Nicotto Town


人に優しく


さようなら


小さな王子さまは、ちょっぴりさびしい気分になりながら、はえてきたばかりのバオバブの芽も抜いた。

ここへはもう、二度と戻ってくるつもりはなかった。

でもこの朝は、こうしたいつもの仕事が、いやに心にしみたのだ。

そうして、花に最後の水をやり、ガラスのおおいをかけてやろうとしたときには、思わず泣きたくなっているのに気がついた。

「さようなら」王子さまは花に言った。

花は答えなかった。

「さようなら」もう一度言った。

花は咳をした。

でも風邪のせいではなかった。

「わたし、ばかだった」とうとう花が言った。

「ごめんなさい。幸せになってね」





ー 『星の王子さま』 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ ー




 




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