同伴者
- カテゴリ:ペット/動物
- 2022/07/30 15:16:46
サビーナがあの雌犬の本当の母親だった。
サビーナは毎日山羊の乳を飲ませ、子犬の頃には、夜冷え込んだりすると、かわいそうだというので私たちのベッドで寝かせてやったりした。
しかし、そのサビーナも雌犬に名前を付けることなくあの世へ旅立ってしまった。
実を言うと、私たちはそんなことを考えもしなかった。
村にはほかに犬がいなかったので、名前をつけてほかの犬と区別する必要はなかったのだ。
信じられないことだが、名前もなければ親兄弟もいないあの犬、たまたまいちばん最後に生まれたおかげで命拾いした、当時まだ目の見えなかった子犬がやがて大きくなって、私の唯一の同伴者になって最後まで付き添ってくれたのだ。
村に誰もいなくなった後も、彼女だけが私と一緒に残ってくれた。
ー 『黄色い雨』 フリオ・リャマサーレス ー