【第4話】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2021/08/14 15:25:29
「でもさあ… 富岳ってなんであの時点まで、班分け選手権の残存部隊にいたんだ?」
「え?なんでさ…?ああ、俺のことは一平って呼んでくれよ」
明日からの林間合宿、2食分の食材を仕入れるため、放課後に暇を持て余している拓海、富岳一平、そして宝生結衣の3人が学校近くのスーパーでメモを片手に買い物をしている最中。拓海が一平に話しかけた。
「いいのか?じゃあ俺のことも拓海って呼んでもらって大丈夫だぞ」
「あ…じゃあ私も結衣って呼んでくださいねっ」
にっこり笑った宝生結衣が会話に絡んできた。なんとなく頷く男2人。
けっこー結衣って可愛いじゃねーかって妄想に一瞬落ち込んだ拓海は慌てて頭を振った。不思議そうに見る一平と結衣の視線がやや痛い。
精肉コーナーで、初日のメニューのカレー用肉を手にしながら
「だってさ、一平って女子人気めっちゃあるじゃねーか。特に委員長グループあたりが、やいやい声かけてたろ?なんでそっちに入らなかった?」
そう言う拓海に、一平は頭を掻きながら
「いや…別にいただろ?ギャル軍団グループさ… そっちからも声かけられて…どっちって選べないじゃん。だからどうしよっかって思ってたとこに、槇原先生がしゃしゃって出てきてな。拓海グループに推薦されたって感じだよ」
拓海は目を丸くして
「そうなのか?じゃあ意外に槇原先生が助けてくれた的な?」
「そうだな。でないとどっちかに入らなきゃいけなかったし、そしたら女子同士で余計なもめごとが起こってもめんどいし」
「一平ってけっこー、自分アゲなキャラだね」
「あはは」
「あの…こんなに沢山買ったけど、明日までどうやって保管しておくの?」
結衣がカートの上に山積みになった食材を見て目を丸くしつつ言った。
カートを押しながら一平が笑って、
「あー うちの冷蔵庫、1つ空きがあるからそこに入れとくよ」
「めっちゃ都合のいい展開だね…一平クンって女子受けするだけじゃなく、そうゆーとこもソツがないんだ」
「待て待て結衣… そんな目で俺のこと見てたのかい?」
2人の会話に、思わずぷっと吹きだす拓海。ようやく暮れてきた春の夕日は、遠い山の合間にその姿を消し去ろうとしていた。
迎えに来た一平のお母さんの運転するワゴン車に荷物を押し込んだ拓海と結衣。一平はそのまま車で帰宅って感じだった。
「俺はこのまま送ってもらうけど、君たち明日遅れるなよ!朝8時集合だからなっ!」
「ういーっす!」
一平が乗ったワゴン車が遠ざかっていく。何となく、拓海と結衣はそれを見送って、残照がわずかに残った駅までの道を並んで歩いていた。
「ねぇ、拓海クン?」
「なに?」
「一平クンってかっこいいよね。ギター得意だって話だし、班分けの時の話だってさ… ほんと女子に大人気なのもわかるわー…」
拓海は普段よりゆっくりめに、調節しながら結衣の歩調に合わせて歩く。
彼女のサラサラでキレイなストレートの黒髪が、一瞬の風に煽られて広がるように舞う。
「まぁそうだよな。ヤツはきっと生まれた時から、モテ系だったんだろうな~ 羨ましい限りさ」
笑っては冗談っぽく、結衣の方を振り向く。
その時だった。
後ろから黒塗りのでかいワゴン車が、かなりのスピードで2人の方に突っ込んできた。危ない感じで、でも結衣からは死角だったため、拓海だけに見えた。
運転席にはチャラい金髪の若い男。しかも携帯で誰かと電話して前を見ていない。
運転席にはチャラい金髪の若い男。しかも携帯で誰かと電話して前を見ていない。
このまま突っ込まれたら、結衣に直撃してしまう。
そう直感した拓海は、彼女の手を掴んで
「危ないっ!」
と、自分の方に引き寄せた。
結衣の顔が、至近距離、めっちゃ近くまで。そして2人は道路端に倒れ込んでしまった。
「きゃっ!」
短い悲鳴。そして車の爆音。
一瞬の出来事だった。僅かの差でワゴン車は通り過ぎていって、庇うように道路に倒れた拓海は、結衣の身体を抱いたまま車を見送る。
「んっ 大丈夫か…?」
「だ…大丈夫だよ… 拓海クンは?」
「ああ へーきさ… ちょっと擦りむいただけ…イテテ」
道路に倒れ込んだまま、2人は動けなかった。
夕闇が濃く、そしてゆっくりとした時間が流れていく。でもそれは本当は瞬く間の出来事だったことだとは気が付かない。
「ありがとね拓海クン、助かったよほんと…」
「いやいやふつーでしょ… でもほんと何もなくてよかったよなあ」
駅の明りで見れば、拓海の左手は擦り傷でちょっとだけ血が滲んでいる。
「わあっ 出血してるじゃない!」
慌てた結衣が、ポケットからハンカチを取り出して怪我した部分に当てて
「ほんとごめんっ!助けてくれてありがとっ!」
拓海はハンカチを擦り傷に押し当てて、ちょっと笑って
「洗って返すね これ…」
結衣はふるふると首を振った。買い物の時のふんわりした雰囲気から一変した真剣な表情になり
「いいからっ!返さなくていいから、ちゃんと無事に帰ってね!」
「おおげさだよー…」
何となく見つめ合うようなスタンス。ちょっと慌てた様子の拓海は、彼女を安心させるように微笑んで、
「じゃあ明日ねっ!」
照れ隠しのように手を振って、反対側のホームに駆け出して行った。
(続く
拓海君、結衣ちゃんといい感じ?
私の拙い小説にお付き合いくださり、ありがとうございます!
今回の小説は、今までよりも長くなりそうな予感がしますので(確信犯w)ゆっくりお付き合いいただければ有難いです。
様々なキャラを登場させるとゆー、未経験な分野へのチャレンジですので、暖かい目で見守ってください!
次回が楽しみ~♪
しかし、林間学校とか懐かしいです。
今ならもっと楽しめたのに~~!
自前のグッズを自慢したり、
カッコよく火を点けて得意気になりたいw
これからどんな展開なってくのかな?
結衣ちゃんの事好きになるのかな?
5話も楽しみにしてます(◍•ᴗ•◍)