南の魔女クレア23
- カテゴリ:自作小説
- 2021/11/28 14:19:14
「基礎的な花壇の作り方の練習なのでバラはとてもとても」と言って「館の縫子にドレスが汚れないようなすっぽりかぶれる服を作って貰って」と言うと其の伯爵令嬢も「私もこんな大きなエプロンを着せられて」と笑った。誰かが「縫子?」と言うので「館に縫子の作業室があって使用人のエプロンとかテーブルクロスとか専門に縫う人がいて」と言うとまた伯爵令嬢が「うちにもいて館中のカーテンを取り変える時は二人とも必死だったわ」と言った。周りは何の事か解らないようだったが彼女は話を進めて新しいカーテンによって家が全然違って見えて父と母の意見が違うと大変なの。」と言って笑った。それからしばらくは彼女の家のバラ園のバラの新種を作るやり方とか薔薇の種類の土の混ぜる割合の話になり「まるで料理人の開発したレシピの様ですのね」と言うと「貴方料理をなさるの?」と聞き返してきたので「入ったら叱られるのですけど時々行って料理の真似事をさせて貰っておもしろかったですわ」と言うと彼女も同じ様にさせて貰い其の代々の料理人が書いたレシピのノートが幾つもあって其れをよむのが楽しかったわ」「私はメモも取らせてもらえなかったので必死で頭で覚えて次の時に試してみたり・・・」と話がはずんでいる時にイドエルが近づいて来た。クレアは始めは気が付かなかったが急に緊張した雰囲気を感じて顔をあげるとイドエルがほほ笑みながら横に立っていて「そろそろ私の姫を返していただけますか?」と言ってクレアに向かって手を差し伸べてきました。イドエルは思い切り引っ張らないとクレアは椅子から上手に立てないだろうとおもっていたようですがマージのお母様から何度も椅子の座り方から立ち方まで練習させられたのですっと自分で立ってイドエルの差し出した手に優雅に手をのせると伯爵令嬢の方を軽く振り向くとご挨拶の頭を下げてにっこりと笑顔でえしゃくすると彼女も軽く会釈で返してきた。
イドエルはダンスの踊れる真ん中にクレアを連れ出すと踊りながらクレアの耳元で「お父上の酒量がだいぶ進んでいる様だ。そろそろ連れ出した方が良い」と言うのでクレアは軽く頷きました。やがてダンスが終わりクレアはゆっくりとあいさつをするとお父様の元へ急ぎました。お父様にとっても初めての事でしかも知った顔も無いので最初に座ったソファーに深く腰掛けて勧められるままにお酒を飲んでいたようです。
クレアは慌ててお父様を立たせようとしましたがクレアには重た過ぎた様で誰かに助けをもとめようと振り向いた時にマージのホテルから手伝いに駆り出されたホテルマンがクレアを何かとホローする様にと言われていてクレアの動向に気を付けて居たのですぐに駆け付けてくれて彼がお父様を立たせてふらつきながらも彼の持ってきた外套を受け取るとマージのホテルの最高級の馬車に乗ってホテルに無事に帰ってきました。
伯爵令嬢がクレアの事を「中の上ね」と言っていたとかで其れをホテルマンから聞いたマージのお母様は其れは合格と言う事で其の子達はとても厳しい評価をして笑いものにするのが趣味の様な人達でどこの世界にもそう言う質の悪い人達がいるのよと教えて下さいました。
とりあえず何とかクレアの「社交界デビュー」は無事に済んだようです。
其れから3か月後にイドエルから呼び出されたピェールお兄様は「貸しを返して欲しい」と言う形で縁談を持ち出されていました。流石に其れはとピェールお兄様は渋った様ですが其の条件がピェールお兄様の「兵役召喚の削除」と引き換えという事でお父様に其の事を言うとお父様は大賛成なされて話はどんどん進みました。
相手はイドエル家の身内にあたる方で爵位は子爵の家柄で結婚が他の人と既に決まっていてイドエルの家が結婚式の費用も総て持つという事で会場も料理の手配も済ませてウェディングドレスも試着も済んで隣り合わせに二人が立った時に花嫁が花婿よりドレスに合わせたヒールの分だけ背が高かった事が理由なのか相手の方から突然破談を言って来たそうです。
全部手配を済ませて招待場もイドエルの公爵家の分は出してしまった後なので今更中止もと言う事になりイドエルがだめもとでピェールに話を付けたと言う事らしいのです。
式まで一月しかない状態でしたがピェールお兄様の背の高さで候補に挙がった様で御父様はピェールお兄様が兵役が無くなってリヤド農場は安泰ともろ手を挙げて賛成しました。
相手の方もピェールお兄様の背の高さを知ると今流行りの髪の形が出来ると大喜びだった様です。
彼女は背が高いために髪の毛は出来るだけ低くして猫背にして何時も背を低く見せていてダンスも背筋を伸ばしてした事が無く靴もヒールを付いたのは履けないで更に結婚相手も見付らないでいました。
結婚式はイドエルの公爵家の用意した豪華な式場で呼ばれた客も此れまでにない此の国の上層部の人達で其れは其れは豪華な物になりました。
始めてみるピェールお兄様の結婚相手のフィリナ嬢は今流行りの髪の毛に豪華なティアラを付けてとても美しい人で背が高いだけで人前に出る事を避けて来て様な方でひっそりと目立たない様に生活して来たようですがピェールお兄様と結婚式のパーティでダンスを踊った時はピェールお兄様もフィリナ義姉様も背筋を伸ばしてのびのびと美しいステップでダンスを踊って二人ともとてもうれしそうでした。
其の頃やっとダルニがダルニのお父様に話したクレアが言っていた制縫工場の調査の事が議題に上がりました。ダルニは自分のやった思慮深い父親に話をすると言う行為が正しかったのか其れとも先に自分がある程度調べてから父に知らせるべきだったのかと最初は迷ってましたが自分の判断が間違ったのではと思い始めて居ました。
まずたかだか其の工場で働いていた友人の入った事を聞いただけで調査隊を出すと言う事に議会で反対意見が出て、其の前に其の事を議会にあげる事すら疑問視をする人もいてまだ調査の段階にも入ってないのです。
其れでも議会で一応調査隊を出してみると言う事に何とかなりました。ダルニの父親がそうしないとダルニが勝手に調査をし始めるのではとダルニ様子に心配をして少し強めに調査をする事を言ったのが何とか功を制した様でした。
更に之から調査隊の出す部署を決めて其れから人選をきめての話になります。
此の国は何でもこうなのです。会議はやっと開かれても次は其の手続きの会議、今度は人選の会議、もっと可笑しなのは会議の名前を決める会議とやらまで開かれてばかばかしくて腹正しくてダルニは自分が上級士官学校まで出て入った貴族議員役所の所員の仕事にうんざりしていました。
クレアの館ではフィリナが来てからの夕食はすっかり変わりました。
フィリナが食事中にピェールお兄様に話しかけてもお父様もピェールお兄様も注意をなさらなかったのでフィリナ義姉様とピェールお兄様の楽し気な話は弾みました。時々クレアも其れに加わってお父様も加わる事があってウィルお兄様だけが不快な態度を出してました。
フィリナの昔の様子を知っている人はフィリナのすっかり明るくなった変わり様に驚きました。
お父様の二人の結婚式で多くの上層貴族社会の人と知り合いになって喜んでいる様でした。