Nicotto Town



鬼を名乗りて⑩


今年で鬼ナノも10回目

毎年様々な鬼を紹介してきましたが今年は10回の節目として

女性の鬼を紹介していこうと思います

あ、リアルでは決して女性に鬼なんて使いませんよ!

はてさてこの鬼、 悪女か?賢母か? 

「鬼なの」 開幕です




 美女は歴史上においては、しばしば火種となるものです

 そして悪女と言えば、美女と相場は決まっております

 妲己しかり、淀殿しかり、峰不二子しかり……。

 しかしながらその悪女の中でも鬼とまで言われる方は

 そうそういないものです

 類まれなる美貌と苛烈な性格を併せ持ったと言われる女性

 「奥州の鬼姫」こと保春院こそが今年の鬼に相応しい!

 保春院?と聞くとあまりなじみがない方も多いかもしれません

 義姫と言った方が通りがいいかな

 山形の戦国大名 最上義守の娘

 羽州の狐と呼ばれる最上義光は2つ上の兄

 独眼竜政宗の実母といえば、一番わかりやすいかもしれませんね

 数々のエピソードを持つ女傑なんですよこの方…。




エピソード1 お前が男であったなら…。

 世は戦国時代、騙し騙されは当たり前の弱肉強食の時勢であります

 義姫の父と兄も夜な夜な最上家はどう動くべきか密談を重ねていたのでした。

 父「やはりここは、少し強引にでも北へと展開すべきではないか?」

 兄「一時的にとはいえ南の備えが薄くなり申す、北で勝てるとも限らぬし

   まだ時期尚早かと…」

 慎重な兄の意見が場を支配すると静寂が訪れた

 するとピシャンと障子が開き放たれ義姫が部屋へと入ってきた

 そしてそのまま兄の前まで歩いて行き

 ぶん殴った!

 「これからの最上家はお前が背負っていくんだろ! そんな弱気でどうする!!」

 父にたしなめられ部屋を後にした義姫

 「あいつが男であったなら一廉の武将になっていただろうに…」

 と、父はため息を漏らすのであった

 あ、こんな兄妹でも大層仲は良かったそうですよ

 男勝りの性格でガタイも良く、武芸にも秀でており聡明で、尚且つ美人

 それは、父上もそんな嘆きを漏らしてしまうでしょうね




エピソード2 わが屍を越えて行け

 そんな逞しい義姫もお年頃になりますと政略結婚で伊達家に嫁ぎます

 数え年で18歳での輿入れは当時としては、少し遅いくらいなのかもしれません

 3年経って子を生さなければ実家に送り返されるというのが当時の気風だったのですが

 そのギリギリで息子を授かります それこそが前述した伊達政宗なのです

 女性の扱いが今とは比べ物にならないほど軽かった時代

 側室が山ほどいるのが当たりまえ、両家の仲が悪くなれば容赦なく殺される

 例え世継ぎを生んだとはいえ、義姫の立場は安泰とは言えませんでした

 なのに彼女といえば事あるごとに

 「実家に帰らせていただきます」

 と里帰りを繰り返したのです そんな嫁を止められない輝宗

 これを世間では、尻に敷かれているというのでしょうかw

 今でいうところの鬼嫁と化した彼女ですが、

 伊達家、最上家の一大事に際してはその身を挺して止めていました

 伊達家が大崎家を攻めたところ、大崎家が援護を求めたのは最上家でした

 伊達と最上双方の軍が睨みあう戦場のど真ん中に輿で乗り付けると

 あっけにとられる両軍を横目に仮屋を建ててしまったのでした

 そして

 「双方争うのであれば、まず我が屍を越えていけ!」

 と言い仮屋に籠城してしまったのでした

 私を殺してから戦争しろ! なんてかっこよすぎます!

 この籠城はなんと80日も続きます

 最終的に根負けした双方の間で和睦は成立

 義姫は意気揚々と城へと引き上げたのでした




エピソード3 この毒を飲んだ時、お前は…

 政宗暗殺未遂事件

 80日間も戦場にいて、争いを好まないような義姫がなぜ悪女だとか鬼だとか

 言われてしまうのか?

 それは、まさにこの一点であるといっても過言ではないのです

 息子を毒殺しようとするなど、現代でもショッキングが過ぎる内容です

 当時であればその影響は計り知れませんね

 しかしながらこれまでの人物像とは大きくかけ離れているのも事実

 体を張って戦を止めた、男気溢れる平和を愛す女性

 息子を自ら手にかけようとするおぞましい女性

 果たして一体どちらが本当の姿なのか混乱してしまいます

 定説として伝わっている話は次のようなものです

 日頃から政宗ではなく、弟の小次郎を溺愛していた義姫は次第に

 小次郎こそが伊達家を継ぐのにふさわしいと思うようになっていく

 ある日のこと宴を開いて、政宗を呼び寄せその料理に毒を盛ったのだ

 「クククこの毒を飲んだ時、お前はもう…」

 料理を一口食べた政宗は、すぐに異変に気付き

 これを吐き出し、解毒剤を飲んで事なきを得たのだという

 さらに翌日、弟の小次郎をクーデターの首謀者として斬殺

 義姫は山形へと戻っていったという…。

 これだけ聞くと、弁解の余地もないド外道毒親としか思えないのですが

 実際のところは違うんじゃないかと思います

 つまりは政宗毒殺事件そのものが政宗の自演

 秀吉に上手く降伏するための策の一つだったのでは? と思うのです

 


エピローグ では誰が毒を盛ったのか?

 当時東北平定に向けイケイケドンドンだった政宗は

 秀吉の出した私戦禁止命令を無視して芦名氏を滅ぼします

 その頃、秀吉は絶賛小田原を包囲中 北条の次は伊達かな

 そんな算段をしていたのかもしれません

 この時点では政宗は秀吉と一戦交える気だったと思います

 それは秀吉を侮っていたとかではなく、確固たる自信があったのだと思います

 話が少しずれますが、映画おしんなどでは

 東北地方を貧しく描いていますが、

 政宗の時代は東北地方はすごく裕福だったんです。

 なぜなら中尊寺を見ればわかるように、金が取れたんです

 それこそ川でちょっと掬えばポロポロと

 ところがそれを拾う人はいません

 貿易が本格化した江戸時代はともかくとして、

 この時代国内において金の価値はさほど高くありませんでした

 世界的には金本位制でありましたが、日本は米本位制だったからです

 ほとんどの物資は金ではなく米と交換可能であったわけですね

 ところがこの価値がない金を外国に持っていくと

 価値が出て色んなものと交換できる

 政宗はこうしてかなりの富を築き、秀吉と一戦交える気でいたと考えます

 その後、江戸時代に入ると藩単位で外国と貿易することは禁じられたのと

 米本位制は相変わらず続いたため、

 寒さで米がうまく育たない北の方は次第に貧しくなっていくわけなのです

 あ、ちなみに金というのは火山国でしか採れません

 現在までに採掘された金の総量は

 およそオリンピックのプール3杯分と言われていますが

 その半分は日本で採掘されたものです

 大幅に話が逸れましたが、ともかく政宗は一戦交えるつもりだったのですが

 北条の支城は波に飲まれるように次々と陥落

 彼の目論見は外れ、秀吉には敵わないとある時悟ったのだと思います

 今からいっても小田原には大遅刻間違いなし!

 ならば何かしらのアクシデントがあったことにすればよい

 そうして実行されたのが、

 政宗暗殺未遂事件だったのではないかなと思えてなりません

 このような茶番に付き合い、自ら汚名を着る義姫

 これならば何となく腑に落ちるような感じなんですよね

 その証拠にこの親子、この後もすごく仲がいいんですよ!





 今年の鬼はいかがだったでしょうか?

 毎年とんでもない鬼ばかり並べたので今年は少し霞んでしまったかもしれません

 そこには鬼ではなく別の何かが見えてきたような気がします。

 それでは、また来年 鬼の話でお会いしましょう!

アバター
2022/02/08 01:20
Re:みゆさん

実際問題、毒殺ってうまくいかないと思うんですよね。
味に出ちゃいそうだし、毒の精度もそこまで高くないから即死なんてしないだろうし
やはり現代のように、ちょっとずつ塩分濃度を上げていって・・・。とかの方が効果ありそうですw
アバター
2022/02/07 11:09
保春院と聞くと誰だろう?と思ったのですが義姫と聞き納得。
最上家の父との戦の話はよく聞きますよね。
なかなか女性の意見など、まして戦のことだと口出し出来なさそうなのに凄い方だなって
思っていました。
息子毒殺…本当の所はどうだったのでしょうね。
この時代の憶測は一杯あり過ぎて…謎がある方が面白いかも?!(;^ω^)

おぉぉ、もう10回目になるのですね。
また来年も楽しみにしていますよ~



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