【お話】海底神殿へ続く道
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- 2021/11/26 12:15:40
ゆるやかに、海はうねり、
空に続く大気の世界では、荒れた波と吠える風が、猛威を振るっている。
海底にはしかし、穏やかな流れと、静寂がたゆたう。
朽ちた難破船から流れ着いた、きらびやかな宝物。
かつては、にぎやかな歌や、笑い声、きらめく灯に照らされて、
命と血潮と、愛と憎悪に彩られていただろうそれも、
今は波に洗われ、砂に埋もれて、静かに眠る。
神殿に向かう道を、歩むものは、魔女。
権威ある王でも、豪奢な女王でもない。
勇敢な王子でも、美しい姫君でもない。
ただの魔女。
嘆きも悲憤も乗り越えて、愛も憎悪も彼方に流れ去り、
傷も痛みも、波に洗われ、おだやかに丸くなった、
時の流れをただ眺める、
そんな境地にいたった、ただの魔女が、
神殿に向かう道を、ゆっくりと、
日々、歩み続けている。
失くしたものを惜しむように。
愛したものへの贖罪のように。
***
人魚姫の物語が好きでした。
ディズニーのじゃなく、アンデルセンの。原作のほう。
ほかに、フーケ―の「水妖記」に出てくるウンディーネ。
人ならぬものの純粋さゆえの悲劇は、たくさんありますが、
ある時、魔女の方にも目が行きました。
人魚姫に、人間になる薬を渡した魔女は、なぜそんなことをしたのか。
何を見て、何を考えてきたのだろう、と。
そんな薬はないから、あきらめて人魚のままでいろ、と
突っぱねることもできたのに、
人魚たちの立場なら、そう突っぱねることが正しかったはずなのに、
彼女は、代償を求め、覚悟を求めたうえで、薬を作った。
姉たちに、妹を助けるための短剣を渡して、アフターケアもしています。
魔女の過去に何があったのか、
今でも考えてしまいます。
***
お部屋に入ると、姿が消えてしまいますが、
白い道のあたりに移動すると、姿が出てきます。
いろいろ重ねたので、場所によっては姿が消える(^^;
サンゴ礁に彩られた白亜の回廊、綺麗ですね。
魔女は人の心の内を見透かすような賢者にも似た存在でありますが、どこか毒々しさも内包しており、そこがミステリアスで魅惑的ですね。