Nicotto Town


まったり時間。


【お話】妖精の城と吟遊詩人。

妖精の城に迷い込んだ。輝く光と影の中、一曲歌って帰って来たよ。吟遊詩人してると、こんなこともある。

もらったステキコーデ♪:21


妖精の城に、迷い込んだことがある。

うっすらと混じる、輝きと闇の気配。光と影のあわいに浮かぶ、うたかたの世界。

こちらを見る、猛々しい戦士。きらきらしい奥方たち。

笑い声と、値踏みと。好意と好奇心。でも、かすかに響いてくるのは悪意かな。

美しく危険な場所。そう思ったよ。

実際、迷い込んだ挙句に気に入られて、百年も二百年もつかまったまま。みたいな人の話も聞くし。

向こうにとっては好意なんだけど、人間にとっては苦痛だったり、迷惑だったりするんだよね。

価値観が違うからなあ。時間の感覚も違うし。いろいろと。

うん、でも、ぼくは吟遊詩人だから。

お招きを受けたんなら、歌わないって選択肢はない。

相手が美と芸術の専門家みたいな存在であったとしても、

ぼくにできるのは、ぼくの最善を尽くすこと。

歌うこと。

それにより、命を、輝かせること。

それだけ。

だから、歌ったよ。

短き人の子の、命の歌を。

はかなく、けれどたくましく、

大地に根を張る、どこにでもある草のようで、

けれど時に、はっとするような花を咲かせる、

素朴で、

小さくて、

それが尊い、

人という、命の歌を。

気に入ってくれたんじゃないかな。

帰してもらえたからね。

この世は、寒さも暑さも厳しくて、

お腹は減るし、安らぐ場所もなかなか見つからない。

でも、ぼくはこの世が好きなんだ。

そういうわけで、帰ってきた。

褒美? この話ができることが褒美だよ。

これで食べていけるんだから、ありがたいね。

まあ、とにかく、

帰ってこれて、良かったよ!


***


吟遊詩人あるあるの話。(そうなのか!?)

人ならぬものの歌を歌う者は、

どうかするとあちらに気に入られて、連れ去られたりする。

そこからうまく距離をとって、逃げ出せるかどうか。

けっこう命懸けだし、幸運を引き寄せる技量もいる。

気に入られた分、とどまらないと、恨みを買ったりもする。

その恨みがまた、くるっと裏返って、執着されたり。

でも、そういうのもまた、

吟遊詩人、あるあるの運命。らしいよ?(本当?)






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