Nicotto Town


!(๑❛ᴗ❛๑)(;´・ω・)


ラルエーヌちゃん



早稲田第一文学部文芸専修で、小川洋子さんや角田光代さんを
指導した仏文学者の平岡篤頼(とくよし)氏の著書に興味を持って
「パリその日その日」を手に取った

なんだ、普通の文章だな、が第一印象
既に亡くなられている年齢からしたら随分キスや抱擁にオープンな方で
いらっしゃる だから仏文専門なのか、フランス贔屓でこうも武士や
日本男児のイメージからかけ離れているのかはわからない
印象に残った3場面を紹介する
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①純然たる若い女の子向きの店の中、夫人ふたりの後について階段を
降りかけ、はっと息をのむ 階段の正面が試着室になっていて、その戸
を開け、半分外に立って、小さなショーツ一枚の十五歳ぐらいの女の子
がしゃがみこんだ店員の説明を聞いている 二三段踏み出した手前、
立ち止まることも後戻りもならず、進退谷まる
外へでて、家内、「見たでしょ」とにやり 
この突発事故に気が付かなかったF夫人は「あら、そんなの、ちっとも
めずらしくないわよ こっちの女性は下着をつけていない人が多いから
すっぽんぽんになっても平気でいるわよ ショーツをはいていただけ
まだましよ」「しかし、あどけない顔をしていた割には、むっちりと
よく熟れてたなあ バストなんかぷりんぷりんだった」「やめてよ、
そんな言い方」と、とうとう家内怒り出す

②トゥールーズ行特急でリモージュに行く
ひと眠りから覚めると、左斜め前の席の四歳ぐらいの女の子が、
分厚い本を読み耽っている若い母親の肘掛けにもたれながら、じっと
こちらををみている 笑いかけてもにこりともしない これは面白い
と思って、また笑いかける 反応なし 七、八回繰り返す そのうち
なにか呟きはじめる ふらりふらりと側へ寄ってくる ブロンドに
近い茶色い髪をひっつめにして、後ろでポニーテールに結び、
胸にマンガを染め抜いた濃いピンクのトレーナーの上下という格好の、
なかなかの美少女である 特に、おでこの上でそよぐおくれ毛が
変に色っぽい 「君、名前なんていうの」と聞くと「知らないッ」
と答える 「ウソ―、知ってるにきまってるじゃないか」とからかう
といくぶん動揺、母親のそばへ行ってしまう しかしまた後ろ手を
組んで戻ってくる 「ボンボンあげようか」「いらないッ」「ねえ、
君の名前教えてよ」「知らないッ」だが、そのうち向こうのほうから
寄ってきて「ペペール(おじいちゃん)の名前はテオドールっていうの」
ときた その次は「マミー(おばあちゃん)の名前はオディールって
いうの」その度に母親のそばへ戻るのは、いちいち彼女に聞いてくる
ためらしい ママはカロリーヌ、パパはジャン=ルイというところまで
来た その先どうするのかと思ったらとうとう「あたしの名前はね、
ラルエーヌっていうの」と白状した 「ラルエーヌっていうの?
すてきな名前だねえ」そう煽てても、少女はつぶらな瞳を見開いたまま
にこりともしない その先が可笑しかった
また側へ寄ってきたので「ねえ、君の名前なんていうの」ともう一度
聞くと、突然むくれて「言ったじゃないか!」と喚く「ねえ、君の歳
教えて」「三つ」おませなのに呆れる 「君の名前なんていうの」
「言ったといったら言ったじゃないッ!」「おじさん馬鹿だからもう
忘れちゃったの」というと、本を読み続けながら、母親がクスっと笑う

ラルエーヌ、すっかり陽気になって、おじさんがいかに馬鹿だか母親に
得々と話して聞かせる 母親はうわの空で頷くだけ 少女のほうは
浮かれ出し、母親に絡みついたり、体をくねくねさせたりする
かと思うと、母親の側へ戻って、お尻を抑えてなにかぶつぶつ言う
「え、それ、ほんとなの」と母親慌て、少女真顔で頷く しかし、
トイレへ行ったふたりはすぐ戻って来たから、芝居だったのかも
しれない
「ねえ、食べる?」と今度は少女のほうからボンボン持ってくる
「いらない 有難う お利口さんだね」と礼を言うと、はじめて
にっこり笑い、体をくねらせる 「ラルエーヌちゃんは、どこまで
行くの?トゥールーズ?」と尋ねると、くちゃくちゃ地名を言うが
よく聞き取れない「そう、それじゃあ気を付けてね リモージュに
着いたから、おじさんはここで降りるからね さようなら」と、
鞄をぶら下げ、手を振りながら歩き出すと、この愛くるしい旅の
道連れ、さっと顔色を変え、泣き出しそうな表情になって、そのまま
小さな拳を開いたり閉じたりする 母親も振り返って、にこやかな
笑顔を見せる 聡明そうな、多分共稼ぎらしい三十歳ぐらいの女性
窓から覗いても、ラルエーヌちゃん、まだ手を振っている

③書道
H先生だったか、Y先生だったか、「女」という字を篆書で書いて
ぼくがそばから「このしなやかな曲線はそのまま、女性の体の
優美な曲線をシンボル化したものであります」と解説すると、
「ホー!」と見物のなかから溜め息がもれ、さらにそれらの曲線
が交差して出来た上部の二つの閉じた空間にそれぞれ点を打って
もらい、「こうしてここに点を打つと、点が乳房になり、文字は
母という意味を持つようになります」と言うと、今度は「オー!」
という叫び声があがる 「マニフィーク(英語のワンダフルに
あたる)!」と唸るひとがいたりして、しばらくざわめきが
静まらないくらいだ

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白人じゃないと大学教授でもバスでスリと疑われるのもパリなのね
幾度なく登場するピザやニンジンサラダが食べたくなった


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2022/04/09 22:09
平岡篤頼さんと言う存在すら知らなかったです(☍﹏⁰)
あずささんは今まで沢山の書物を読んでるので感心しちゃうますლ
メルモも本は読むことはありますが、それは強制みたいなものだからなぁw
簡単に言うと、あずさんのように興味を持って読むのではなく
嫌々で読むみたいなものなので(☍﹏⁰)

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2022/04/09 12:10
おませさんだけど、あずさちゃんの3歳の頃も好奇心でいっぱいだったのでしょう。飛行機や自動車と違って、列車のボックス席は出会いが生まれそう。書を持ち、旅に出よう!
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2022/04/09 11:36
わざわざコメントありがとうございました




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