三姉妹 ②旅の途中で
- カテゴリ:自作小説
- 2022/07/03 22:12:26
目の前に差し出されたのは、特別な飾りも艶出しもない、素朴なタルトだった。
なのに、素の色には濁りがなく、上のりんごとサツマイモには繊維が残っていて食べ応えがあり、
下にいくほど舌触りがしっとりと滑らかになる……。
生真面目と言ってもいいほど、丁寧に丁寧に作られているのが、素人にも解った。
ほわぁ (〃ω〃) とイーシスは、声にならない感嘆をもらす。
次に出てきたのは、さくらんぼのタルト。こちらは見た目からして艶やかな美しいタルトだった。
味わいはもう! もう! もう言葉にもならない!
「お気に召していただけましたか?」
目の前の超イケメンなパティシエさんの問いに、ぶんぶんと頭を上下に振って肯定の意を示す。
返事をするのに急いで飲み込むのも躊躇うほど口の中が、そして全身が幸せだった。
(テティ姉様とディーにも食べさせたいけど~さすがに持って歩けないし)
姉妹と別れ、それぞれに見分を広げる旅の途中、
イーシスは、少し離れた町の宿の女将から聞いた、小麦の産地として名を馳せる村を訪れていた。
が、来てみれば小麦以上に人を呼んでいるのは、地産の小麦を使ったパイだ。
フルーツをふんだんに使ったデザートパイ
サツマイモ、カボチャなど素の持つ甘みを生かした野菜系のパイ
ミルフィーユ状の重ねパイ
クリームやメレンゲを多用したパイ
キッシュやミートパイ、シチューポットパイなど食事パイ……
何日滞在しても飽きないであろう、豊富なバリエーションに魅了され、早五日め。
そろそろ次の町に移ろうかなぁ~と最後のつもりで訪れた店が、村の外れのテラスが目につく店だった。
小麦の産地だけあって小麦の種類も多く、品種改良も盛んで、
そこに惹かれ都市から移り住み、小麦ごとの風味とフルーツのマリアージュを日々試行錯誤しているという
研究熱心かつ職人気質を持っていそうなイケメンさんに話を聞きながら、
(やっぱりその土地の美味しいものは、その土地の空気のなかで食べないと~)
と楽しい時間を過ごし、日持ちのしそうな焼き菓子を買って。
さ~て、次は久しぶりに大きな町で過ごそうかなぁ~と足を運んだ都市で。
ぶぉんっと風を切る音に、イーシスは即座に意識を持っていかれた。
大柄な騎士の、さも重量のありそうな両手剣を振るう音。
イーシスは、どこかで聞いた音だ、と思った。おそらくは、ほんの少し前…… 。
まずは宿を~と思いつつも足を止めたのは、若い女性たちが皆、同じ方向に向かっていたからだ。
その先では、黄色い声がしきりに上がっている。
なんだろう? と行ってみれば、都市に駐留している騎士団の訓練場。
あ~なるほど。騎士さんたち人気あるのねーと、覗いて。
騎士そっちのけで、大剣がぶぉんっと風を切る音が、耳から離れない。
この音、知っている。いったい、いつ、どこで聞いたのだろう?
なのに、どうしても思い出せなかった。まるで、幾重ものヴェールに覆われているようで。
そこにあるはずなのに、手を伸ばせば遠ざかる…… そんな、もどかしい思いで
イーシスは胸元のペンダントを握りしめた。
護り石として名高い魔石と、小さな涙型の真珠を組み合わせて作られたもの。
元より心配症のきらいはあったが、それを通り越して過保護になりつつあるテティ姉様からの贈り物だ。
少し前の怪我と、この思い出せない記憶は、何か関係があるんだろうか?
と、イーシスは首をかしげた。
イーシスの記憶の底に眠る、あの日……。
村はずれを散策していたイーシスの耳に届いたのは、地の底から轟くような、悲鳴だった。
そちらのほうへ走っていくと、村の数人が木を切っており、
大地に根を張り巡らせ斜面の崩落を食い止めていた大木は、今まさに切り倒されようとしている。
もう木は持たない…… いずれ根が力を失えば、斜面が崩れ村を飲み込むだろう。
それでも、おそらく大木が発しているであろう悲鳴を、
ただ聞いていることなど出来ず、村人との間に割って入った時。
イーシスの小柄な身体に斧が振り下ろされた。
そこで意識が途切れたイーシスは、その後のことを知らない。
気づいた時、目に入ったのは、姉・テテュスと妹・ディオネが涙を流しイーシスを見つめる光景だった。
三姉妹 ①再会 ↓
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=71313183
ネコ衛門さんの三姉妹物語
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=48178&aid=71325530
イケメンなパティシエさん ❧響さん
次女、イーシス 和.com
三姉妹 ① 再会 ↓
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思い出せない記憶か~
続きが気になる☆
お姉さまたちお料理に詳しい(=_=;)
ディーはいただく専門(๑◔‿◔๑)エヘ
❧響さんが参入しておったか。
テティもパイが食べたかった!
できればキッシュかシチューポットパイがいいなー。
あぁ 小麦が良いってことは、ケークサレとかも美味しそうだな。
パウンドケーキとかキャロットケーキとかもいいかも。
(この時間には危険な話題だった・・・)
イーシスの記憶が戻っちゃダメだからテティにはこの時
何かしらの情報がペンダント通して送られたに違いない!
おねーちゃん、めっちゃ心配性なんだ!!
近々私も書く予定。
イーシスお姉さまだけイケメンと美味しいパイずるいー(((o(><;)(;><)o)))
光栄でした^^
本当に、その土地でとれたものは
そこで食べるのに限りますね。
持って帰るとあれ?こんな味だった?てなることあるので><;
なので次はぜひ姉妹様がたとご一緒にいらしてくださいね^^♪
切り倒される木と
イーシスさんの恐ろしい記憶
どうなるこの先;;