【第9話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2021/09/03 22:26:04
寝床を敷き終わったコテージ。
もちろん男女別に、屋内は仕切りがある。温泉地なので別棟の大浴場で順番に生徒たちは入浴を済ませてはいる。
拓海は最後に大浴場で入浴を済ませ、一緒にいた一平と肩を並べて宛がわれたコテージに入った。
「あ、拓海っ お風呂終わったの?」
声を掛けてきたのは、洗い髪をバスタオルでごしごし拭っている結衣だ。
「あぁ 最後だからけっこーお湯は濁ってたけどな…」
「なわけねーだろ?原潜かけ流しだぜ?ここ」
突っ込むのは一平。男どもは寝るときのジャージに着替えた姿だったが、女子は私服で(それがまたきらびやかなのだよな)ダイニングに座っていて。
奥に天塚楓と並んで、ペットのコーラをひと口飲んだのは沙也加だ。
並んだ男子2人のうち、片方を無視するように笑ってみせては、
「一平さあ… ここのお風呂ってすごくいい温泉だよね?」
「ん… ああ そうだな」
隣にいる拓海の方に視線をちらっと遣った一平は、バスタオルを肩にかけたまま答えた。
なんだ?俺を無視…?
拓海がそう感じたことは、沙也加にも分かった筈で。
「拓海っ! まだこんな時間だし、消灯まではまだまだあるからこっち来ない?」
笑顔で手招きする結衣。
ん… なんだろう。
女子は私服だからいいんだけど、季節にはちと早いような、ハーフパンツからスラっと伸びた脚を見せつけるように、結衣は拓海を誘う。
「あ…うん… おっけ」
拓海は沙也加のことを気にしつつ、誘われるままに結衣の隣に座る。
奥にいる楓は、きょろきょろしながら髪をバスタオルで拭って乾かしている。
誰か待ってるのかな…そういう思いが、拓海の胸を過ぎ去っていった。
「ん?あ、そうだ… 西藤クン?」
不意に楓から声を掛けられた拓海は、一瞬直立してしまうような姿勢になり
「ん?なんだよ天塚…?」
初めてかもしれない、楓から声かけられたのは。
緊張するのも無理はないかもしれない。
でも、次の瞬間だった。
「由宮クン見なかった…?」
おいおい
まてよ おいW そっちかよっ!!
そんな表情になったのに気づいたのは、多分沙也加と一平だけだったかもしれない。
「天塚さあ… なんだか由宮に興味あんの?」
一平は片目瞑って尋ねてみた。
一瞬視線が固まった楓は、次の瞬間勢いよく首を振って軽く一平を睨む。
「そうゆうわけじゃないよ~~ ってか、富岳クン、そうゆうこと言ってくる人だったんだ?」
「あはは 悪かったゴメンな。由宮なら… ほら、あそこにいるじゃん」
楓から死角になっていた壁際に、座って文庫本を読んでいる涼の方に顎をしゃくって、楓の剣幕を軽くやり過ごすと、ちょっと考えて立ち上がり、楓の隣に歩いていって
「な、なに?」
「そんなに反応すると… マジ何かあるかと思われちゃうぜ?」
あーっという表情を浮かべた楓をよそに、一平は拓海の隣に座った。
「どう?」
「どうって…何がだよ」
拓海の隣にいて、スマホを弄っている結衣に聞こえないような会話だ。
「ちょっと…かき混ぜてみたんだけど…これで新しい展開になるかなあってさ」
「一平…お前けっこー…」
「ん?なんだ?」
「意地悪い奴だったんだな」
「まあ否定はしねーよ」
拓海は楓のほうを、さりげなく見ている。
そして楓は、由宮涼の方を、何度も見ている。
「そういやーシネマ部の辰衛って何してんだろう?」
一平が部屋を見渡し、辰衛がいないのに気付いて。
「ああ、辰衛クンなら、本棟の小会議室だよ。あそこで動画編集するんだって」
結衣が拓海の隣からひょい、と顔を上げてそう答えた。
「そうね…昼間のマダムの動画とか編集してるのかもね」
その会話に乗っかかるように沙也加が答える。
沙也加が見つめているのは拓海だったけど、彼は沙也加の声に全く反応しない。
『もう… なんなのよっ!いつまで拗ねてるんだよ!』
何となく場の雰囲気が静まった。
すると、いきなりドアが開き、大会議室で班長ミーティング(いちおう中宮が班長だったのをみんな忘れていたが)をやっていた中宮由紀菜が飛び込んできた。
「ねぇねぇ、今から『きもだめし』しないっ?」
「きもだめし…?」
楓が一瞬、ぽかん、として、その後同じ言葉を反芻した。
「そうだよ天塚さん。男女ペアでさ~~ うっふっふっふ!」
「男女ペアで肝試し…?」
沙也加もそうオウム返しに呟いた。
(続く
経験者のお話は参考になるし、こんな苦しい思いしてるのは自分だけじゃないんだって勇気づけられます。
母はまだ78歳で自分の認知症が受け入れられず、怒ってばかりです。
実の母親に泥棒扱いされ、罵声を浴びせられ、とても辛いです。
でも琥珀の少ないニコタの友人の中でも、こんなにたくさんのひとが親の認知症で辛い思いして乗り越えてきたんだって勇気が出ました。
私たち親子も、きっといつか良い方向に進んでいけますよね?
もう少し頑張ってみます。ほんとにありがとう!
先生が、怒り爆発するよ><
でも、青春時代は、若者たちのもの。誰が何と言おうが、進むのよね~~~(経験談)(ΦωΦ)フフフ…
次回は先生が「何やってんだ~!」って出てくるかな?
お仕事頑張って、続き楽しみにしてるね~♪