Nicotto Town



南の魔女クレア70


クレアは必死に水龍の角に捕まった。
確かに水龍のたてがみの中に無数のシャボン玉を一回り大きくしたような泡の様な玉が無数にある。クレアは必死に水龍の角を引き寄せながら水龍にまたがると其の泡の玉の一つに顔を近づけて強引に口と鼻を突っ込むと息が出来て楽になった。だが直ぐに其の泡は無くなってしまった。水龍はクレアを乗せると水の中を凄い勢いで泳いで行く。クレアは振り落とされない様に必死にしがみつきながら水龍のたてがみの中の泡玉を探しては鼻を突っ込んだ。そして中の空気を吸うとまた頑張って水龍にしがみついた。其れを何回か繰り返しているとふっと水の中から抜けて水の無い岩穴の中に着いた。遠くにうっすらと灯りが見えるが其処までは長く暗い岩穴を通らないと行けそうにない。どうやら其の光っていそうな所が魔石がある所の様だ。クレアは一歩歩き出して左足の右足首の激痛に気が付いた。どうやら捻挫した所を更に深く潜る為に足を動かして捻挫を拗らせたようだ。それでもクレアは岩壁を伝いながら足を一歩進めては捻挫した足を引き寄せるというのを繰り返しながら前に進んだ。3m位進んだだろうか流石にクレアも激痛に耐えられなくて足を止めて壁にもたれかかった。
水龍が行けと言わんばかりに鼻を押し付けて来る。クレアはだめもとで水龍に話しかけてみました。「貴方は何時から此処にいるの?」「遥か昔からだ」と答えました。「貴方は何歳なの?」水龍は表情を変えずに「年齢は無い」と答えました。「雄なの?雌なの?」とクレアが聞くと「どちらでもない」と答えました。どちらでもないってどうやって子孫を残して行くのだろうか?そんな可笑しな話はありません。「ではどうやって次の世代に受け継ぐの?」とクレアが聞きました。「自分が死ぬときに卵を産んで死んでいく。その卵が孵化して龍が生まれる」クレアには理解できない話です。多分此れ以上聞いてもクレアには解らないとおもいました。
「ふ~ん、所で私の足が悪いのが解る?」クレアの質問に水龍はまた表情を変えずに答えました。「ああ、わかる。」「だったら私を乗せてあの魔石がありそうな所まで連れて行ってくれない?」「其れは今は出来ない。」水龍は相変わらず表情の無い顔で口だけ動かして言います。「何故?此処まで運んできてくれたじゃない。」すると水龍が「貴方の魔力は其処までしか今の所は無い。魔力によってしてあげられる事が決まっている。」と言いました。「ケチッ」とクレアが言うと「ケチと言うのはどういう意味か?」と水龍が言いました。「不親切と言う意味なの」と言うと「不親切ではない。貴方の魔力が足りなくて私は貴方を乗せて運ぶに値しないので出来ないという事だ」と言いました。
そしてまた急げと言わんばかりに鼻でクレアを押しました。クレアはまた岩肌を手探りしながら足をひきづって前に歩き出しました。また3m位行った所でクレアは岩壁にもたれて水龍に話しかけました。「貴方は空を飛べるの?」「飛べる」「誰かを乗せて飛べるの?」「飛べる」しめたとクレアは思いました。「私を乗せて飛べるかどうかを見たいからちょっと乗せてあそこまで飛んでみない?」と言うと水龍は「今の貴方の魔力では乗せる事が出来ない」と言いました。「本当は私を乗せて飛べないんでしょ」と言うと水龍は黙ってしまいました。引っかからなかったかと思い仕方なしにクレアはまた岩壁を伝いながら足を引きずりながら前に進みました。痛みで汗が出てきます。もう限界とクレアはずるずると壁伝いに体を倒れ込む様に座り込みました。もうどうでも良いとクレアは思いました。魔石を手に入れた所で帰る体力は残ってない物。此処まで来れただけで私はやれるだけの事はやったわ。さよならみんな、さよなら地上の世界。さよなら風の匂い。さよなら花々、さよなら青空・・・。そう言うとクレアは目をつぶって死ぬ準備をしなきゃと思いました。後で発見した人がこんな格好の骸骨を発見して驚くだろうなぁと思って水龍に私の死体はどうなるのかと聞いて見ました。水龍はお前が死んだら死んだら外に死体を加えて出すだけだと言いました。クレアは目をしっかりと開けて「死んだら加えて出せるのに、何で今は咥えてあそこまで運べないのよ!」と水龍を睨みつけました。なんて最低な奴でしょう。死体は魔力何て無いのに加えられて生きていてまだ魔力は少しはあるのに加えられないというそう言う性格の悪い意地悪な奴は一番いやな奴だ!クレアは何とか立ち上がると水龍に前に岩にもたれかかりながらも前に足を引きずりながら一歩進むたびに「馬鹿!死ね!お前の様な糞性格が悪い奴は見た事が無い。」次の一歩をすすめながら「死体を運べて何で生きてる人間を運べないのよ!」また次の一歩をすすめながら「信じられない。良く平気でそんな事が言えるわね。」「どんだけ糞意地が悪いんだ!」と一歩歩くたびに水龍の悪口を言いました。「そう言う、そう言う、糞悪い性格だから此の岩穴の中に居させられるのよ!」とクレアは水龍をにらみつけると吐き捨ている様にいいました。「性格が良かった青空を飛ぶ事が出来るのに」それから一歩岩壁に持たれながら足を引きずりな多羅進と「馬鹿、糞馬鹿野郎。」といいました。光がだんだん強くなってきました。クレアの悪口も出なくなってきました。よろっと岩に体を押し付けて立っている力もなくなって気を失いそうです。またクレアは岩壁にもたれる様に腰を下ろしました。
すぐそこに光が見えます。水龍は何も言わずについてきてます。
クレアは水龍の方を見ないで言いました。「私の前に来たのは何年前の事?」
「300年位まえだ」と水龍は答えました。「其の前に来たのは何年前?」ときくと「500年位前だ」と水龍は答えました。
クレアは一体此の水龍は何年位此処にいるのだろうと思いました。
クレアは「何年位此処にいるの?」と聞くと覚えていないとこたえました。クレアは自分の歳も解らないのだから其れはそうだろうと思いました。
「ずっと一人でいるの?」と聞いて悪い質問だったかなと思ってチラッと水龍の方をみました。水龍は相変わらず無表情で「ずっと一人でいる」と答えました。
寂しくないのかと聞こうかと思いましたが流石にクレアは気を使って其の質問はしない様にしました。
足の痛みだけでなく壁に体を押し付けて倒れない様にして進んで来たために背中も肩も擦り傷だらけで腕の力で岩の少し出っ張った処を掴むと其れを引っ張る様に前に進んでいたので腕の力も限界の様に思えます。
痛みに堪えて汗が出ているのが解ります。
クレアは今度座り込んだら立ち上がれないと思いながらもずるずると座り込んでしまって流石に顔を上げる気力も出てきません。
チラッと顔を上げて横を向くと以前より光が強くなって少しずつでも近づいているのが解ります。
クレアは此れが最後の力でも何でも良いので立ち上がるとただ前に光の方へと其処に行けばたどり着けば其処まで行けば他の魔女が出来のだからと思って一歩また一歩と前に進みました。
其処まででした。クレアはまたずるずると岩に体を押し付ける様に倒れると今度は顔を土に付けて起き上がれなくなりました。





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