南の魔女クレア52
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/15 00:36:38
クレアは帳簿を2冊ほど持って帰ってホテル代わりの病室でじっくりと健闘しました。
明日からは修道院の空いた部屋を使って何日でも使って良いし食事も出ると言うのでそうさせてもらう事にしました。
バロルドさんにお礼を言って修道院に移ったクレアは一人残った修道士と修道院の留守を頼まれて数か月の約束来たクロラルド国に家族を残してきた1年以上此の土地が売れない為に残っている3人との生活になりました。
修道士さんと午後に数時間通ってくる村長さんはクレアの的確で細かい質問に驚きながらも答えてくれました。
其々の野菜の平均収穫量を10年単位で見ながらも極端に少ない時の天候と其れ以外の考えられる原因を聞いたり其れ以外に細かい種類の作物の収穫と管理と其れがどのように消費されたのかという事。人件費の所で汗をふきふき村長さんが実は此処の労働力の大半は修道士がクロラルド国に行ってしまった後は村の人達が雇われて仕事をしている事と其のまま彼らを今の待遇で雇って欲しいと言う条件がある事を言いました。
次に出荷場所と其れを運ぶ運賃と其の方法を聞くと荷馬車に乗せて何と隣の国の商人に売っているとの事。
クレアは馬を持って来て更に何時も売りに行くと言う村人に来て貰ってシルバニア国の南隣の其のモゾリアナ国の小さな港の商人がいると言う市場まで案内して貰いました。
其れは此の修道院をずっと南に行くにつれて坂道を上ります。渓谷にたどり着くと荷馬車がやっと通れそうな木の橋があり其の橋の北側がシドリアル国で南側がモゾリアナ国です。
モゾリアナ国に橋を渡って入ると右側に大きな深い森があってうっそうと木が茂っていて馬に乗っているクレアの倍の高さぐらいでしょうか?3m位の道幅の横はこれまた岩山があって其の間をしばらく通って行くと今度は一面開けた両側に美しい花が咲いた所に出ます。
後は急な坂道を下って行くと小さな港町があって其の港の手前に市場があり商人たちが船に荷物を乗せる為に指図していて荷役人が荷物を船に乗せています。港と言っても大型船は一艘も無く殆どが小型に近い中型の船で其れが1艘とボートとの中間位の小型船が二艘止まっているだけです。中型の船がモゾリアナ国の首都の大きな港に行く船で後は漁船で此の近海で魚を取ってきていて市場で売っているそうで其れでもモゾリアナ国の首都の大きな港町クアナに行く事もあるそうです。
クレアは修道院から野菜を買っている商人から修道院の野菜の評判を聞きました。出来が良くて高く売れるので気に入っているとどの商人も言います。此れは安定供給が見込めそうです。次の日はクレアは広大な既に収穫が終わった畑を見て回りまって取り残った野菜を手に取ってみました。ジャガイモも人参も良い出来です。更に休耕地の土も手に取って揉んでみました。良い土です。
3日目は小作人の畑を見て回りました。リヤド農場の小作人に貸している土地の2倍の土地を借りている様です。豚や鶏を飼っている家もあって此れは村の肉屋に卸したり自分達が食べたり修道院に売ったりとしているそうです。小作人の生活も豊かに見えました。
此処の唯一の責任者の人が買ってくれるなら今年の秋の収穫の利益はそちらに渡しますと言ってくれました。3人の留守番出来た人達も早くクロラルドに帰りたがっているそうで自分も同じ気持ちだと言いました。いよいよ値段の交渉です。相手側が提示した金額はクレアが予定していた金額の3分の1でした。クレアが驚いた顔をしたのでまだ値をひいて良いと言います。結局今の小作人の土地は此のまま貸し続ける事と村の人達は此のまま雇い続ける事を条件にクレアが考えていた値段よりも4分の1で交渉が決まって契約をしました。
勿論幽霊付き物件です。幽霊はクレアの交渉の間も資料を読んで質問をしている間もずっと側にいてみて居ました。
其れからクレアは村からの来ている使用人を集めて自分の留守の間の段取りをしました。結局此れからの冬の間の管理は修道士との人とクロラルド国に身寄りが無い一人が残って管理をしてくれる事になりました。
クレアは開いている部屋の一つに馬車に積んでいた荷物を移して此れから新生活がいよいよ始まると思うとワクワクしました。
クレアは其処をクレア農場と名を付けて荷物も修道院に殆ど置いて僅かな手荷物を持って馬車で館に報告する為に帰って来ました。
館ではとんでもない事が待っていました。
まずクレアが小さい時から居た使用人が殆どいませんでした。残った使用人に聞くとみんな止めて行ったそうです。
ピェールお兄様がクレアが農場を買って既にお金を払って契約を済ませた事、其れが10年も売れ残っていた幽霊が出ると言ういわくつきの農場だった事をしると顔を真っ赤にして怒って直ぐに契約を破棄して来いと怒鳴ったのです。
そしてウィルお兄様をみるとどいつもこいつもなんて事をするんだと怒りました。
クレアがとても良い所だから破棄したくないと言うとピェールお兄様は破棄したくてももう誰も買わないのは解っているから破棄に応じないだろうと言いました。
最初は何故そんなに怒っているのか解らなかったのですが、次第にウィルお兄様に「兵士召喚書」が届いて召喚を免れるためには膨大なお金がかかる事が解ったのです。
更にピェールお兄様は「『あれ』はどうするんだ。『あれ』を館に入れろと言うのか!」とウィルお兄様を見ると更に顎で一人のお腹が少し膨らんだ女の人を顎で指してます。
「クレアはもう売れない土地に金を払って来たと言うし、ウィルは「あれ」を館にいれると言うし、此の家はどうなってしまうんだ!」とピェールお兄様は顔を真っ赤にして怒鳴ってクレアが何か言おうとすると「お前に何が出来るのか!!とんでもない事をして金をどぶに捨てて良く恥ずかしくなく帰って来れたな。!」と言って持っていたグラスを床に投げ捨てて割りました。その破片がクレアの靴にあたってくれは驚いて飛び跳ねてよけました。
それからクレアに向かって「お前は其の土地を売って金を取り戻して来い!今すぐに行け!」と怒鳴りました。
ウィルが「俺がついて行くと言ったのに反対したのは兄さんじゃないか!」と言うとピェールお兄様はまた一人の女の人を顎で指して『あれ』をどうするつもりだ。俺は『あれ』を此の館に入れるのは認めないぞ。すぐに俺の目の前から連れ出せ!」とウィルお兄様を怒鳴りました。
クレアは悲しくなって「ピェールお兄様、そんなに怒らないでクレアは直ぐに契約を破棄するか誰かに売って来るから」と言うと館を飛び出して直ぐに馬車に乗ると馬を走らせました。誰かがクレアを呼び止めて居る様な気がしましたがクレアは夢中で馬を走らせて戻りました。
事情を村長さんに話すとお兄様の御怒りは解ると言って修道院に一緒に行ってくれました。
だが一足遅く修道士さんはお金と契約書を持って昨日の夕方にはクロエラルドに行ってしまわれた後でした。
村長さんとどうしたら良いかと色々話している内にクレアは良い方法を思いつきました。
修道院の方は其のままで幽霊の出ない小作人達の土地だけを売ると言うアイディアです。小作人の家に全部回って小作人達は此のまま此の土地に残れるのなら土地の持ち主が誰に代わっても構わないと了承を得ました。