さようなら
- カテゴリ:恋愛
- 2021/09/04 11:26:34
小さな王子さまは、ちょっぴりさびしい気分になりながら、はえてきたばかりのバオバブの芽も抜いた。
ここへはもう、二度と戻ってくるつもりはなかった。
でもこの朝は、こうしたいつもの仕事が、いやに心にしみたのだ。
そうして、花に最後の水をやり、ガラスのおおいをかけてやろうとしたときには、思わず泣きたくなっているのに気がついた。
「さようなら」王子さまは花に言った。
花は答えなかった。
「さようなら」もう一度言った。
花は咳をした。
でも風邪のせいではなかった。
「わたし、ばかだった」とうとう花が言った。
「ごめんなさい。幸せになってね」
ー 『星の王子さま』 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ ー