そしてやっぱり、誰もいなくなる
- カテゴリ:日記
- 2023/01/15 20:31:56
わたくしは出向かなかったのですが、本日は奥さんのお祖母さんの葬儀でした。もう52才の奥さんのお祖母さんですから、結構な年齢です。御年なんと100才での大往生でした。
とにかく元気な人で、子供たちが小学生の頃をは、杖をつきつつも元気に色々なところに顔を出していました。近年は施設に入っていましたが、92歳まで台所に立って家族の食事を作っていたそうです。
昨年、岸田総理名義でのお祝いの書状をもらったところだったのですが、100年の人生に幕を閉じました。大正生まれという事になりますが、20代の前半ごろに戦争が始まり、東京大空襲ではお腹の中に奥さんのお母さんを孕んだまま、火の海を逃げまどったそうです。そこでもしも亡くなっていれば、うちの奥さんもこの世には生まれていなかったということですね。
さて。
数日前、とある訃報に触れました。
ご存じの方もいるかも知れませんが、ジェフ・ベックというギタリストが、亡くなりました。
その訃報に触れた時、正直心があまり動かなかった。ショックだとか、悲しいとか、残念とか、そういう気持ちにはあまりならなかった。
それはもう少し正確に言うと、あまりのことに感情の起伏すら起きずに立ち尽くし、声も出なかった、ということなのかもしれない。
私の楽器遍歴は、幼稚園時代のヤマハのエレクトーン教室に始まり、最終的にはベースやドラムなどリズム楽器に落ち着いたわけだけれど、そんなこととは関係なく、いわゆるロックとかポップスとか、いやファンクでも何でもいいれけど、そういうポピュラーミュージックの世界のミュージシャンで、私が衝撃を受けたと言える数名の中で、ジェフ・ベックほど私の音楽観に影響を与えた人はいないのではないかと思う。いや音楽観じゃないな。純粋に、プレイヤーの在り様と言った方がいいのか。
1965年のヤードバーズを皮切りに現在まで、彼の音楽性に一貫性は全くない。ジャズだろうがフュージョンだろうがファンクだろうが打ち込み電子音楽だろうがなんだろうが、興味を持てばお構いなし、とにかく手を出した。成功したものもあれば、あえて駄作と言わざるを得ないものもあった。
ただ、彼の奏でるギターフレーズは、50年前も1年前も変わらず、誰がどこからどう聞いてもジェフ・ベックでしかありえなかった。
エレキギターのことを少しでも知っている人であれば、演奏中にギターの音程を無段階に変化させるトレモロアームというパーツを知っていると思うが、その使い方ひとつとっても、もう2,3秒聴いただけでジェフ・ベックとわかる、まさにワンアンドオンリーなギタリストだった。
大好きなミュージシャンはたくさんいる。
レコードやCDは、一体何枚持っているのか数えたこともないが、少なくともすべてのオフィシャル音源を1枚漏らさず持っているのは、唯一ジェフ・ベックだ。
確か32歳か33歳の頃。昨年閉鎖されてしまったメルパルクホールで、生まれて初めてジェフ・ベックのライブを見た。良い席が取れず、私は2階席から小さな彼を見つめていた。
でも、生まれて初めて、ライブを見て泣いた。
ジェフ・ベックが、自分の目の前でギターを弾いている。もうそれだけで、涙が出て仕方がなかった。
そして。
意外なほどに心が乱れなかった彼の訃報を目にした、その日の夜。
何だという事はないけれど、彼のソロアルバムを自室でかけた。
自分ももう50歳を過ぎ、好きだったミュージシャンが毎年次々と去っていく。
でも、一昨日の夜。
生まれて初めて、好きだったミュージシャンの死に、泣いた。
新しく録音された彼のギターの音を聴くことは、もう二度と出来ない。
「よく耳にする音」でしたか。なんの曲だろう。
昨日、いつも行く飲み屋で飲んでいましたが、流れている曲はずっとジェフ・ベックでした。
まさに去勢乙。
いやちがう、巨星墜つ。。。
その偉大さと比べて、活動の地味さもあって、なんとなく普段は存在を忘れてしまうような存在でしたが、しかしあまりにも、あまりにも大きな存在でした。でもなんというか、一つの時代が終わったというような表現はそぐわないんですよね。彼は「時代」はたぶん作っていなくて、時代に沿っていつも姿を変えながら、でもどの時代にあっても常に唯一無二の影響を周囲に与え、そしてどこにも属さず、誰の横にも並ばず、ただ飄々と我が道を流れるように進んでいく、そんな孤高のギタリストでした。
清志郎さんね・・・
確かに、けっこう「もういないのか」感は大きいですね、私も。
あと10年もすると、誰もいなくなっているんだと思います。
先日訃報に触れた際に彼が奏でる音が流れ、よく耳にする音でした。
なるほど、奏者は彼だったのかと、旅立たれてから知ることとなりました。
同じ時代に音に触れることが出来て幸せ、ということなのでしょうね。
そして今でも油断している時にテレビで清志郎さんが歌っている映像が流れると泣いてしまいます、
そうなの、もう新しく録音されたものを聴くことはできない・・・
その方を大好きだったのですね。
新しい楽曲を聴くことはできないけれど。
新しい気持ちで、音を聞くことができるかもしれません。