Nicotto Town


人に優しく


同伴者


サビーナがあの雌犬の本当の母親だった。

サビーナは毎日山羊の乳を飲ませ、子犬の頃には、夜冷え込んだりすると、かわいそうだというので私たちのベッドで寝かせてやったりした。

しかし、そのサビーナも雌犬に名前を付けることなくあの世へ旅立ってしまった。

実を言うと、私たちはそんなことを考えもしなかった。

村にはほかに犬がいなかったので、名前をつけてほかの犬と区別する必要はなかったのだ。

信じられないことだが、名前もなければ親兄弟もいないあの犬、たまたまいちばん最後に生まれたおかげで命拾いした、当時まだ目の見えなかった子犬がやがて大きくなって、私の唯一の同伴者になって最後まで付き添ってくれたのだ。

村に誰もいなくなった後も、彼女だけが私と一緒に残ってくれた。





ー 『黄色い雨』 フリオ・リャマサーレス ー




 




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