南の魔女クレア65
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/19 22:49:34
アクレはもう村に来ないでくれとだけ言うとうつむいて帰って行きました。
クレアには村長さんの態度と言い何が何だか解りませんでした。
峠の雪が解けて道が固まると果樹園のリンゴを取って売りに行く仕事が始まりますがクレアは魔女の助手を止めようと思っているのでどうしたら良いかと渋ってました。
其の日も果樹園の仕事をするではなく家の中にぼーっとすごしていると水の精と他の妖精たちも大騒ぎをして「クレア!クレア!」と呼んでます。
何事かと思って水の精が渓谷の方に引っ張って行くので渓谷を掘った急な階段を下りて行くと何と渓谷の下の川岸に男の人が上半身は何とか服をきているようなのですが下半身は何も吐いてない様に見える男の人が川岸の打ち上げられています。聞けばもっと川の中に居たのを此処まで水の精が何とか水を操って引き上げたと言います。兎に角他の妖精たちと一緒に其の男を壺を乗せる板に運ぶとロバを使って引き上げました。其処から果樹園を作業する妖精たちも呼んでみんなでクレアのベットまで運びました。何とかかすかに息をしている様にも思えます。クレアは「魔女の回復薬」を飲ませようとしましたが飲みません。口移しと言う事も考えましたがやった事がありません。小さなティースプーンでボルアートの義姉が赤ちゃんにスープを飲ませていたのを思い出して小さなティスプーンに少しだけ「魔女の回復薬」を口の中に入れると必死に飲み込む様に念じました。其れが通じたのか偶然なのか喉が少し動いたように思えます。其れを3回位繰り返しました。男の人は真っ青だった顔色が少し色が戻った様に思えます。医者を呼びに行きたくても村には来るなと言われています。診療所のお医者さんを呼びには行けない様です。兎に角病院に行くまでの命を繋ぐのに役に立つと言うマドレさんの言葉を信じてクレアは次第にスプーンを大きくして口に入れると飲み込めと念じました。
顔色が少しずつ良くなって来たように思います。其れでもまだ一瓶も飲んでません。せめて一瓶だけでもと思いましたが半分位そうやって飲ませると後は妖精たちに同じように出来るかと聞くと妖精の一人が花の妖精が蜜を飲ませる管を使うと魔女の薬をもっとうまく飲ませれるかもしれないと言うので花の妖精を連れてきて管に「魔女の回復薬を少し入れて其れを口に持って来て深く居れると喉がゴクンと動きました。
其れを繰り返して何とか一瓶を飲ませるとクレアはロバにまたがると急いでマドレさんの所に助けをもとめに行きました。
マドレさんは近所から馬を借りて駆け付けてくれました。
其の後からロバでクレアも追いかけましたが妖精たちが魔女の森の玄関を開けて待っていてマドレさんを中に入れました。
マドレさんがまず膨らんだお腹を中の水を吐き出させてそれから「魔女の回復薬」を飲ませました。何とか一命は助かった様です。マドレさんが言うには彼の来ていた服についている紋章はかなり高貴な家の物だから警邏隊に届けた方が良いだろうとの事でした。
其れからクレアはマドレさんと一緒に上着を脱がして濡れたシーツも変えてベットの濡れた所はバスタオルを重ねて新しいシーツにかえると下半身が裸なのは可哀そうだからとウエストがゴムが入っているスカートをはかせました。
マドレさんが「魔女の回復薬」を飲ませる時間帯を書いて行ってくれました。3時間おきに羊のメイドに起こして貰って何とか薬を飲ませると彼は少し意識をとりもどしましたがまたうつらうつらとしています。それから6時間おきに「魔女の回復薬」を飲ませると彼は意識を少しだけ取り戻して辺りを見渡している様です。
「此処は?」と聞くので「南の魔女の家で貴方は此の下の渓谷に流れ着いて殆ど死んでいたのですよ」と脈がほとんどなく時々もしかして生きているかもと言うと事で顔は真っ青で死人だったけど板に渓谷から乗せる時になかなか乗せられなくて体をあちこちみんなで動かしたら水を少し吐いたので助かるかもと思ってと其の後の事を話しました。
其れから今からちゃんとした所に移すために警邏隊を呼びに行ってくるからと言うとクレアは急いでロバを飛ばして警邏隊の地区支所に行くと訳を話して男が来ていた上着を見せました。
警邏隊の人は其の上着の刺繍の紋章を見ると顔色を変えて大騒ぎをしてましたがクレアは急いで戻って次の「魔女の回復薬」を飲ます時間に間に合わせる為に戻りました。
警邏隊の人が彼を運ぶ馬車を用意して魔女の森の魔女の入り口に付くと何時も閉まっていてどこが入り口か解らないのにちゃんと入り口が開いて一人の妖精が手招きをします。
警邏隊がついて行くと大きな木の家があってドアを開けてどやどやと中に入ると奥の部屋のベットに一人の男が寝かされていました。
傍にクレアが心配そうに付き添ってます。
更に警邏隊の人達には見覚えがある漢方屋のマドレさんが男用寝間着を持って来てくれていたので其れに着替えさせて港町の医者の所に運ぶ事にしました。
帰り際に其の男がクレアに世話になった此の礼は必ずするからと言うのでクレアが慌てて其れなら一筆書いて行ってくれと紙とペンを渡しました。
警邏隊が呆れていると今大変な事が村でも港町でも起きていて大きな力が必要なのと涙目で言いました。
其の男は近くの椅子に座ると何が起きているのかは解らないが必ず力になってあげようとペンを走らせました。
其のサインを見てクレアは卒倒しそうになりました。其処にはクロエルド国第一王子と言う言葉と名前が書かれていたのです。
クレアは唖然としている間に警邏隊によって彼は馬車に乗って去って行きました。
彼が去った後にクレアは残っていたマドレに村の様子を知らせました。
そして村に近寄るなと言われた事も言いました。
自分は魔女になる勇気もないしかといって此のままだと「魔女の回復薬」も今回殆ど使ってしまって港町に売りに行けないしとリンゴやミカンだけを売りに言っても可笑しいしと言ってうつむきました。
もう疲れたとクレアはぽつんと言ってテーブルの上に頭を乗せて目をつむって黙ってしまいました。
マドレは何も言わずに軽くクレアの肩を叩くと帰って行きました。
何日もクレアの「魔女の回復薬」も果物を売るロバの荷馬車も春になっているのに港町には来ませんでした。
そんなあるにアクレからパンを受け取った羊のメイドがアクレが泣いて立ち去らない。何かクレアに話しがあるのではないかと言ってきました。
クレアがアクレに上に上がって貰って家に居れる様に言うと泣きながらアクレが入ってきてバロルドさんが首をつって死んだと言いました。
何があったのかと聞くと奥さんがさらわれて薬を大量に飲まされて殺されて死体が診療所の玄関前に捨てて在ってその後にバロルドさんが首をつって死んだと言うのです。
男達は魔女に言うと此の村を焼き払うと言われているので此の事は内緒にして欲しいと言いながらもしゃくりあげてアクレは泣き続けました。
クレアは思わず手を自分の額に持って行きながら何が起きているのかを必死で頭で整理をしようとしました。