Nicotto Town



33冊目、読了。

「ケーキの切れない非行少年たち」  宮口  幸治 著


2020年ベストセラー第1位の本らしい。ネットの友人から紹介されていたものであるが、ようやく読む機会を得た。

題名の「ケーキを切れない・・・」とあるのは、非行少年に限らず一般人でもたくさんいる気がする。以前某TV番組で3等分や7等分に切りなさいという問題で、大の大人ができなかったのを見たことがある。その人たちは見た目は普通の大人である。

著者は、少年院勤務の精神科医である。誰しもが想像する少年院に入っているからきっと凶暴な子供たちだろうなと。以前読んだ「あふれでたのはやさしさだった」の寮美千子さんも確か同じような印象を持っていた。しかし、どうしてこんな子がと思えるような人懐っこい子もいて、違いにびっくりしながらも強いショックも受けたという。まず、①簡単な足し算や引き算ができない。②漢字が読めない。③簡単な図形が写せない。④短い文章が復唱できない。義務教育を終えてきてもこれらができない子がたくさんいたそうだ。勉強嫌いになっている。

今は何らかの発達障害や、知的障害などいろいろな名前がついて周知されているが、実際それらは分かりづらい。少年院に連れてこられた子らは、問題があっても障害に気づかれず非行に走ってしまう。学校では、サインを出しても教師が気が付かず支援されずに「手間のかかる子だ」で片づけられてしまう。
実際そういう子らが罪を犯して少年院に入れば、司法と精神医学の双方から検証される。「なぜやったか?」「どのくらい責任が取れるか?」大人の犯罪でも新聞で読むと目にする。その後の「どうすれば防げるのか?」という実践的な支援がない。同じようなリスクを持った少年を守るための支援策がほぼない。

これを打開すべく、著者は少年たちを支援するプログラムを考え、人間を変えていく。変わろうとする時期は必ずあるものでそれを見極め逃さない。①悪い事をしてしまう自分に気づく、自己への気づき、②適切な自己評価。もともと自己評価が低いので自己洞察、自己内省ができるよう他人から見られているという意識を持たせる。押し付けでなく自ら心の扉を開くように。グループワークなども仲間に見られる意識から、効果は高い。人に教えたい、認めてもらいたい、頼りにされたいと強い気持ちが出てくるようになることが自己評価の向上につながるという。自分もそのようになればかなり自信になると思う。

ただ、上から押し付ける教育では直るものも治らなくなってしまう。少年院に入る前から、それら子供たちのサインに気づき、支援してあげられる世の中になっていなくてはならないと思う。精神的な問題では、人間対人間の対応はすごく難しいと思う。ましてや大人対子供になるとつい大人の特権をかざしそうで怖い。著者も紹介しているが、学習プログラムはいろいろあり、一般に紛れてしまうような軽度の知的障害を克服できる可能性はゼロではないことを知ったのは心強い。




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