【第21話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2022/07/12 12:56:59
昨夜の電話。
「電話するよ…」
とひとこと、言い残して立ち去った一平の言葉が気になり、沙也加はベッドに寝転がりながらなんとなくスマホを握りしめて。
着信はなく、メッセージが友達から来るだけ。
「なんであたし、一平からの電話待ってるんだろ…?」
無意識にそう、独り言を呟いて。
「もう11時じゃーん… 寝るかっ 明日は拓海と待ち合わせだし…」
布団を頭からかぶり、明りを消そうとリモコンに手を伸ばしたとき
「あっ」
一平からの着信だった。
『ごめんごめん もう寝てた?』
電話の向こう、一平の声はやや小さめ。
「ううん 起きてた。電話くれるって言ってたからさ…」
それに合わせるように、沙也加の声も小さくなる。
なんだろう、なんだかいけないことをしてるみたいな…
そう思いながら、一平の言葉を待つ沙也加。
『いや別に大したことないんだけどさ…』
「うん」
『もしさ、沙也加が… もしだよ?』
「うん」
なんだろう? 何で胸がドキドキ高まるんだろう…?
相手は一平なのに、一平なのに…と沙也加は、無理やり頭の中にそのワードを押し付けていく。
『こんなこと言うとあれなんだけどさ、拓海とうまくいかなくなったらさ…』
「…」
『俺って、アリかな?』
「え… え…」
『だから、…俺が、沙也加のお相手になれないかなってことさ』
「それって…?」
『そう。……告白』
頭の中が真っ白になる沙也加。
一平が、あたしのことを好きだって…? マジ?
電話の向こう、やや無言になった一平がやっと声を出した。
『お前、拓海のことが好きだろ?でもさ…拓海の想いがどうもはっきりしないんでな』
「…」
『だったら、俺は自分の心に素直になることに決めたんだ。だから今、告った…』
「う…」
言葉に詰まる沙也加。
『電話すると言ってはみたけど、告白するかどうかず~~っと躊躇しててさ、こんな時間になっちゃったんだ ごめんな』
一平は胸の内をすべて吐き出したっていう、吹っ切れた感じで声のトーンが上がってきた。普段の一平に戻ったようだ。
「な、なんて言ったらいいかわかんない…」
沙也加は自分でもその理由が分からない涙声になっていた。
『俺、いつも沙也加のこと見てたから、拓海とのことも気づいたし。あ、でもクラスでは有名な話になってるけどな、お前と拓海の関係ってさ』
やや明るく、冗談めかして言う一平に
「ええっ そうなの?」
『お前ら分かりやすいもの同士だもんな。あはは まあいいさ。俺が言いたかったのはそれだけ、じゃ、またな!』
気が付けば電話は切れていて。
沙也加はベッドにへたり込み、スマホの画面を呆然と眺めていた。
あたしが好きなのは、拓海だ。拓海だけなんだ。
そう言い聞かせるようにスマホをぎゅっと胸に抱きしめる沙也加。
不安だから揺れてるんだ。そうなんだよ。そうに決まってる。
一平はモテモテ男子だもん。無理無理。なのになんであたしなんかに…?本気なの?からかってる?拓海がいるのになんで?好きだから?
ぐるぐると同じ自問自答が続く。
ふぅ いつまでも同じこと考えてても仕方ないか…
でもちゃんと、拓海の気持ちを確かめなきゃいけないよね…
はっきりさせなきゃ。
あたしも…だけど。
そう考えた沙也加。
思い切って、スマホのメッセージアプリを立ち上げ、拓海宛に文字を打ち込み、送信した。
「そういえば、拓海って私の告白にきちんと答えてくれてないよね?」
(続く
ちゃんと最後まで書いて頂戴です(^^♪
一平君のおかげで、沙也加ちゃん勇気が出たかな?
モテ男の告白は計ってか計らずかなのか?わかりませんが、
さすがですね。