Nicotto Town


人に優しく


もったいない


「必ず、あなたはなおって、ぼくのお嫁さんになるんだ。どんなに長くかかっても、必ずなおってくれなければ困る。しかし、なおらなければなおらないで、ぼくは一生他のひととは結婚しませんよ」

信夫は初めて自分の想いをふじ子に告げることができた。

そしてほんとうに、この可憐なふじ子以外のだれとも結婚すまいと、あらためて心に誓った。

「まあ、そんな……もったいない……」

「何がもったいないんです。ぼくのほうこそ、あなたのような美しい心の人と、こうしていられるなんて、どんなにもったいないかわかりゃしない」

信夫は、ひざを正して言った。

「ふじ子さん、ぼくと一生を共にしてくれますか」

再びふじ子の目から涙があふれた。





ー 『塩狩峠』 三浦綾子 ー




 




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