南の魔女クレア17
- カテゴリ:自作小説
- 2021/11/22 13:59:40
次の日クレアはお父様に呼ばれて事情を聴かれました。
クレアはしゃくりあげながらもダウニから聞いた話と此の2年間此のパーティに出て白いタキシードを着た青年にダンスに誘われる事をゆめみていてがんばったと話しました。
お父様とお母さまはとりあえずクレアが縫子になりたいとかデザイナーになりたいとか言い出さないのにほっとした様です。お父様は最悪ジルドの街に小さな店を持たせてエプロンだの買い物用の布のバックだの簡単な庶民向けのワンピースやスカートを売る店でも2~3年開かせて良い縁談が来ると嫁に出そうと覚悟はしていたようです。お母様もクレアが次に何を言い出すのかと卒業が近づくにつれて気を病んでいたそうですが何と其れが士官学校の卒業パーティで白いタキシードを着た青年が自分を見初めてダンスに誘ってきて羽が生えたように軽やかにダンスを踊るおとぎ話の本の挿絵の1ページの様な事が理由で2年間あれ程真剣に頑張っていた事に何とも複雑な気持ちでしたがクレアの此れからの事を話すためにお父様がお母様の所に行って二人で話し合いを始めた時にお父様は笑いがしばらく止まらなくて困ったそうです。
其の後にお母様の部屋にピェールお兄様とウィルお兄様が呼ばれて二人の友人の中でタキシードでダンスパーティに出れるものがいないかと打診されて二人ともいる事を認めると其の人達に士官学校の卒業パーティでクレアとダンスを踊る様に頼む様にときつく命令しました。
ピェールお兄様もウィルお兄様もお母様の部屋から出た時は余りに馬鹿げた申しでに呆れましたが二人にとって其れは何とかなる事でした。
実は誰かをダンスに誘って欲しいと頼まれる事はよくある事なのです。
更にピェールお兄様もウィルお兄様も家の都合で家の名誉でどうしても成績10位以内で卒業して上級士官学校に推薦枠で入学しなければならない生徒がいて彼らに頼まれて業と剣の試験で上手にばれない様に負けてやったり筆記試験もスペルを間違えてやったりとかウィルお兄様も回答欄を一つずつずらして回答して筆記試験の一つの上位を譲ったりしてあげて貸を作っている同級生が居たのです。
彼らに頼めば恐らく引き受けてくれる事ですが内容が余りにもお粗末で彼らに何と言って説明して妹のダンスを相手をして欲しいとしかも『壁の花席』に態々白いタキシードを来て其の席まで行く事はかなりの難題を頼む事になるので其れが二人がうんざりした理由でした。
其の陳腐な頼みをピェールが頼んだ公爵の子息のイドエルはピェールが説明すればするほど笑いながら喜んで引き受けてくれました。あの勝ち誇った顔を何時もしていて取り巻きの女を引き連れてパーティ会場に来ていたピェールが自分に頭を下げに来た事が楽しくてたまらない様でした。
別に彼の父親に頼んで自分をどこか良い所に就職を頼む必要も無いピェールは弱みを彼に見せる事が無かったのです。
其れが何と妹のしかもおとぎ話を本気にして2年間一般の庶民の学生と方を並べて戦い抜いて一位を取ってダンスパーティで王子様に見初められてダンスに誘われて踊る事が夢を実現させて欲しいと頼みに来ているのです。
「いまだにそんな夢を本気にして其れが叶わぬと解って泣き伏しただって!今時そんな子がいる事が信じられない。しかも結婚はお父様が決めた人と結婚するのが自分の運命だって本気にそう思っているのかい?」ピェールお兄様は顔に手を当ててうなづくより他になかったそうです。
其れでも公爵の子息のイドエルは白いタキシードを来て士官学校の卒業パーティに行ってクレアを最初のダンスの相手として踊ってくれる事になりました。
此れで「今までの借りはチャラだからね」と勿論念を押されました。彼への「貸し」がこんな事に使われるとはピェールお兄様はがっかりしたようです。
兎に角公爵の子息への「貸し」ですからもっと上手にしかも自分の為につかいたかったと言うのが本音でした。
ウィルお兄様も似たような事で伯爵の子息の友人に白いタキシードをきて最後のダンスに妹を誘ってくれるように頼んでくれました。
此れでクレアの2年間の頑張りの夢がかなうようになってクレアはテーラーさんが持ってきたパーティ用のドレスと其れに合わせてヒールの付いた靴をもって意気揚々と学校に帰って行きました。
クレアはさっそくボルアートが待っている本屋の裏に行って其のドレスを見せて自慢しました。
ボルアートは「で、其れを気て歩けるのかい?家で来てダンスを踊ってみた?」と表情を変えずに聞いてきました。ボルアートはパーティで何度も初めてロングドレスとヒールをある靴を履いてきてダンスどころでなく歩けないわ、座れないわ、座ったら一人で立てないわともたもたしている子を見て大抵は初めてのロングドレスを着てそうなるのを知っているのです。
ロングドレスのスカートを広げる為に針金が入ったパニエは短いスカートと違って長ければ長いほど其の重さに耐える為に丈夫に重く出来ているのです。
更に足元が見えない為に歩くのに不安定になりがちで其れを避けようと足元を見ようとして前裾が下がり其の状態で前に進むと前裾を踏んでつんのめって転んだり強引に座るとパニエの針金を変な形に変えてしまってスカートがいびつになったり座ったら良いが一人で立つことが出来ずに引っ張って立たせてあげなきゃならないと言った事はよくあるのです。
「とりあえず一度着て其の靴を履いて歩いてみろよ。」と言いました。
クレアは何を言っているのか解らないけどとりあえず着替えようとしました。ボルアートが慌てて上着を脱ぐとクレアを隠しました。
其処にダルニが「何をしてるんだ?」と二人の様子に驚いて声をかけてきたのでボルアートがクレアが初めてロングドレスを来て歩いてみる所だと説明するとダルニも上着を脱いでクレアを隠しながら家で練習をしてこなかったのか?とボルアートに聞いてボルアートがうなづくと「はぁ~っ、四日後だぞ。間に合わないだろう!」と怒った様に言ったのですがクレアはまだ其の意味が解りませんでした。
何とかドレスを来てボルアートに靴を履かせて貰って立っているのがせいいっぱいな自分に気が付きました。
もう足首がぐらぐらしています。歩くなんてまず無理と瞬時に此の状況をクレアは理解しました。
其れでも思い切って足を踏み出したとたんに前裾を踏んで二人がいなかったら前のめりに転んで大怪我をしてました。
とりあえず今日は帰って靴を履いて歩けるように練習するように言われてクレアは返されました。
次の日もボルアートとダルニの特訓が続きましたけどとても此のままだとダンスは無理そうです。
遂に意を決して日曜の朝早くクレアはトウニにあるマージに助けを求める為にマージがいるホテルに向かいました。
マージは結婚相手の奥さんのお父さんが経営しているホテルの一つを任せて貰って館に居た執事長のオルガさんに教えて貰った事をホテルの使用人に叩き込んでマージのホテルはあっという間に評判になり今は大きなホテルを任されて其処の支配人をしてました。
クレアは豪華なホテルのロビーにおどおどしながらもドレスの入ったカバンとパニエが入ったバックをもってカウンターに行って小さな声で「マージさんいますか?」と聞いて見ました。子供の時にどうにもならなくなるとマージさんに相談すると不思議に何とかなったのです。