【第13話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2021/09/19 21:55:41
林間合宿2日目は、実行委員が頑張って企画したダンスパーティーだ。
まぁ健全と言えば健全なんだろうけれど。
もちろん、クラスの男子連中は、虎視眈々と狙ったターゲットの女子をパートナーに誘うことだけを考えてる。
そして女子は、それ以上に真剣に、お望みのお相手から誘われるのを待っている。
「ふ…不健全だろっ! ワシだって男と踊ったことなんてここ何年もないんだぞっ!」
イベントを知らされた槇原先生は、目の前のテーブルを叩いて立ち上がって。
(残念過ぎるなぁ…先生っ、て思ったあなたは正解です)
「先生の個人的な事情なんて知りませんよ…てか毎年の恒例行事なんであしからずです」
にっこり微笑んだ中宮由紀菜は槇原先生を見上げる。
「う…ぐっ… だいたいだなぁ!お前のその服装はなんなんだ?それが健全な高校生の私服かっ!」
確かにそうだなと、由紀菜の隣に座っていた実行委員の辰衛健人は納得したように頷く。膝上というより股下といったほうがぴったりくるようなミニスカに、ざっくり胸元があいたカットソー姿は、さっきから気になっていたところだ。
「私服検査するんですか?自由な校風の我が学園でそんな古臭いことを?」
由紀菜は槇原先生の次の手を封じるようにはっきり言いきった。
「うるさいっ!仕方ないからダンスパーティーは認めてやる。だがな…」
槇原先生は、由紀菜をしっかりと指さして。
「なにか不祥事が起こったら、学年主任にはっきり報告するからなっ!わきまえてやるんだぞ!」
「てな感じで、あの難関の槇原先生を説得したんだよ、由紀菜ってさ」
健人が本棟の作業場に戻り、昼間の学校課題である木工細工に取り掛かっていた拓海の隣に座って、ふぅ、と息吐きながら報告する。
「あはは。そうっかー ふわふわ系のゆるい女子って印象があったけど、案外凄いんだな…由紀菜は…」
拓海は最後の工程である、木工細工へはんだごてでの焼き付けを終えて額の汗を拭う。
「しかもさー あんなミニ姿でうろうろされたら気が散るっていうかさ…」
「あーそれ… でもな、由紀菜に目が行ってる男子って、おそらく健人だけだと思うぞ」
「そうなのか?」
拓海は笑って
「だってな…男子どもは、お目当ての女子をどう誘うかってことだけ頭の中にあるようだからなあ」
「ふーん…なるほど…」
周囲を見渡した健人は、手にしたビデオカメラを床に置いて、拓海を振り返ると
「でさ…お前は誰誘うんだ?」
無邪気な質問だっただろう。
健人は拓海の内心には全く気づいていない様子だ。
だが、核心突かれた拓海は一瞬固まり、言葉が出ない。
「一平は…そうだなあ、ここにきて椎名狙いって感じがするしさ…」
全く空気読まずに健人が観察したままの言葉を吐きだす。
「あ、そうだな…昨日の肝だめしもペアだったからなあ」
「涼は… 誰だろう?天塚か?」
勿論何気なく言ったんだろう。健人は。
でもその言葉が拓海の心に奥深く刺さっていたのは事実で。
「あ、そ そうだな…」
「何だよ拓海、お前はそう思わないのか?」
不思議そうに相手を見やる健人。その時だった、中宮由紀菜が本棟の工作室に駆け込んできて、右手を高らかに突き上げて叫んだ。
「さ、今から今夜のダンスパーティーのペア決めしますっ!」
(続く
次に期待するね~♪
ダンスパーティーってフォークダンス・・・?