Nicotto Town


人に優しく


無知


ぼくらは言う。

「ぼくたち、何ひとつ悔いていません。悔いることなんか、何もないんです」

長い沈黙ののち、彼が言う。

「私はね、窓から何もかも見たのだよ。あの一切れのパン……。しかし、懲罰は神だけの権限なのだ。おまえたちに、神の代理を務める資格はない」

ぼくらは黙っている。

彼が問う。

「おまえたちに祝福を授けてもいいかね?」

「それでお気が済むなら、どうぞ」

司祭は、ぼくらの頭の上に手を載せる。

「全能の神よ、この子らに祝福を与え給え。この子らの罪が何であろうとも、この子らを赦し給え。醜き世の中にあって迷える羊、この子ら自身、私どもの堕落した時代の犠牲者にして、自らの行為の何たるかに無知なのです。この子らに宿る子供の魂を救い給い、御身の無限の寛大さと、御身の慈愛の内に浄め給わんことを、哀願いたします。アーメン」





ー 『悪童日記』 アゴタ・クリストフ ー




 




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