南の魔女クレア97
- カテゴリ:自作小説
- 2022/01/10 06:15:07
クレアは順調に回復して行った。あの後モゾリアナ兵が小隊長を追って「呪いの館」に着いた時には教祖と呼ばれていた女が小隊長の剣に心臓を突き刺されて壁で絶命していました。
モゾリアナ兵は小隊長が教祖をやったと言う事で大喜びをして小隊長をほめたたえて其れを城に報告しました。
クレアの病室に小隊長がクレアが居なくなった為に小さな元の人形に戻った為に3つに切り裂かれた人形を持って来てくれたのでした。
クレアの後を追って総てを見ていた小隊長に取って此の人形がクレアに取ってどれほど大切な物なのかと考えての事でした。
クレアは3つにさけてボロボロになった人形を手に人形で良かったと思いました。
其れよりもあの魔力で操られて殺人鬼にされた心を持った人間達が苦しみながらも魔力に勝てずに刃物を振るって殺されて行った事の方が悔しかったのでした。
其の思いを今度の事で昇進した彼にどう伝えて良いのか解らずに人形を受け取って人形を届けてくれたお礼だけいいました。
クレアはもっと早くに自分が気が付いて毅然と対応していればアルガーは大怪我をせずにこんな状態になる前に対処出来て居たのではと自分はどこで間違えたのかと病室のベットから見える空を見上げて考えました。
解って居る事は自分の考えに甘さがあったと事です。
でもどこで何をどうすべきだったのかはクレアには解らないのでした。
すっかり回復したクレアはクレスバーにシドリアルに帰る事を告げて帰る準備をしているとアルガーが話があると言って城の中のえらく立派な庭に案内されました。
素敵な庭だとクレアが言うと最初に此の国に来た魔女と此の国の王子が愛を剥ぐぐんだ庭でした。
アルガーは此の国と魔女との歴史を話始めました。
此の国の王子と恋に落ちた魔女は3人の娘を生んだ。魔女の血は遺伝するという事で其の3人の娘が嫁いだ家は魔力を持つ家柄として代々特別な扱いを受けた。
長女が嫁いだ家にはバラの花のティアラを、次女が嫁いだ家にはバラのリーフのティアラを、3女が嫁いだ家にはバラの蔓のティアラを付ける事を命じて代々其れを受け継ぐ様にした。
しかし何代かすると偽のティアラを付けた占い師が出て来たり薔薇の花のティアラが市場で大量に売りに出されたりと魔力を持つと言われて高い持参金を要求して娘が売り買いされるようになり法律で其の風習は禁止された。
其の頃は特に此の国は乱れていて麻薬草が横行し魔力を持つものはより多くの人との淫行を重ねると強い魔力が持てると言う噂まで流れて仮面をかぶって誰かれかまわず多数の人間と交わるパーティ等があちこちで行われる様になった。
其の時新しい魔女が来て其れを厳しくいさめて実際に魔力を持っているかいないかで嘘をついた物は厳しく罰せられて魔力に対しても其の魔力の力によって浄化をする神官と闘いをする魔力兵に別れて鍛錬をして魔力を強める事になり、淫行を厳しく禁止して麻薬草を撲滅する法律を作った。
其れと同時に魔力の力だけで無く悪の血も遺伝する事が解って来たので悪の血は環境によって律する事が出来るので鍛錬や修練をして自分を律する事が推奨された。
子どもの時から体力の鍛錬をしたり学力の修練をする事も推奨された。
アルガーはそしてクレアに言った「貴方は自分が油断した為に僕が怪我をしたと言ったけど油断したのは僕の方だ。貴方が間違いを犯す事もあると言うのを神官様に良く見ている様にと注意をされていたのに油断してしまった」と言った。
確かに其の通りだと思いました。
でも何かが違う様にも思うのです。
彼が思っているよりもっと違う大きな間違いなのです。
油断と言う言葉ではない。根本的な大きな判断ミスなのです。
油断と判断ミスの違いを魔力を持つものを相手にする事のちがいとあの村での魔力を持たない物を相手するのとの違いを
解って居ながらクレアは魔力を持たない物への対応をしようとしていた事が招いた事なのです。
でもアルガーに其れを言って良いのかどうか解りません。
でもクレアは解って居たからこそ人形を二つ用意したのです。
其れなのにアルガーが命を落としたかもしれない事態になるまで対応が甘かったのです。
クレアは深くため息をついた。「貴方は解っている様で解って無いのよ。どうにもならない「悪の血」と言う程でなくても病気程度の悪の血が遺伝する事は私の国でも常識として知っているわ。どうしても人の物を盗んでしまう。盗みは悪い事だと解っていても環境は別としてもお金に困って無くても子供の時から盗みをする子は居るわ。親が厳しく注意をしても本人が其れを自覚しても盗みはやめられない子が出るわ。其れは私達の国では精神的病として扱われる。
其れ以外にも私は洋裁学校に行っていたけど作品の管理は非常に厳しかったわ。嫉妬から来る嫌がらせや作品の破損行為が起きるからよ。
私が油断したと言うのは其のレベルじゃないの。魔力の使い方を間違うとつまり貴方の言う「悪」と「魔力」が重なると今回の様な事が起きると解っていて私は其のレベルじゃないと判断ミスをしたので貴方は死ぬ所だったの。敵の魔力を甘く見ていたのよ。」
アルガーはまだ納得が行かないようでした。
アルガーはあの隊列の中で貴方だけが修練や鍛錬や練習や訓練を受けた経験が無い。
だから集中力が途切れる時がある。所謂魔がさすと言うか油断を簡単にするから自分が傍について居なきゃ行けないと思って駆け付けたと言いました。
クレアは「其れは認めるけど其れだけだと私はあの人形は使わなかった。
あの人形を使うと決めた事には訳があるの。あれは心が無い殺人人形よ。あれを出すには最悪の事態を想定しての事だったの。そして其れが当たったのよ。言えないけど。」と言った。
クレアはそんな説明でアルガーが納得できるはずがない事は解って居るのです。
クレアは確かに油断をしました。そして戦闘する心を鍛えてません。
鍛錬も修練も訓練も鍛えられてません。
集中力が甘いとどうなるかを鍛えられてません。
其れだったのです。
クレアは魔石を取る時に起きる試練は誰にでも同じだけ起きると言われました。
だからどんな内容なのかも其の為に事前に泳ぐ練習をしても体力を付けて訓練をして修練をして鍛錬をしても平等に試練は起きる。其れに打ち勝って魔石を取って来れるかは本人次第なのだと言われました。だからフクロウ人間は事前に過去に失敗した人の例を教えてくれたのです。
クレアに与えられた試練たったた一つの「石ころ」でした。
たった一つの「石ころ」で十分だったのです。
もっと修練をしていたら、もっと鍛錬をしていたら、道はもっと険しく水の流れはもっと激しかったかもしれない。
でもクレアにはたった一つの「石ころ」で十分な程鍛錬も修練も訓練も鍛え上げた肉体も研ぎ澄まされた神経も無かった。
たった一つの「石ころ」で足をねんざした程度の事でクレアにとってはたどりつけるかどうかギリギリだったのです。
泥にまみれる事が苦にならなかった。
土を這う事が苦にならなかった。其れが屈辱とか辛いと言う事が無かった。土の中を指に神経をとがらせて硬い岩を掴んで這って前に進む事が顔を泥だらけにして口の中に土が入ってじゃりじゃりして土の味がしてもずりずりともがいて前に少しでも進める事が出来たからたどり着けたのです。