南の魔女クレア37
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/05 20:12:49
義母のうめき声と義姉の泣き声が聞こえるのを感じながらクレアは黙って3階に上がり夕食にも降りてきませんでした。次の日も一日降りてきませんでした。3日目になってクレアは黙って食事をしながら何故こんな時にもお腹がすくのかしら不思議と言うとまた黙って部屋に戻って行きました。
一応一日の内一度は食事に降りてきましたが何も言わずに食事をすると部屋に戻って行く日が続いきました。10日たった夕食の時に義母が葬儀だけはしないとと言って三日後に葬儀の日にちが決まりました。何時までも喪服を着ないクレアに義姉が喪服を何とか着せて事前に予約していた教会で葬儀をしました。村人も数人儀礼的に出席しましたが物も言わずどこか一点を見て動かないクレアを覗き込む様に一人の村人のお爺さんがクレアに「この度はご愁傷さまで・・・」と声をかけた時にクレアがにらみつけて「まだ死んだって解らないじゃない!行方不明なだけかもしれないでしょう!」と怒鳴りつけました。其の男はおどろいてとびのいて何かを言うと村人がごそごそと帰って行きました。義姉に促される様に教会をでるとダルシャが用意してくれた馬を付けた馬車にのってダルシャが馭者をして館まで帰って来ました。何時までも馬車から降りないクレアをダルシャが傍について黙って座っていてくれました。クレアは初めて人前で涙を流して声を出して泣きました。ダルシャが黙ってクレアの肩を抱いて一緒に泣いてくれました。
次の日も其の次の日もクレアが夕食に降りて来なかったので流石に心配した義母がクレアの部屋に様子を見に行って欲しいとダルシャに言いました。ダルシャは3階に入るなとダルボートに言われて居たのでおっかなびっくりクレアの部屋の前に行ってドアをノックしました。返事が無かったのでそおっとドアを開けて中を覗くと其の奥にベットがある部屋がありました。ダルシャがそっと覗くとクレアがボルアートの服を何枚もベットの上に重ねて其の中でじっとしていました。「大奥様がご心配なさってます」と声をかけるとクレアは少したってから「今下に降りて行くわ」と返事をしました。ダルシャは下に降りて其の事を伝えました。それからクレアはちゃんと食事だけはとる様になりました。
其れから10日ぐらい過ぎた頃にクレアは「義母に此の家の中で一番お金になりそうな物は何?其れを売るわよ。」と言いました。「其れを売ってどうするの?」と聞くので「裁判にかけるわ。」とクレアが言うので「まだそんな事を言って…あれ程」と言うとクレアが「自分の二人の息子を村人に殺されて悔しくないの!?」と怒鳴りました。義姉が「どういう事?」と聞くのでクレアが「税金を滞納するから其の様な事をする家から兵役に召喚されるのよ。そうして強制的に兵役の給料から税金を徴収するのよ。お義兄さんも其れで兵役に徴兵されて一番危険な所に行かされて死んだのよ。ボルアートもそうやって兵役につかされて強制的に自分の給料から税金を払わされたのよ。だから給料の3分の2も税金に取られているじゃないの。此れは村人が税金を払わなかったからそうなったの!お義母さんは自分の息子を二人も村人に殺されて悔しくないの!?」と言うと流石に義母もハッとしたまま黙ってしまいました。
其れからダルシャの方を見てクレアが此処の村人が自分の領土の村人より貧乏に見えるかと聞きました。ダルシャは「いいえずっと裕福な生活をしている様に見えます」と答えました。義母は其れを聞いて数歩よたよたとよろけて机の端に触りながら椅子にヘタッと座りました。義姉はしばらく黙っていましたがわなわなと口を震わすと「そんな、そんな…そんなひどい事が・・・」と言うと黙ってしまいました。
クレアは「だから私は絶対にあの人たちを許さない。」と言うと黙って宙をにらみつけて居ました。ダルシャはあの馬車の中の涙は悲しくて泣いた涙ではなく悔し涙だったのだと思いました。
しばらくしてまたクレアが此の家で一番高そうな物は何と聞くのでこの間みた金の龍の置物だとおもうけどと言いました。
クレアは其れを持って来て貰うとじっくりと其れを手に取って見直し始めました。其処の方に年代と刻印が押してあるわ?と其の置物の裏を見せました。確かに年代と思われる数字と日にちと刻印が押されています。義姉が此の刻印はシドリアル王国のお城のマークに似ているわと言ってお城のマークがついている例の額縁を持ってきました。
クレアは「これだわ!みんな来て!」と言うとあの昔の領主が書いていた日誌の様な物が置いてある棚の所に行って此の中から此の年代の事が書いてある所をさがしてと言いました。4人は必死に其の年代の所を探し始めました。何冊も見て義姉が此れが一番近いと思うけどと言って一冊を広げました。4人で頭を付けて其れに一番近い日にちを探しました。
義姉が「此処の文章を読んで!」と指さした所を読むと其処には「城の工事の為に多額の寄付をしたお礼に北の魔女のフォマ?フォァマ?とにかくなんかわからないけど其の人の守護龍の置物を送られると書いてある」とクレアが読んで言いました。義姉が「もしかして此れってすごい値打ちがあるんじゃない?」と言うのでクレアが「此れに関しての何か別の資料が無いかしら?ほらあの額縁みたいな書類が・・」と言うと義姉が探しましょうとあちこちの引き出しを開けて紙を色々取り出しました。ダルシャも色々と探し出し始めました。そして突然「あの向うの部屋の本段の所に古い紙の書類が入っている所が在るのですけど」と大量の資料が入った引き出しを開けました。
量があり過ぎてしかも字が小さすぎて更に字が消えかかっていて夕方になった暗くなった此の時間には全部見るのは無理でした。
明日の明るくなってから改めて探そうという事になりました。
次の日の朝の9時ごろでした。突然馬車が来て警邏隊の男がクレアを警邏隊長が呼んでいるので馬車に乗る様にと言うのです。
クレアは其の言葉使いと態度に腹を立てました。「此の家をどこの家だと思っているのですか。200年前に時にシドリアル王国の国王より領主を認められた歴史の教科書にも名が乗っている名家です。其処の領主を召喚しようとするなら其れなりの書状をもって出直しなさい。」と怒鳴りつけました。其の警邏隊はびっくりした様ですが一緒に来た仲間と何か話し合って帰って行きました。
義姉が「そんな事を言ってだいじょうぶ?」と言うので「どうせ新しい領主に税金を払わないと領土を没収すると言う脅しを言われるのよ」と心配げな義母に向かって言いました。それから4人で昨日の資料を調べ始めました。午後になってまた警邏隊がクレアあての手紙をもって馬で来ました。其の手紙にはボルアートの死を悼む言葉と伝えたい事があるので明日に迎えの馬車をよこすので来て欲しいと言う言葉を丁寧にかかれていて名前に警邏隊長ダルニなんたらとかいてあります。「ダルニ!」とクレアは声を上げました。次の日クレアは舐められちゃいけないと言って実家から持ってきたお母様の洋服の中で黒で一番豪華なのを着こんで迎えの馬車に乗りました。警邏隊の地方支部事務所は意外と質素だったのでクレアは驚きながらも中に入ると見覚えのある顔が其処にありました。お互いにすっかり大人になったのを自分達を心の中で確認しました。