1489番:最後の授業(8)
- カテゴリ:日記
- 2021/12/30 22:02:00
最後の授業(8)
LA DERNIÈRE CLASSE
Récit d'un petit alsacien
——————————— 【8】—————————————
Eh bien*, non. M. Hamel me regarda sans colère ¹ et me
dit très doucement:
« Va vite à ta place, mon petit ² Frantz; nous allions
commencer ³ sans toi. »
J'enjambai⁴ le banc⁵ et je m'assis⁶ tout de suite⁷ à mon
pupitre. Alors seulement,⁸ un peu remis de⁹ ma frayeur ¹º,
je remarquai ¹¹ que notre maître avait sa belle redingote ¹²
verte, son jabot ¹³ plissé*¹⁴ fin¹⁵ et la calotte¹⁶ de soie noire
brodée ¹⁷ qu'il ne mettait que ¹³ les jours d'inspection ou de
distribution de prix.
——————————— (訳)—————————————
ところが、さにあらず.アメル先生は怒ることなく私を見て、
優しく言ったのです.
「フランツ君、早くご自分の席に着きなさい.君がいなくても
始めるところでしたよ」
私はすぐに腰掛けを跨いで座り机につきました.少し不安が
和らいで、それでやっとアメル先生が緑色の立派なフロックコー
トを着ていることに気がつきました.シャツの胸飾りには細かな
襞がついていて、丸帽子は黒の絹製で刺繍が施されていた.それ
は教育視察の日か賞授与式の日にしか着ない服装であった.
——————————— 《語句》—————————————
1) san s colère: sans の後に抽象名詞が来て、2語で1種の副詞を
作るときには一般にその名詞には監視をつけない.
2) mon petit Frantz: 所有形容詞はしばしば親愛感を示すため、呼
びかけの名詞に添えられる.この場合 petit は「小さい」で
はなく、「親愛な」という意味.ただし訳すときは「親愛な
るフランツ」とすると日本語としては大げさなので訳しませ
ん.(感情表現様式は私たち日本人とはやや異なるようです)
3) nous allions commencer: aller + 不定詞は <近い未来> を示す.
この構文では aller は主として直説法の現在と半過去に用い
られ、本来の「行く」の意味を失って助動詞的な働きをする.
本文のように aller が半過去に置かれると < 過去における近
い未来 > を示す.
4) enjambai:enjamber の単純過去(1単)「ひとまたぎする」
5) banc: (m) 腰掛、席
6) m'assis: s'asseoir の単純過去
7) tout de suite: 「すぐに」
の意.de は「~から」
10) frayeur:[frɛjœ:r](f) (激しい) 恐怖、不安
11) remarquai que: remarquer の単純過去 「~であることに気づく」
12) redingote:[ルダンゴット](f) フロックコート(昔の)
13) jabot:(m) (レースなどでできた)シャツの胸飾り
14) plissé (過去分詞) <plisser (他) 襞をつける
15) fin (形、副) 細かな、細かに
16) calotte (f) 頭にぴったりのお椀型の小さな帽子
聖職者のかぶる丸い縁なしの帽子
17) brodée (過去分詞) <broder (他) 刺繍する
20) distribution de prix. 賞の授与式
—————————— 《関係代名詞》—————————————
フランス語の関係代名詞は、英語と違って、制限用法、非制限用法
の区別がありません.基本的には訳し上げるので、試験問題で仏文
本文が和訳問題で出されたときは、
たとえば、このくだりは
je remarquai que notre maître avait sa belle redingote verte,
son jabot plissé fin et la calotte de soie noire brodée qu'il
ne mettait que les jours d'inspection ou de distribution de prix.
私は先生が視察日か賞授与式の日にしか着ない立派な緑
色のフロックコート、細かな襞の胸飾りのあるシャツ、
刺繍入りの黒絹の丸帽を身につけていることに気づいた.
と、しっかり修飾関係がわかっていますよ、とアピール
するような訳にしたほうがいいと思います.
——————————— ≪Eh bien≫—————————————
驚き、失望、激励、躊躇、疑問など心が揺れたときに思わず発する
言葉.思わず発する言葉なので、私たち日本人が使うときも、その
ように自然な発話ができるようにしましょう.棒読みすれば滑稽に
なります.
以下「ロワイヤル仏和中辞典」での例文です.
Eh bien ! Vous avez réussi ! / なんだって、君が成功したって.
Il ne vient pas ? Eh bien, partons. / 彼は来ないの、仕方ない出発しよう.
Eh bien ? Que ferons-nous ? / それで、どうしよう.