最後の駅
- カテゴリ:恋愛
- 2021/07/24 18:48:59
ピアノとバイオリンの音にあわせ、テレザは頭をトマーシュの肩にのせ、ダンスのステップを踏んでいた。
霧の中へと二人を運んでいった飛行機の中に二人がいたとき、テレザはこのように頭をもたれかけていた。
今、同じように奇妙な幸福を味わい、あの時と同じ奇妙な悲しみを味わった。
その悲しみは、われわれが最後の駅にいることを意味した。
その幸福はわれわれが一緒にいることを意味した。
悲しみは形態であり、幸福は内容であった。
幸福が悲しみの空間をも満たした。
ー 『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ ー