【お話】妖精の城と吟遊詩人。
- カテゴリ:コーデ広場
- 2022/03/09 14:26:38
妖精の城に迷い込んだ。輝く光と影の中、一曲歌って帰って来たよ。吟遊詩人してると、こんなこともある。
もらったステキコーデ♪:21
妖精の城に、迷い込んだことがある。
うっすらと混じる、輝きと闇の気配。光と影のあわいに浮かぶ、うたかたの世界。
こちらを見る、猛々しい戦士。きらきらしい奥方たち。
笑い声と、値踏みと。好意と好奇心。でも、かすかに響いてくるのは悪意かな。
美しく危険な場所。そう思ったよ。
実際、迷い込んだ挙句に気に入られて、百年も二百年もつかまったまま。みたいな人の話も聞くし。
向こうにとっては好意なんだけど、人間にとっては苦痛だったり、迷惑だったりするんだよね。
価値観が違うからなあ。時間の感覚も違うし。いろいろと。
うん、でも、ぼくは吟遊詩人だから。
お招きを受けたんなら、歌わないって選択肢はない。
相手が美と芸術の専門家みたいな存在であったとしても、
ぼくにできるのは、ぼくの最善を尽くすこと。
歌うこと。
それにより、命を、輝かせること。
それだけ。
だから、歌ったよ。
短き人の子の、命の歌を。
はかなく、けれどたくましく、
大地に根を張る、どこにでもある草のようで、
けれど時に、はっとするような花を咲かせる、
素朴で、
小さくて、
それが尊い、
人という、命の歌を。
気に入ってくれたんじゃないかな。
帰してもらえたからね。
この世は、寒さも暑さも厳しくて、
お腹は減るし、安らぐ場所もなかなか見つからない。
でも、ぼくはこの世が好きなんだ。
そういうわけで、帰ってきた。
褒美? この話ができることが褒美だよ。
これで食べていけるんだから、ありがたいね。
まあ、とにかく、
帰ってこれて、良かったよ!
***
吟遊詩人あるあるの話。(そうなのか!?)
人ならぬものの歌を歌う者は、
どうかするとあちらに気に入られて、連れ去られたりする。
そこからうまく距離をとって、逃げ出せるかどうか。
けっこう命懸けだし、幸運を引き寄せる技量もいる。
気に入られた分、とどまらないと、恨みを買ったりもする。
その恨みがまた、くるっと裏返って、執着されたり。
でも、そういうのもまた、
吟遊詩人、あるあるの運命。らしいよ?(本当?)