【第12話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/05/17 21:38:52
キャンプ場の朝は早い。
クマさんのテントからは、昨夜以来轟音とも雷鳴とも言うべき凄まじいいびきが聞こえている。
俺は目を覚ますと、腕時計を見た。まだ5時半か…
シュラフから抜け出ると、テントのファスナーを下ろして外に出てみる。
朝焼けが眩しい。湖畔を渡る風が心地いい。
神田さんやしずかさんのテントも、まだ眠りについてるみたいだ。
昨夜の焚き火台に炭を並べて火を熾す。
ぱちぱちと音立てて、着火剤がわりの松ぼっくりが燃え始める。
朝食のご飯を炊く準備をし、俺は飯盒にお米を入れて、水を足して。
今朝の朝食は、鮭の塩焼きと味付け海苔、そして納豆にしよ…と慣れない手つきでクーラーボックスの中の鮭の切り身を取り出してスキレットの上に並べて塩を振ってさ。
魚が焼けるいい匂いと薄っすら白い煙が立ち込める中、俺はポケットからスマホを取り出して、とっておきの画像を1枚表示させた。
そこには、満面の笑顔で誕生日ケーキのと一緒に映ってる女子の姿が映っていたんだ。
1昨年の夏に、一緒に誕生日を過ごした女の子の写真だ。
様々な思いが脳裏を駆け巡ってきてさ。俺はぼんやり画像を眺めながら魚を裏がえしたりしててね。
「へぇ… 誰なの、その子?」
いきなり背後から声がした。
俺は腰が抜けるほど驚いて振り返ったらさ、そこに…神田さんが立っていたんだよ。
見たなぁぁぁぁっ!
俺はあまりの衝撃に、言葉もなく神田さんの視線受け止めることが精いっぱいでね。
自然と冷や汗が背中を伝ってくるのが分かったよ。
そしたら真横からまた別の声が…
「なになに?天塚クンが女の子の写真見ながらぼーっとしてたって?」
しずかさんだよな。なんなんだよもぉ…
「で、ホントその子誰なの?」
近くのテントから、クマさんのいびきが激しく聞こえる中、俺たち3人は朝食のテーブル囲んでさ。
無言でメシ食ってたんだよね。
誰も何もしゃべらない、淡々と朝食が進んでいたんだけど。
そしたらしずかさんの情け容赦ない質問攻撃が始まったんだ。
「えと…何でもないんですよ…」
「なんでもないわけないでしょ? 特別…な関係だったとかだよね?」
「いえホント何でもないですっ…」
「さっき一瞬しか見えなかったけどさ…すっごいかわいい子だったよね?」
と、しずかさんは隣でもくもくと箸を運ぶ神田さんに話題を振ったんだ。
「ぇ… うん… 私もよく見えなかったんだよね…」
気のない、いなすような神田さんの答えに、自分と同じように突っ込んでくることを予期していたしずかさんは、がくん、と前のめりにずっこけちゃった。
気を使ってくれたのかな?
昨夜はあんなに女子二人で、血で血を洗うバトルしてたのにね?
なんだか空気がしらっとしちゃってさあ…
しずかさんもなんだかばつが悪そうに、
「あ、天塚クンの炊いたご飯美味しいよね!鮭もよく焼けてるし~」
急に話題変えないで欲しいかも。
俺たち3人は、早朝の透き通るような空気の中、ややぎこちなく朝食の宴を囲んでいたってことさ…
(続く
『そこには、満面の笑顔で誕生日ケーキのと一緒に映ってる女子の姿が映っていたんだ。』
『へぇ… 誰なの、その子?』
ここ6行のあいだ物語のBGMの色が、うすーーーいみずいろになりました。
読後感:楽しかったです♡୧(⑉• •⑉)୨❤︎*゜
どんな風に完結するのか楽しみです!
クマさんの誕生日が女子たちのバトルの陰で
お祝いされることなく過ぎましたが、おめでとう~クマさん♪
謎の女の子、どういう関係かな~?まさか、クマさんの妹とか・・(笑)
次作も楽しみに待ってま~す(^^♪