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五飯田八宝菜の語学学習日記


1489番:最後の授業(8)

最後の授業(8)
         LA DERNIÈRE CLASSE
     Récit d'un petit alsacien


 ——————————— 【8】—————————————

 Eh bien*,  non.  M. Hamel  me  regarda  sans  colère ¹ et  me  
dit  très  doucement:
  « Va  vite  à  ta  place,  mon  petit ²  Frantz;  nous  allions
commencer ³ sans  toi. »
  J'enjambai⁴ le  banc⁵ et  je  m'assis⁶ tout  de  suite⁷ à  mon
pupitre.    Alors  seulement,⁸  un  peu  remis  de⁹  ma  frayeur ¹º,  
je   remarquai ¹¹  que   notre  maître   avait   sa  belle  redingote ¹²
verte,  son jabot ¹³  plissé*¹⁴  fin¹⁵  et  la calotte¹⁶  de  soie  noire  
brodée ¹⁷ qu'il  ne  mettait  que ¹³  les  jours  d'inspection  ou  de
distribution  de  prix.

 ——————————— (訳)—————————————
 
ところが、さにあらず.アメル先生は怒ることなく私を見て、
優しく言ったのです.
 「フランツ君、早くご自分の席に着きなさい.君がいなくても
始めるところでしたよ」
   私はすぐに腰掛けを跨いで座り机につきました.少し不安が
和らいで、それでやっとアメル先生が緑色の立派なフロックコー
トを着ていることに気がつきました.シャツの胸飾りには細かな
襞がついていて、丸帽子は黒の絹製で刺繍が施されていた.それ
は教育視察の日か賞授与式の日にしか着ない服装であった.

 
——————————— 《語句》—————————————

 1)  san s colère: sans の後に抽象名詞が来て、2語で1種の副詞を
     作るときには一般にその名詞には監視をつけない. 
 2)  mon petit Frantz: 所有形容詞はしばしば親愛感を示すため、呼
     びかけの名詞に添えられる.この場合 petit は「小さい」で
        はなく、「親愛な」という意味.ただし訳すときは「親愛な
    るフランツ」とすると日本語としては大げさなので訳しませ
    ん.(感情表現様式は私たち日本人とはやや異なるようです) 
 3)  nous allions commencer: aller + 不定詞は <近い未来> を示す.
     この構文では aller は主として直説法の現在と半過去に用い
    られ、本来の「行く」の意味を失って助動詞的な働きをする.
    本文のように aller が半過去に置かれると < 過去における近
    い未来 > を示す.   
 4)  enjambai:enjamber の単純過去(1単)「ひとまたぎする」  
 5) banc: (m) 腰掛、席
 6)  m'assis: s'asseoir の単純過去     
 7)  tout de suite: 「すぐに」         

 8)  alors seulement: 「そのときはじめて」 
     seulement には「やっと」の意味があります.    
 9)  remis de: remettre の過去分詞.ここではcalmé (気が落ち着いた)
       の意.de は「~から」
10)  frayeur:[frɛjœ:r](f)  (激しい) 恐怖、不安   
11)  remarquai que: remarquer の単純過去 「~であることに気づく」  
12)  redingote:[ルダンゴット](f) フロックコート(昔の) 
13)  jabot:(m) (レースなどでできた)シャツの胸飾り 
14)  plissé (過去分詞) <plisser (他) 襞をつける 
15)  fin (形、副) 細かな、細かに     
16)  calotte (f) 頭にぴったりのお椀型の小さな帽子
       聖職者のかぶる丸い縁なしの帽子    
17)  brodée (過去分詞) <broder (他) 刺繍する
18)  ne mettait que: ne ~ que = seulement. 
     mettait (半過去) <mettre; この場合の mettre は「着る」. 
19)  inspection:(f) 検査、視察
20)  distribution de prix. 賞の授与式


—————————— 《関係代名詞》—————————————  

フランス語の関係代名詞は、英語と違って、制限用法、非制限用法
の区別がありません.基本的には訳し上げるので、試験問題で仏文
本文が和訳問題で出されたときは、
たとえば、このくだりは

je remarquai que notre maître avait sa belle redingote verte,  
son jabot plissé fin et la calotte de soie noire brodée qu'il  
ne mettait que les jours d'inspection ou de distribution de prix.

私は先生が視察日か賞授与式の日にしか着ない立派な緑
色のフロックコート、細かな襞の胸飾りのあるシャツ、
刺繍入りの黒絹の丸帽を身につけていることに気づいた.

と、しっかり修飾関係がわかっていますよ、とアピール
するような訳にしたほうがいいと思います.

    
——————————— ≪Eh bien≫—————————————

驚き、失望、激励、躊躇、疑問など心が揺れたときに思わず発する
言葉.思わず発する言葉なので、私たち日本人が使うときも、その
ように自然な発話ができるようにしましょう.棒読みすれば滑稽に
なります.

以下「ロワイヤル仏和中辞典」での例文です.
Eh bien !  Vous avez réussi ! / なんだって、君が成功したって.
Il ne vient pas ?  Eh bien, partons. / 彼は来ないの、仕方ない出発しよう.
Eh bien ?  Que ferons-nous ? / それで、どうしよう.




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