刻の流れー31
- カテゴリ:自作小説
- 2023/01/28 13:24:52
「原田さんが、今日店にきたんやで。」
その日の夜、環たちと仕事から帰ってきたアキラが口を開いた。
「お前がどこにいるか知らんかゆうてはった。」
アキラが皿に残ったポテチを指の先で突付きながら言った。
「それで?」
原田が自分を探すだろうとは思っていたが、こんなに早くアキラに行きついたのにはさすがの要も驚いた。
「心配しいな。知らへん、ゆうといたったわ。」
要は苦笑した。この友人の嘘が下手なのは判っている。
「おまえ、父ちゃんおれへんゆうたけど、ほんまはおるんやな。」
「え?」
要は一瞬何を言われているか判らず、アキラの顔を凝視したが、ああ、原田に石橋の事を聞いたんだな、と思いつき、
「俺は、孤児だからな。石橋さんに引き取られたんだ。」
と、答えた。
「・・・随分とええ生活しとったそうやん。」
アキラが、皿の上の自分の指を見つめたまま言う。
「えっ」
要は自分の顔が赤くなるのを感じた。決して隠していたわけではないが、自分が今まで物質的に楽な生活をしていた事をアキラ達に対して後ろめたく感じていた。それを自分から打ち明ける前にアキラにつつかれて、要は慌てた。
「そ、それがどうしたっていうんだ?」
そういうのが精一杯だ。
「おまえ、なんでも三宮のフランス料理屋の御曹司らしいやん。こんなとこでなにしてんねん?」
目を下に落としたまま、アキラが続けた。そのの様子がいつもと違う。
「アキラ、一体原田に何を吹き込まれたんだ?」
「ふん、原田さんから、原田に変わったな。呼び捨てか?」
「あんな奴、呼び捨てにして、どこが悪い!?」
敬愛する原田をあんな奴呼ばわりされ、アキラも頭に血が上った。
「俺が許さんのや!」
ポテチの皿を蹴飛ばして怒鳴る。
「かかってこんかい!」
どっちが手を先に出したかは分からない。二人はお互いに胸ぐらを掴んで腕を巻き込みにらみ合った。とっさに環とハルが二人の腰を背中から掴んで後ろへ引っ張って引き離そうとした。
「こちとら、朝から晩まで働いとうねんぞ。一日中ごろごろしくさって。」
いつもに無いアキラの剣幕に、環たちはだじだじとなった。
「要は動かれへんねんやん、おまえも知っとうやんか。」
口々に叫ぶ。
「やかましい。」
「けが人はおとなしゅう、父ちゃんに面倒みてもろといたらええんや!」
アキラはそう叫びながら体を左右に振って手を振り回した。
「バイクかて、どうせ父ちゃんに買うてもろたんやろが。金かけて、えろういろとるし、そんな奴がなんでこんなとこにおるんやろなあ? 」
「金持ちの坊ちゃんの道楽かぁ?」
要の左肘がハルの顔面を強打して先に振り切った。
「アキラ~っ」
アキラの暴言に要も完全に平静を失ってしまった。
ガッと音がして環とアキラが後ろに倒れこんだ。
「おまえに、なにがわかるってんだ?」
友を殴った右こぶしを震わせながら要は自分のバッグに飛びついた。
「金が欲しいんならくれてやる!」
そう怒鳴ると、底に隠していた金をわしづかみにし、アキラに投げつける。
「今まで世話になった礼だっ」
「なんや そら~~?? お前、俺をなめとんのかっ」
アキラは切れた唇から流れる血を袖でぬぐってまた要に掴みかかろうとする。体勢を整えて、左フックを飛ばしたところに環が前に飛び込んだ。鈍い音がして、環が床にうずくまりながらうめいた。
「あほ、おまえら、ちょっと頭冷やせよ・・・」
アキラと要ははっとして動きを止めた。ハルが環に駆け寄る。
「そんなモン持って、とっとと出てけ。」
アキラが肩で息をしながら要に背を向けた。
「あ~ でてってやるよ。」
心で思ってることとは益々かけ離れた言葉がとび出す。男の意地の張り合いになってしまった要はカバンを引っつかむと言葉そのままの勢いで外へ飛び出した。
「待てよ、要!」
追いかけようとするハルの腕を、アキラが掴んだ。
「ええんや。これがあいつの為なんや。」
アキラが床に散らばった札に目を落としたまま弱々しく言った。
「おまえらも、今日はもう帰ってくれ。」
元の書いてるのがあるけど
エロチックハードボイルドだしねw
場所をおしえちゃおっかぁw
なるほど~そういう理由だったのか~ヾ(≧▽≦)ノ
要くんのことが好きなのでどうなるのかそわそわしてたので、
続きが気になる~!!
別の所で公開予定があれば教えてくださいね。
読みにお邪魔したいので(´艸`*)
この回のお話を呼んでいたら学生時代の自分を思い出しちゃった。
大学時代の友達、こんな感じの子がいたのよね。