【第13話】黄昏のソロキャン
- カテゴリ：自作小説
- 2021/07/12 15:05:44
今回も、神田さん視点でのお話です。
あたしは不意に抱き竦められて、身動きがとれなくなっちゃった。しかもなんでか、声まで震えてる。
でもしっかり、目だけは開いてたんだ。
焚き火台の中に、燃え残りの炭がうっすらと赤く光ってて、それだけが視界に映ってた。
「神田さん、……だ」
佐々木さんが耳元で何か囁いたんだけど聞こえない。胸の鼓動がマックスになってきてる。
「…へ？さ、ささきさん…？なんですかっ…？」
あたしの声は、情けないくらいひっくり返ってしまってる。
すると佐々木さんは、あたしを抱きしめたまま、今度はもうちょっと大きな声で、
「神田さん… 好きだ…」
雨が激しくなってきたからだと思うんだけど、いつの間にか焚き火台の前を離れ、車の中に移動していた。(この辺記憶がないんだよね…）
ずっと佐々木さんは、あたしを抱き竦め続けてる。
なんだかぼーっとしてきちゃった。なんだろ…スキンシップに弱いのかなって心の隅っこで考えたりしてた。
「バイトでさ…」
「は、はいっ…？」
「神田さんのテキパキした仕事ぶりとか、パートさんに配慮して頑張ってるとことか… 休憩中にぼんやりと外を眺めてる姿とか、俺ずっと見てたんだよ」
佐々木さんにそんなに見られていたなんて全然気づかなかった。
でも佐々木さんってカッコよくて、よくバイト先のコンビニにも、同じ大学の女の子たちが買い物に来てたことはよく知ってるんだよ？
本当はね、佐々木さんの手は身動きできないくらい強くあたしを抱きしめてたって感じでもない。
離れようとすればできた筈。
でもね…できなかった…。
その時、車の外が真昼のように明るくなるくらいの雷光が走ったの。
あたしはびっくりして窓の外を見たんだ。
外の景色もはっきり見えた…
もっとびっくりした。
なんで？
なんで天塚クンが、沙也加さんとそこに立ってるの？
その明るさは一瞬でまた闇に変わり、あたしは一瞬固まっちゃった。
『天塚クンが来てくれたんだ。こんな豪雨になったから、心配になって迎えに来てくれたんだっ！』
でも…
佐々木さんに抱かれたあたしを見て、何を思ったんだろうって、そんなの想像するまでもないよ。
「ごめんなさいっ！佐々木さん！離してくださいっ！」
やんわり絡んだ佐々木さんの両腕を振り切って、車のドアを開けて、滝のような雨が降る外に裸足のまま飛び出して
「天塚クン！ 待って！！」
声は雨風の音に消されてしまう。
びゅうびゅうと凄い音。木々が風に晒されて枝同士がぶつかり合う音。
そしてもう、天塚クンと沙也加さんの姿はそこにはなくて。
辺りは真っ暗で、二人がどこに去ったかもわかんないくらいだった。
「彼…だったの…？」
いつの間にか車から降りてきた佐々木さんが声を掛けてきたんだけど、返事する余裕もなくてさ。
「ごめんな神田さん… 俺… ごめんな」
ううん。佐々木さんが悪いんじゃないよ。イケメンの佐々木さんに誘われて、浮かれちゃったあたしが全部悪いんだよ。
でも…どうしよう…
どうしたらいいんだろう…？
頭の中をそんな言葉だけが駆け巡っていたの。
呆然としちゃったまま、頭から雨でびしょ濡れになったあたしは周囲見渡してみた。
ふと気づくと、近くの木の幹に、なにか布のようなものが引っ掛かっているのが見えて。ちょっと覚束ない足取りで近寄って見たら、
ブラウンの傘だった。
彼の傘だ。
すぐわかったよ。
そう、何の変哲もない傘を見ただけで、天塚クンのものだって分かっちゃうんだ。
それくらい彼のことが好きなのに…なんであたしこんなことを…って
傘を閉じて、そっと胸に抱きしめて。
いくら雨が強くても、あたしの頬を伝うのは涙だというのだけは分かるよ。
ごめんね 天塚クン…
（続く
でも神田さんがなんで「なんの変哲もない傘」を見てだけで「天塚くんのだ」ってわかっちゃうほど彼のことが好きなのか、謎。
脇キャラはソコソコ立体的に描けているのに、リードキャラ2人の魅力、なんでお互いのことが好きなのか、なんでその人じゃなくちゃダメなのか、今までのエピソードや言動から伝わってこない。
佐々木が神田のことを好きな理由も謎。
なんかこう、それぞれの恋のきっかけとなる「瞬間」の描写が必要だという気がする。
神田さんどうするんだ～？
佐々木氏、もうちょっとね、なんか可哀そう・・
けーすけさん、続き待ってるね～(^^♪
女の子は、神田さんだけじゃあない^^
気を取り直して、がんばれーーーーーーーー(ΦωΦ)ﾌﾌﾌ…
なんで佐々木さんにフラッときちゃったのかな。
魔が差したのかな？？