道楽における「一通り」の怖さ
- カテゴリ:日記
- 2022/04/10 08:06:33
現場で「一通り終わりました」と報告を受けたとき、
報告者が男なら「不安なトコはどこなの?」と突っ込むし、
女性なら「チェック手伝えばいいかな?」と訊ねるのが常。
男の場合、期限までに終えたのだという責任回避的用法が多いけど、
女性は「一通り終えたけどあの部分が……」と不安を正直に伝えてくれる。
ダブル、トリプルチェックでもミスは出る。女性のほうが信頼できる。
こんな偏見よりもですよ。趣味道楽で「一通り」ってのは危険な単語です。
芸事の場合「一通りやりました」と言える人は達人ばかり。
伯母は日本舞踊を「一通り」やったが、おそらく億という金をかけた。
西洋美術は一通り観てます、なんて人は海外渡航歴豊富で、
有名美術館を全て制覇という意味で使う。これも恐ろしい。
ぐっとレベルを下げ、自分の場合はどうかと考えると……
楽器は一通り触った。日本の場末ジャズ・ロックは一通り、生で聴いた。
カメラは一通り使い、国産の単車も一通り乗ったし、工具は一通り持ってる。
この程度だな。学問や文学だと絶対言えないので情けない限り。
さてさて。マニア道にも「一通り」という危険な概念がある。
陶磁器を「一通り」揃えたいといったら六古窯に萩、美濃、唐津、楽焼、
古九谷、再興九谷、朝鮮白磁に青磁、ボーンチャイナ……数えきれない。
有名な温泉地を一通り回りたい、と考えたらどれだけかかるか。
歳喰ってから和服を一通り着てみたいと考えたらどれだけ大変か。
人により基準は違うけど、「一通り」という気持ちはみな抱く。
さてさてさて。私も「一通り」症候群です。
オーディオ環境が「一通り」整ったと思ったが……甘い。甘すぎる。
せめてスピーカーは有名どころを「一通り」持たねばならんのではないか!?
舶来はパス。中古でもバカ高値安定、十分に鳴らせる環境もない。
国産でメーカーのカラーが強く出ている典型的なヤツを、
ほれ、ほんの数組、ちょちょいと揃えるのが小粋ではないですか。
パイオニアを鳴らしたら、喧しいくらいの高域が懐かしかった。
40年以上前、私はポールモチアンのシンバルワークが嫌いだった。
とにかく耳障り。当時使っていたスピーカーはテクニクス。
ビクターやオンキョーで聴くとあら不思議、イイ感じに聴こえる。
最近よく使うビクターで『Waltz For Debby』をかけると、
モチアンのシンバルワークが非常に繊細に感じられ気持ちいい。
テクニクスとパイオニアは高音バリバリ出す部分が似ている気がする。
トリオはロック向きだけどケンウッドになってからクラシック寄り。
ダイアトーンは王道のバランス、ソニーは澄みきりヤマハはどフラット……
全て偏見ですし、機種でも、個体差も大きいので誤解なきように。
ですがこの思い込みを「一通り」満足させたいではないですか。
道楽ってそういうもんですよ。男のロマンです。ロマンは一日にして成らず。
テクニクスは手元に無い。SONYはいらない(オーディオ屋と思ってない)。
ケンウッド、サンスイ、ダイアトーンの2WAYは必要だ(断言)。
コーラルはある。テクニクスを買い直し、ビクターも2WAYを買い足すか……。
模様替えついでに物品の整理したら予想外に広々したので、
小型スピーカー数組くらい、どうってことはない。
よし。国産を「ひととおり」揃えてやろう。今年の野望。