【第18話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/11 00:40:01
夜は、静かに それでいてにぎやかに更けていく。
ダンスパーティーが終わったあと、会場でペアになった男女がメイン会場の外で三々五々、集っているのだがまだ夜は浅い午後8時。
「ねぇ… 拓海ってばさ… 本当は結衣ちゃんよりもっと気になる子がいたんじゃないの?」
コテージから遠く離れた、でもそんなに暗くない絶好のロケーション、大きなクヌギの木の下で沙也加は拓海にそう問いかけた。
「ん?なんなんなん??」
2人だけ。沙也加に誘われて外に出てきた拓海は、いきなりの問いに戸惑ったように目線を逸らしていた。
「あは あたしね… 結衣ちゃんと寄り添ってる拓海ってさ、そんなに意識してなかったんよ? 結衣ちゃんよりもっと…心もって行かれちゃった女子がいたのかなって思ってたの…」
沙也加は自分の前髪を指先でくるくると回しながら、拓海の隣で足元に目線を飛ばすだけで。
「えっと…そ そんなこと…」
拓海は自分の本当の想いを隠そうとしてか、言葉が揺れながら声を繋ごうとしていた。
「楓でしょ… 拓海が本当に好きな子ってさ」
「ぇ え えええ??」
沙也加は寂しそうに微笑むと、拓海を向き直り
「分かりやすすぎだよね。でも、あたしもさ…」
拓海の心の動揺を知ってか知らずか、一歩前に歩を進めた沙也加は、手を後ろに組んで振り返る。
沙也加のさらっとした髪が、夜風に吹かれてふわふわと舞う。
汗ばんだ素肌が、拓海を射すくめるように挑発の熱気を放つ。
「もう言っちゃうよ…」
「え?何をだよ…?」
「あたしさ… 拓海が好きなの…」
絶対に言えない。言いたくって仕方ないのに言えないって思いこんでいた、その一言。
沙也加が思っていたほど、その一言を告げるのは、本当はそこまで難しいことではなかったようだった。
一度堰を切れば、胸の奥に秘めた想いが、激流のように流れ出していくのを自覚しながらも、沙也加はその言葉を停めることができなかったんだろう。
「え…沙也加が… 俺を…?」
まだ浅い夜の静寂。自分を決意のこもった視線で見つめる沙也加の感情を、いま拓海は一身に受けていた。
「わかってるよ 拓海って楓に心奪われてるってことはさ…」
沙也加は寂しそうに、でもそれでいて吹っ切れたような表情を浮かべていた。
「もう、自分の心にウソついたり、隠したりするのはヤなの… 拓海があたしのことを、ただの友達だって思ってるってのは分かってる。でも…」
「うん…」
「言いたかったから言ったの!」
そう突き放すように声を張って、沙也加は背を向けるとコテージに向かって走り出す。
「お おいっ!」
「うるさいうるさいうるさいっ!呼び止めるなっ」
「うるさいうるさいうるさいっ!呼び止めるなっ」
髪が翻り、沙也加の背中を追いかけることもできず拓海は硬直したように立ちすくんでしまった。
周囲の暗がりには、ダンスパーティーで仲良くなった男女生徒が、甘いような、そしてバリアを張ったような会話を紡いでいたんだけど、拓海と沙也加は、その波には乗れていなかったようだ。
走り去る沙也加の背中を見つめながら、拓海は何を思っていたのだろう。
ぶわっと、一陣の風が吹き去った。そんな、イベント最後の夜だった。
(続く
さてさて~ 拓海くんはどうなるか?
さあ、拓海、どうするんだ~?
年内に終わりそうね、けーすけさん、頑張ってね~(^^♪