南の魔女クレア1
- カテゴリ:自作小説
- 2021/10/21 00:17:32
アリシアが木の枝から次の木の枝を伝って修道院と擁護園の間の塀にたどり着いて其の塀の上を歩いて養護園側に降りて窓から養護園の中に入るのを其の初老の夫婦は見ていました。
「あの子が良いわ。あんなに元気で活発な子は見た事が無いですもの」と其の品の良い婦人は夫の方を見て言いました。
アリシアがその後に園長先生に呼ばれて園長室につれて行かれると其れまで見た事のない美しいドレスを着た女の人が優しそうな目で少し微笑みながらアリシアに駆け寄って抱きしめました。
「私は此の子を今、とても好きなったわ。こんなにキラキラとして利発そうな目をした子にもう出会えそうにないと思うの」
養護園の園長は修道女に連れて来られたアリシアの短く切られた髪の毛を触りながら「確かご希望は男の子だとお聞きしておりましたが女の子で良いのでしたら此の子は利発で快活で健康で申し分が無いのですが・・・。」と夫妻の顔を確かめる様に見ながら言いました。
「でも、此の子の頭はこんなに短く刈られて・・・。まるで天使の様ですわ。」と怪訝そうに夫人は言いながらアリシアに近寄って美しいほほえみを惜しみなくアリシアに降り注いだ。其れをまるで全身で受け止めるかの様にアリシアもキラキラした目で見つめ返しました。
アリシアを連れて来た修道女が「実は昨日此の子は髪の毛を松脂だらけにしまして松脂を取るために昨日髪の毛を切ったのです。髪の毛はひと月も経てばもとに戻ると思います。」
初老の紳士が「残念ながら私たちが希望しているのはやはり男の子を養子に迎って伺いました。」と言ったために園長がアリシアを連れて来た修道女に合図を送ると修道女はアリシアを連れて部屋から出て行きました。
其の後に何が起きたのかは解らないが結局ウィルと言うアリシアより三つ上の少年とアリシアは夫婦の大きな館へ向かう馬車に乗っていた。
初めての馬車と馬車の外の景色を最初は目を輝かせて物珍しそうにキラキラした目で見ていたが馬車が屋敷に付いた頃にはアリシアはぐっすりと眠っていました。
後で解ったのだが最初は男の一人だけ養子に迎えるつもりだったが夫人がどうしてもアリシアも引き取りたいと言って結局二人引き取る事になったそうです。
付く早々アリシアはメイド二人がかりでお風呂に入れられてとりあえずの洋服に着替えさせられました。
取り合えずにしては立派な男の用のドレスの様なフリルの付いたブラウスに半ズボンでピエールお兄様の小さい頃のお洋服とメイドの一人が言いました。
遅い夕食の途中でアリシアはテーブルに頭を乗せてパンを握ったまま眠ってしまったようだ。
ふかふかのベットで目がさめると大変な世界がアリシアに待っていた。
アリシアの為に沢山の衣類が用意されていてメイドが服を着せてくれました。
美しい初老の夫人の部屋につれて行かれると其の夫人は此れから彼女を「お母様」と呼ぶように言われました。
そしてアリシアに「クレア」と言う新しい名前を付けられました。
アリシアは「お母様・・・。クレア・・。」と言うと彼女の腕の中に抱かれました。
(お母様はとても良い匂いがする)とクレアは思いました。
お母様がテーラーさんと呼んでいる男の人がクレアの手の長さや首回り、どうまわりと色々な所のサイズを測って行きました。
1週間もたたないうちに数着の可愛い服が届けられた。
クレアは其の内の一着をメイドが選んで着替えさせられた。
クレアはメイドに連れられてその服を来てお母様の部屋につれて行かれました。
「まあ、何て可愛いのでしょう!」お母様の明るい声が響きました。
お母様付きのメイドも「とても可愛いらしゅうございます」と笑顔で言いました。
其の場にいた全員がお母様の様子を見て笑顔になりました。
お母様はクレアをだきよせると短い髪の毛をなでながら「大丈夫よ。一月もすると伸びてもとの女のこの頭にもどるは、貴方は何も心配する事は無いのよ」と言うとまたクレアを抱きしめた。
クレアにとって髪の毛を短く切られる事は何度も松の木に登って松脂だらけになって切られて居たので何とも思っていなかったが、お母様にとっては大変な事らしかったのでした。
可愛い服を着せられてお気に入りのおもちゃをもって遊んでいると一緒に引き取られたウィルにばったり会いました。 ウィルはクレアをからかいました。 ウィルを追いかけて階段を駆け上り駆け戻りまた階段を上がって行ったウィルを近道で捕まえようと柱をよじ登って手すりに飛び移った所で足が滑りました。
両手で手すりにつかまりながら片足は何とか手すりの欄干にかける事が出来たが後はどうにも動けません。
其の騒動を聞きつけてメイド達や執事、お母様もやって来た。
お母様の「急いでクレアを助けて!」と言う声で執事が脚立をもってクレアを下ろそうとするが何とも心もとない。
そうこうしている内に一人の青年が執事に降りる様に言って自分が脚立に乗ってクレアを抱き上げると脚立を下りてお母様にクレアを渡しました。
お母様にきつく抱き寄せながら二度とこんな事はしないと約束させられました。
メイドから自分を二階の欄干から降ろしてくれたのはピェールお兄様だと聞かされました。
クレアは一生懸命おぼえました。
自分には今は3人のお兄様が居る事。
自分も含めて4人とも養子だという事。
一番最初のピェールお兄様は体がとても弱かった事。
其の為に次のアギルお兄様が引き取られてきた事。
アギルお兄様はとても勤勉で家庭教師が驚くほど頭がよかった事。
リアド家はジドリアル国にある事。
ジドリアル国の隣の国のキリアマリ国は医学が此の国より発展していて体の弱かったピェールお兄様の病気がキリアマリ国から呼び寄せた医者と薬のおかげで士官学校に通えるほど健康になった事。
アギルお兄様が士官学校に通う年齢になった時にアギルお兄様がキリアマリ国の医学校に留学したいとお父様に申し出た事。
お父様はアギルお兄様をキリアマリ国の医学校に行かせる事にした事などです。
其の為にアギルお兄様の代わりになるピェールお兄様が万が一の時やピェールお兄様の助けになるもう一人の息子が必要と考えてウィルお兄様を養子に迎えた事をクレア付きのメイドのセリスから教えて貰いました。
お父様は朝食を済ませると自分の農場を始め小作人の農場の管理、そして市場に出かけたりとお忙しくて夕食までお帰りにならない事が多い事。
其の為にお母様は殆ど一人で此の館でひっそりと暮らしていたけどクレアが来てからお母さまがとても明るくなったことなどをクレア付きのメイドとクレア付きの家庭教師から教えて貰いました。
クレアは朝食が済むとお母様の部屋に遊びに行ってお母様付きのメイドとクレア付きのメイドに髪をすいてもらったり本を読んでもらったりお菓子を食べたりして家庭教師が呼びに来るまでお母様の傍でお母様について庭をさんぽしたりとお母様と過ごしました。
其れはクレアの生涯の中で一番幸せな時でした。