南の魔女クレア53
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/15 15:22:15
クレアは館に帰るとウィルお兄様がピェールお兄様と最後は殴り合いのけんかをしてウィルお兄様が既に戦地に召喚に応じて行ってしまわれた事をフリージャが教えてくれました。
隣の部屋で聞いているとウィルお兄様がクレアが洋服屋の魔の手からセリスとモニリスによって逃れていた事を言うとピェールお兄様がそんなのは洋服屋が来るたびに当時は覗いていたから知っていると言ったそうで其れをピェールお兄様がウィルお兄様に教えなかった事を抗議するとお前が父さんの信頼を自分より得ていたからな、此れでお前とクレアがくっつくと父さんと母さんの両方の意見でリヤド農場はお前達に渡る事になれば体の弱い俺は此の家から用済みになると困るからお前たちがくっつかない様にいわなかった」と言ったそうです。
クレアはピェールお兄様がテーラーさんが私に何もしない様にセリスとモニリスに守られていた事を知っていた事にほっとしました。フリージャが敏感にクレアの心の秘めた部分を察知した様でした。それからフリージャの態度がよそよそしくなってきました。
此の館にクレアの相談に乗ってくれそうな人はいません。クレアはピェールお兄様に言いそびれた持って行った半分以上のお金がまだ手元に残っている事を言うべきか言わざるべきかを迷っていました。
其れはあの買った農場が総てがクレアの物として手続きをしてますのでウィルお兄様の分です。クレアはウィルお兄様が戦地から帰ってきたら渡す事にしてクレアの部屋の秘密の場所に其のお金を仕舞いました。
お母様の宝石は半分はフリージャに渡そうと思っていましたが露骨によそよそしい態度を取るので其れも秘密の場所に幾つか仕舞いました。
次の日にクレアは赤い勝負服に身を固めてジルドの不動産屋を何軒か回ってどの不動産も幽霊が出る修道院の事は知ってましたが幽霊が出ない小作人に貸している土地を小作人事売りに出したいと小作人の書いた確約書を見せて値段はクレアがあの修道院を買った値段を付けて運が良ければ元が取れて時間が経つと少しずつ値段を下げていく事にしました。其の値段でも上に小作人がいるので通常の半額にしても其の値段は低いと思われる値段でした。
次にクレアはトウニに向かいました。すっかり日も暮れてくれはマージのホテルではなく安いホテルを予約して夕食を食べに近くのレストランで軽い食事を済ませて出た所で声を掛けられました。振り向くとセリスが其処に居ました。どうしているのかと聞くと長い話になるのでと言うのでクレアは自分が取った安いホテルに案内しました。
其処でセリスから聞いた話は衝撃的な物でした。クレアが朝早く農地を買うために出された事を知ると多くの古くから居る使用人が抗議をしたそうです。
其れ以外にお父様の死亡の原因を究明させるためにも一番傍にいた季節労働者の人達を残して真相を解明すべきだったとも抗議をみんなでするとピェールお兄様はスキャンダルになるより事故死が良いと言って真相を究明されるのを嫌がったそうです。ピェールお兄様が不満があるのなら止めて良いと言うのでみんなは館を止めたそうです。クレアはみんなの就職先を心配しましたが全員直ぐに仕事先が決まったそうです。
特に庭師のモーグは伯爵家がかなり高い給料で雇ったそうです。何でも伯爵家に居た老人の庭師が体調を崩した事と次の年配の庭師が馬車の事故で亡くなって若い庭師は戦争に行って少年が二人しか残ってなかったそうです。其れ以外にも使用人が戦地に行って人手不足でモーグと二人の使用人が伯爵家に決まったそうです。
其れ以外にもモニーク様の家とマージのホテルも其の噂を聞いて名乗り上げてきてくれましたが其の前に全員がリヤド農場の館で働いていたのならと直ぐに仕事先が決まっていたそうです。
自分も子爵家にもう一人の使用人と一緒に働けることになったそうです。
そして元使用人達は旦那様を殺した犯人を捕まえる為にそれぞれが其々のやり方で調べる事にしたそうです。まずウィルお兄様とシーズがあの事件の前日の夜に二人一緒にあの小屋の方へ行くのを見られているそうです。
クレアは「まさか、ウィルお兄様がお父様を信じられない」と言うとセリスはウィルお兄様とシーズは結婚したいとお父様に言って反対されていた事、そしてシーズのお腹にはウィルお兄様の赤ちゃんがいる事を言いました。セリスは其のお腹の赤ちゃんも本当にウィルお兄様の子か解ったもんじゃないと言いました。
クレアはシーズについて聞き覚えがあります。そうです3階の窓から見ていて9歳から自分の畑の手伝いをしていた働き者の女の子でウィルお兄様とよく話をしていた女の子です。
セリスは其の後も色々な事が解ったら手紙を出すと言って修道院の住所も聞いて帰りました。
安っぽいホテルの窓から初雪が降るトウニした街が見えます。雪は降りつっもて根雪になるかもしれません。
全員が直ぐに仕事が決まった事にほっとしながらも此れもお父様が悪いスキャンダルに気を使って隠蔽して来たからです。自分とボルアートの結婚も私が専門学校時代に本屋で働いていたと言うのと門限をしょっちゅう守らなかったと言うスキャンダルをもみ消す代わりに此の縁談を領主と言っても実際は貧しかったと言うのを調べもしないで直ぐに承知したのでした。
そうやって悪いスキャンダルをもみ消して信頼を得ていたからこそリヤド農場の館に努めていたと言うだけですぐに使用人達は仕事が決まったのです。
白い雪が何かを隠す様にそして真っ白な世界に色々な色を隠して積もる雪の様に其の下の色々な色の様にリヤド農場のスキャンダルは隠し続けられてきたのです。信頼していたお母様とテーラーさんの関係も本当はお父様は知っていたのかもしれません。だからお母様がなくなった後は総てのクレアのドレスはモニークの店に変わりました。
だからクレアがお母様の洋服を少し欲しいと言うとまるで汚いぼろ布を入れる様に野菜を入れる為の木箱に乱暴にぎゅうぎゅうと詰めてよこしたのでした。其の時の御父様の顔を思い出しました。あれは厄介な嫌な思いを自分の館から出す事を喜んでいたのだろうとクレアは思いました。表立ってあれだけの高級な服を捨てるわけにもいかなくて処分に困っていたのでしょう。
窓の外の雪は初雪だと言うのにまだ降り続けて居ました。
ふとクレアは其の安宿の窓を開けて其処から屋根の上に移りました。
私も嫌な思い出を雪は浄化してくれるだろうか?シーズの事を聞いても何の嫉妬心も起きなかった。
其れよりもいくら私を誤解していたとしても私を軽蔑して其れを態度に出していて容赦なく剣を打ち込んで来たウィルお兄様が決してクレアの剣の腕を磨かせようとしているのではない事はクレアは察知していたのです。
ダンスの練習もお父様やお母様に言われたからしたのであってボルアートと練習をしてみて如何にウィルお兄様が投げやりに相手をしていたのかが解りました。
ピェールお兄様が決めた事だからウィルお兄様と結婚したけど此れが自分の意に反して親の決めた人と結婚する女の辛さなのかとクレアはボルアートの時とはまた別な自分が無くなって行く思いをウィルお兄様に抱かれながら感じていたのです。
あの夜の日々を雪は少しでも消してくれるのだろうか?