南の魔女クレア14
- カテゴリ:自作小説
- 2021/11/17 01:31:05
モニークは其の話に直ぐ乗って来た。勿論ドレスは自前で用意すると言う。
クレアは其れを二人に伝えた。
「それと・・自慢するわけじゃないけど其の学校に通っていると言う子爵令嬢って私でトウニで一番と言われる洋品店の御令嬢は一緒に行くモニークだから。今後は言葉使いと態度に気を付ける事ね。」と二人を見ながら「可哀そうだから行ってあげる事にしたの。」と言った。しばらく二人は其の言葉と態度に何と言って良いか解らないような顔をしていたが意を決したようにボルアートが口を開いた。「とてもありがたい申し出に感謝するよ。因みに僕の家は領主の家で爵位は伯爵で彼の名はダルニと言って父親の貴族院の」と言った所でもう一人の青年がボルアートを止めた。「兎に角今度の僕たちの無茶な申し出を受けてくれた事を感謝している」と丁重に頭を下げた。「では何故君は此処で働いているんだい?爵位を持つ家の令嬢がこんな所と言っては何だが治安が完全に保証されているとは言えない所でしかも夜遅くに一人で帰る事を御家族は承知しているかい?」ともっともらしい質問をしてきた。
「僕たちが取った対応に君を卑下するような言葉があったかもしれないが君も誤解されるような行為を取っているとは思わないかい?子爵令嬢が此の場所で働いて夜一人で歩いて帰る事は問題行動に値すると思われて此の事が世間に知られるとご家族にも迷惑がかかると思われるが」と痛い所を付いて来た。
そうなのだ。爵位を持った家の婦女子には取るべき節度のある行動が常識として強いられる。
今こそ男爵、子爵、など所謂爵位を持った者が公共交通機関を利用する事は鉄道が出来た事と乗合馬車が昔より豪華な作りと警備兵が付く様になったのと汽車や乗合馬車を襲った犯罪者は本人は死刑になるのは勿論の事、親戚縁者までもが職を失うと言う事が広まって今は汽車と乗合馬車を利用するのが普通になって来た。
だが其れでも爵位を持った家の令嬢が其れなりの認められた所で経営者以外に働くと言う事はふるまいとしてよい事とは思われてないし、まして夜遅くまで働いて一人で歩いて帰る等許される行為ではないのだ。
何が起きても本人の軽率な行為とそう言う身内を出した事が家の恥になり其の家は恐らく貴族社会では卑下の対象となるだろう。
クレアも其れを知らない訳ではなかった。「どうしても助けてあげたいと思ったからよ。私は給料は貰ってないわ。人助けだと思っているから」と言って余りにも酷い万引きの現状を知らせてせっかくみんなの為に本を売っているのに儲けが殆どない事で此の本屋がなくなるよりみんなの為に私が店番をしてカウンターにいる間は店主のお爺さんが万引きをされない様に見張る事にしたと言った。
それにより少しは万引きが減って何とか採算が取れる様になって此の町の唯一の本屋が今も存在して本を欲しがっている此の町の人が助かっていると説明した。
ダウニは納得した様だが「其れにしても・・・君は大胆すぎて驚く事が多い」と言った。彼は其の後にクレアの其の大胆な行動の一つによって人生が変わるとは其の時は想像もしてなかった。
ボルアートがさらりと「所で君は勿論ダンスは踊れるよね」言った。
クレアは一瞬で顔を上げて黙ってボルアートを見てしばらく黙ってみつめてから「私・・・ダンスは踊れない・・・。」と言うと今度は耳まで真っ赤にして後ろを向いたまま動かなくなった。
そうなのだ。クレアはウィル兄さまにダンスの練習の相手をする様に言われて何度かダンスを習ったが何度やってもクレアはダンスが出来なかった。
ウィルお兄様は剣の練習相手もクレアにさせたが其れはある程度ウィルお兄様を満足させるだけに出来たがダンスだけはどうしてもできなかったのだ。
ボルアートとダルニは顔を見合わせてしてやったりとした顔をした。此れは良くあることなのだ。
実際は何と士官学校の2年からの授業でダンスと言う課目があり其れも採点課目に入っている為に真剣にダンスを練習するのだ。
そしてこうやってパーティに誘ったり誘われたりしても相手の女性の中にダンスを踊れない子が大勢いる事も知っていた。
普通は爵位を持っている子女が16歳の社交界デビューのパーティの時に踊るために其の時に遭わせてダンスの練習を始める子が多いのだ。
殆どの爵位を持っている家の子はトウニにある爵位を持った令嬢が通う学校はダンスの授業があるが其れ以外はダンスの授業もないし社交界デビュー前にダンスをする場に出る事は殆ど無いのが普通である。
だから此の士官学校の生徒はダンスを踊れない子が多い事を知っていたのだ。
思惑通りにクレアはダンスが踊れなかった。「いいよ、僕が教えてあげよう」とボルアートがにっこり笑って言った。
此れも自分が優位に立って自分をアピールするカードな事を士官学校の学生達に伝わっていた。
3人の様子を見ていた店主がクレアに本を入荷する為に馬車を付ける裏口の前の広い空き地を使わてくれる事になった。
そしてクレアは授業が終わってから夕食前の午後の時間にボルアートにダンスを習う事になった。
クレアは金曜日に家に帰るとダンスパーティに誘われた事をお母様に話した。次の日にテーラーさんがやってきてドレスの手配が始まった。
月曜日の授業が終わってクレアが本屋の裏に行くとボルアートとダルニが待っていた。
早速ダンスのレッスンが始まった。クレアはウィルお兄様としたダンスの練習を必死に思い出しながら「イチッ・ニイー・サンッ」と声を出して足を見ながら動かした。まず其れに二人は噴き出した。「わらっちゃ失礼だろう」とボルアートもこうなる事を予測していたようで思惑通りになって行くクレアを慰めるふりをした。
まず「声に出さないで頭の中で数えるんだ。誰もダンスをしながらイチ・ニ・サン等と言って踊る人などいないよ。ほらもう一度」とクレアを促した。クレアは口をきりと結ぶと頭の中で数を数えながら自分の足を見て動かし始めた。
そんなのが30分ぐらい続くと遂にダルニが「こんな酷いのは初めて見た。赤ちゃんのよちよちあるきじゃないか。うちの犬の方がもっと上手に二足歩行が出来るぞ。」と言うと腹を抱えて笑い出した。
クレアの動きが止まった。クレアの形相がみるみる変わった。「???」とボルアートが不思議そうにクレアを見た時にはクレアは本屋の裏口にドスドスと入って行って何かをもって戻って来た。
「犬以下何て聞きづてならないわ。決闘よ!さあ、剣と盾を持ちなさい。」と木刀と樽の蓋を盾にした子供用の初期の剣の練習用の道具を出してきた。
クレアは其の一組をダルニの前に放り投げると自分はこん棒と盾を持つと「さあ、どっからでもかかってきなさい。」と言った。
「女性に対して打ち込めないよ」とダルニが言うとクレアは「その腕を見せて貰いましょう。」
仕方なしにダルニはこん棒をやれやれと言う態度で拾って前にかまえるやいなやクレアの一撃が入った。
「さあ、盾を構えなさい。すぐに攻撃が始まるわよ。貴方がどれだけ私の攻撃を防ぎきれるかを見てみようじゃない。其の女に打ち込めないと言う紳士的な言葉の化けの皮汚はがしてやるわ。」と言うと盾を構えてと同時にクレアの三撃目が入った。
「ダンスだけは出来るけど肝心の剣が其の程度だと言う事ね。」と唖然としている二人にクレアは言った。