないと私は思っている。
さて音は? ロリンズのB♭と高木元輝のB♭は同じなの?
そんなわけあるか。そう考えると凄く安心する。
言語同様音楽も、オレがアタシがという自意識過剰な自己主張であって佳い。
芸術一般の受容同様に、音楽鑑賞も誤解と歪曲の集積である。
ジュゼッピローガンは凄く好きだがミルフォードグレイブスは許容できない。
それはK-POPやAKBの推し活してる方々と全く同質の拘りに過ぎないのだが。
諸問題とはあくまで個人の問題である。音楽の未来はきっと明るいのだ。
CDとLPと楽器は増え続け「死ぬ前に処分して現金化しとけ」と娘が脅す。
DAWが苦手なので8Chマルチを買う予定なのはもちろん内緒である。