Nicotto Town


ジュンチャン


26年の恋  Bertie


例のBertieの著書の中の話です。
 幼稚園の初恋時代の頃の顔も出てる。

 
 
 その彼の初恋の物語の始まりだよ。
 
 僕は中学卒業と同時に一人暮らしを始めた。

 一人暮らしで、高校生とくれば、いろんな人が面白がってやってくる。
 その中でKちゃんという幼なじみの女の子がいた。

 彼女のお母さんといっしょに三人で幼稚園に行ったのを今でも覚えている。
 「ねえ、B・・・ちゃん」とKちゃんのお母さんは言った。   「Kちゃんのこと、好き?」
 僕はものすごく戸惑ったけれど、勇気を出して、
 「うん」と言った。

 そうしたら、Kちゃんのお母さんは、今度はKちゃんのほうを見て、
 「Kちゃんはぁ、Bちゃんのこと、好き?」
と聞いた。Kちゃんは、
 「うん!」
と元気に言った。

 わあい、夢みたい! と頭の上に花が咲いた気分だった。この時の喜びは今から25年以上も前のことなのにはっきり覚えている。
 「やったあ!両思いだ!」って僕は感動した。
 

 でも、小学校、中学校時代では、同じ学校だったにもかかわらず、我々は会話をしたことは、ほとんどなかった。
 特に中学のときのKちゃんは、僕を軽蔑のまなざしで見ていた。どうしてかというと、そのあたりの僕ときたら、女子生徒たちのスカートをめくったり、ブラジャーのひもを引っ張ったりして、はしゃいでばっかりだったからだ。

 K
ちゃんは潔癖症だから、まあ仕方がないだろう、と僕は受け止めた。

 ところが、高校生になって一人暮らしをしていた僕のもとへ突然Kちゃんがやってきた。たった一人で、だ。

 Kちゃんは無理やり僕の部屋に入ってきた。
 僕は一生懸命、勉強の話をぶちまけた。模擬試験のこととか、どれだけ自分は数学が出来るか、とか、自分の高校ではどんな勉強をしているか、とか。

 K
ちゃんは、僕の部屋で夜を明かした。

 でも僕はKちゃんに指一本触れなかった。ひどいオクテだった。きっと、Kちゃんは心を決めていたのだと思う。でも、僕にしてみれば、そんなことするなんて、絶対にありえないことだった。だって僕たちは、まだ16歳なのだ。

 次の日の早朝にKちゃんは帰った。

 それからすぐに、Kちゃんから手紙が来た。住所が書いてなかったから、僕は返事を出さなかった。

 一年後ぐらいに、Kちゃんは再び僕のそばに姿を現した。
 けれど、そのときの僕は不良みたいになって、人を寄せ付けないようにしていた。だから、Kちゃんは、そんな僕を怖がって話しかけてこなかった。

 これがKちゃんに会った最後だ。


 数ヶ月前、32歳の僕は、
 「そう言えば、Kって今、どうしてんだろう?」
と、いとこに言ってみた。いとこは簡単に答えた。

 「ああ。Kちゃんは結婚してるよ。子供もいるんだっけなあ」
 僕はもうそれ以上、Kちゃんのことには触れなかった。

 『耳をすませば』という映画があるけれど、あれを観ると、昔のKちゃんと僕の感情を思い出すことがある。なぜだかは、わからない。

 Kちゃんの子供って何歳ぐらいなんだろう、とか、旦那はどんな人なんだろう、あのお嬢様育ちのKちゃんが家事や育児に追われる生活を本当にしているのだろうか。

 こんなことを、ちょっと空想してみた。




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