南の魔女クレア30
- カテゴリ:自作小説
- 2021/12/03 20:22:56
雪が解けて来ました。此の地方にも遅い春が来たのです。
クレアは雪が解けたらボルアートの領土を見せてくれると約束していたので溶けかかると同時に領土の端っこまで連れて行けと騒ぎ出しました。
クレアがあんまりうるさいのでクレアの持ってきた洋服の中から厚手のスカートと羊の毛で出来た黒いボレロとクレアが庭の手入れの時に穿いていた靴をはかせると自分の子供時代の帽子をかぶせて今日中に端には付けないと言うとクレアがお弁当を持って行きたいと言うのでバンと水を入れた籠をもたせると外にでました。
クレアは雪解けの道を嬉しそうにどんどん前に進んで行くのをボルアートが追いかけると言う状態がつづいてましたが次第にクレアの足が遅くなはじめてました。
クレアはお弁当を食べたいというので倒木に腰掛けてパンと水を飲みました。
しばらくするとまたクレアがあるきはじめたので今度はクレアとボルアートが横に並んであるいていきました。
何が周りに変化があるたびにクレアが此処がそう?ときくのですがボルアートはまだまださきだと首を振って言うのでした。
クレアの足が次第に遅くなってボルアートがどんどん先を歩いていきます。やがてクレアが座り込んでしまってボルアートが気が付いた時はクレアの姿が後ろに見つかりません。ボルアートが慌てて戻るとボルアートを顔をみるとふくれっ面をしたクレアが座り込んで涙目になっていました。
何度もボルアートの名を呼んだのにすぐ来なかったとその辺に落ちている木の枝をボルアートに投げつけて「足が痛い」と言って木の枝で土を意地ながらすねています。ボルアートはしゃがんでクレアにおぶさる様に言うとクレアは機嫌を直してボルアートにおぶさりました。
ボルアートは暗くなるから戻るぞと言うとクレアはうなづいたようなのでボルアートは今来た道を戻りました。
館に着く頃はクレアはボルアートの背中で眠り込んでいました。
クレアがベットで目がさめると夕食がとっくに終わっている時間でした。
ボルアートが夕食を食べないでまっていてくれたので二人で襲い夕食を食べながらクレアが今日行った所はもう少しで領土の端っこだったのかと聞くと半分も言っていないとボルアートは言いました。
ボルアートが馬で行かないと端っこまでは行けないとぽつんと言いました。
此の館に馬が無い事はクレアは知ってましたので其れ以上はクレアは何も言わないで居ました。
流石に此処までくるとクレアは此の家が貧しいと言う事が解ってきました。
それとだだぴろい原野が此の家の領土なのだと言う事もなんとなく解りました。
しばらくすると2階の方でボルアートと義母の言い争う声が聞こえる日が続きました。義姉の鳴き声も聞こえます。あるときなどが義姉が泣きわめく声も聞こえました。
流石にそんな中にクレアは下に降りて行く気はしませんでした。
そんな日が連日続いていました。
春になっても寒い日が続くのに暖炉の火はつけません。
見回せば義母の義姉も冬よりも何枚もショールを重ね着を来ています。
動けば少しは体が熱くなって寒さをふせげるとクレアは思うのですが此の家に来てから義母も義姉も仕事をしている姿を見た事がありません。
物一つ運んでいる姿を見た事が無いだけでなく夕食後にクレアが自分の食器を台所に片付けようとするとボルアートが止めます。
本当に此の家の人達は何もしないのです。
クレアの家ではウィルお兄様もピェールお兄様も何か仕事をしているか体をきたえているか本を読んでいるか父親の事務処理を手伝っているかの仕事をしてました。クレアが子供の頃、3階の屋根裏部屋から見た風景はお父様を始めみんなが働いている姿でした。
クレアも自分の庭を貰って庭仕事をしました。
良い土を貰うために庭から出る許可を貰って畑に行って花の為に良い土を貰って小さな荷車に乗せて貰って其れをクレアが一人でよいしょよいしょと運びました。自分の庭の為の土を自分で運ぶ事はあの家では当然の事で誰も手伝ってくれません。その為にクレアの土はこぶ用の小さな荷車を態々作らせてお父様は自分で運ばせたのです。
自分の庭で花を育てたいと言った以上は其の責任を自分で負う事でもあると言うのがお父様との最初の約束です。
クレアにとって其れは当然の事で何の疑問も思いませんでした。
其の為にクレアが自分で運べる用の土を其れに乗せてもクレアが運べる様な小さな荷車を態々作って用意をしてくれたのでした。
そんな家で育ったクレアにとって此の家の人の行動は理解できませんでした。
絵本で読んだ領主は悪い人が多かったのは本当だとつくづく思いました。
そして税金を払わない村人の中の美しい娘を強引につれて行きました。
其処に王子様が来て助けてくれたのです。
其の貧しい村娘はお姫様になってお城で幸せに暮らしたのでした。
其の話だと此処の村人は其れよりも貧しい村人だとクレアは想像しました。
そして無駄に広い原野で何の手入れもする村人も居ないのだと思いました。
多分お爺さんとお婆さんばかりが住んでいる村人なのだとクレアは想像しました。
それにしてもイライラするのは館から出てすぐ外が無造作な細いクレアの背丈位の雑木と草が生えている事です。
御父様の畑に行く近くに手入れが怠たそう言う所が在るとお母様がお亡くなりになって落ち込んで居た時に其処を見てイライラすると言うと庭師のなたを使って柴を刈るやり方から細い幹などは斧で簡単に切って更に細かく切って暖炉にする薪に出来るまで切る切り方を教えてくれました。
クレアの背丈位の細い木は枝をなたでそぎ落としてみきだけにすると小さな手斧で簡単に幹が切り倒されて其れを石の上に片方だけ乗せて薪の大きさにどんどん斧を軽く振り下ろすだけで出来るのでした。
そうしていると何故か心のもやもやが少し癒されました。
つまり暗くじっとしているより何か体を動かしている方が少しの疲れでも眠れて眠る事で心が少し癒されるという事をクレアは教えられたのでした。
でも此の家では違いました。義母も義姉も何もしないのです。
そして更に連日の2階での言い争いが日々酷くなりボルアートが何かを投げたのか義母か義姉が何かを投げたのかガチャンとおとがしたりとボルアートが壁を叩いているような音がしたり義姉の鳴き声が聞こえたりしてました。
ピェールお兄様もウィルお兄様もお父様もイライラして壁を叩いたり怒鳴ったりしている事は偶にありましたのでそう言う時は使用人達もクレアも更にクレアが其れに接しない様にクレアを何気に引き離しているのを感じてクレアも其処から離れる様にしてました。
男の人が偶に仕事や人間関係でイライラして壁に八つ当たりをする事は知ってましたので其れで動揺はしませんでしたが義母の泣きながらの怒鳴り声や義姉の鳴き声には驚いてクレアはただただ3階にいる事にしました。
そんなときにボルアートへの兵役召喚令状が来たのです。
四日後にゼルセカにある軍の司令部に来るようにとのことでした。ゼルセカはボルアートが通っていた士官学校がある街です。
ゼルセカの駅を挟んで北側に士官学校や専門学校があったバスタ地方の軍の司令部があって其処へボルアートは召喚されたのでした。