【第19話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2022/01/23 21:27:00
「んっ 何着て行こうかなっ!」
沙也加の部屋、ベッドの上には、数枚の洋服が無造作に並んでいる。
ベージュ系のAワンピ、制服を模したコス系、デニムミニ…
鼻歌を歌いながら、鏡の前で服を合わせ、くるっと回ってみたりする。
沙也加が手にしたスマホのメッセージは、拓海からだった。
『明日、お前の誕生日じゃね? よかったら駅前のモールで、プレゼント選んでやるよ』
そのメッセージを呼んだ瞬間から、沙也加は最後のネジが外れたみたいになっていて。
浮かれている っていうのを具現化したのがまさに…今の沙也加だった。
『んっ…そこまで拓海が言うなら、選ばせてあげてもいいよ?』
返したメッセージ。
文章の上から目線とは裏腹に、沙也加は心が弾むのを自覚していた。
拓海からのレスは、呆れたようなスタンプだけ。でも沙也加は服を選ぶのに夢中で、ダンスを踊るような気分でいた。
「お待たせ。ちょっと遅れたかな?」
「何言ってるんだ?まだ約束の30分前だぞ?」
待ち合わせの駅前広場。沙也加は迷った挙句に普段通りの制服姿で現れて。
「なんで休日に制服なんだ?おまえってほんっとにお洒落っ気がねーんだな」
苦笑する拓海は、紺色系単色Tシャツに薄手のグレーのコットンパーカー、ベージュのチノパンといういで立ち。
ちょっとアンバランスかも…
心の隅でそう後悔しつつ、しかしそれでも沙也加は明るく笑って
「そんなことないよっ!花の16歳、一番映えるのがやっぱり制服でしょ?」
「あほか…」
「で、何が欲しいんだ? いちおー予算限度はあるけどさ、なんでも言ってみろよ」
拓海と沙也加は横に並んで駅前のショッピングモールを歩いて、ショーケースに並んだ洋服やアクセ、小物なんかを見て回っている。
「あ、あたしさ…実はラジオが欲しいんだよね」
モールの一番端っこにあるリサイクルショップのショーケースの中にあった、レトロなラジオを見つけた沙也加が、折り返して行きすぎようとする拓海の袖を引っ張る。
「ぇ?ラジオ?」
立ち止まった拓海は、沙也加が指さす方を見て
「えー これって昭和のラジオじゃね?デジタル選局でもないし、ダイヤル式だし…」
沙也加はそれでも首を振って
「それがいいんじゃない… ほら、値段だってそこまでしないしさ」
プライスタグを見ると、1980円(税込)となっている。
古い割には傷も目立たない。ダークグレーの小ぶりのラジオだ。
「今時女子には似つかわしくないかもな」
「なんなのよっ!」
「ほんとにこれでよかったのか?」
ほくほく顔の沙也加は、紙袋に入れてもらったラジオを大事そうに抱えて
「いいのいいの。学園寮の部屋にはラジオないしさ…テレビはあるけど、テレビ見てたら何もできないもん」
拓海は頭を掻きながら
「まぁそうだけどさ。喜んでくれるんならまあいいけど」
「ねぇ… 拓海?」
「ん?どうした?」
「ホントに、あたしで良かったの?拓海の、彼女…にってさ」
照れたように背を向け、表情を隠しながら沙也加が問いかけた。
「ん 当たり前じゃねーか… まさかお前が俺のことを思ってくれてたとは知らなかったけどさ」
拓海は少し微笑み、沙也加の顔を覗き込んでみて。
「う…あうあうっ!」
戸惑う沙也加。
その時だった。
「あれ?拓海、それと沙也加じゃないか?」
声がかかったほうを二人が振り向くと、そこには一平がいて。
にこやかに笑いながら手を振っていた。
「やあ、一平 どうしたんだ?」
「それはこっちのセリフだよ。お前らいつの間に…?」
沙也加は慌てたように
「あっ 違うのよっ! 今日は私の誕生日だから、拓海にプレを選んでやるって言われてさっ」
「違うって、全然違わないじゃん…」
苦笑しつつ一平は拓海の方に向き直り
「沙也加と付き合ってるのか?拓海…」
「あ… ま、まぁね…」
「そっかそっか。」
複雑な表情で男子二人を交互に見やる沙也加は、なんだかさっきまでの弾んだ心がどこか遠くに行ってしまう気がしていた。
「あ、悪い…電話だ」
拓海がスマホをポケットから取り出し、背を向けて通話を始める。
実家の母親かららしい。拓海の通話の声がややつっけんどんになっている。
一平がいきなりそう彼女の耳元に顔を寄せてきた。
「沙也加、今夜電話するよ」
「え?…」
「じゃな 拓海によろしくな」
それだけいうと、一平は踵を返して、大股に歩き去って行って。
戸惑う沙也加は、通話中の拓海をちらちら見ながら、一平の背中を追っていた。
(続く
一平君は何を話すんだ~?
余計なことなら話さないで~w
久々過ぎて登場人物忘れてた・・・(;´・ω・)
復習しなくっちゃ!
あ、続きは来月かな~?
楽しみにしてるね