Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


カーニバル ?ちょっと違った?



グロというか背徳的なので そういうのをお嫌いな方は
スルー推奨でございます(最近そればっか)



「アレを食べてみたことはございますか?」
眼鏡の奥で何かが光った

深夜のある料理店のテーブルを挟みながら
この紳士は幾分唐突に 急に私に話題を振った
どこといって特徴はない あるといえば口髭の見事さだろうか

彼とは数時間前に 少なくはない額の商談を成立させたばかりだった
いや 何のことは無い 単なる土地移転に纏わる些末な諸手続きを完了させただけである
このディナーは その取引の最後の儀式として予め用意されていたものだった

もう一人の仲介役として 普段私が専門の税理士として
こういった席には必ず同席を業務としてお願いしている友人が私の隣りにいた

彼の片眉が 1/4 ほど上がったのは 見逃さなかった



3人である程度豪華な当たり前のコースを 厳かに食べていた


そんな中で彼が再び言った
「アレを食べてみたことはございますか?」
税理士の片眉が 1/2 ほど上がった
口髭紳士の目は真っ直ぐに私を捉えていた

「今晩のディナーも大変満足すべきものです あ あとデザートですね」



順調に儀式を終え 3人は別れた とっととタクシーに乗り込もうとしている
税理士の首根っこを私は引っ張った
「おい まだ帰るな! あいつの言った意味は何だ?」
「おいおい 勘弁してくれ! 今晩は帰してくれ 」
「アイツの言うアレとは何なんだ!?」

タクシーは空で行かせた
今度は税理士との 1対1 の対話だ
彼とは古くからの友人である

「アレってアレだよ」
ピンときた
「アレなのか!」
税理士は片をすくめる
「大したことはないさ」


私の眼に嫌悪の輝きが眩いた
「俺だってあいつに誘われてから2回くらいしか行ってない!」
「2回も!」


明日 会社の上層部にかけあって こいつとの契約を解除しよう


「たいしたことじゃないんだ」!胎〇とか処〇とか脂身タップリのロースとか
〇刑囚とか そんなに美味いもんじゃない だいたい酸っぱいんだ!」
彼の叫び声が雨混じりのコンクリートを疾った










翌日 上司に事の次第を報告し 当該の税理士との契約解除を申請した
その日の午後に私の解雇が内報で全社に知らされた






数か月後
私は口髭の紳士と逢っていた


「まだ ありません」


口髭の紳士は 恭しく片手を胸に当て
丁寧に頭を下げた
「いらっしゃいませ ようこそ当店へ」

階段を下がりながら彼は言った
「なんでも揃えております お好みを仰ってくだされば」


なんでもよかった





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