【源氏遊び外伝】 最後の酒宴
- カテゴリ：自作小説
- 2021/05/06 23:20:45
「決めたのか？」
「はい、3日後に…」
何を、とは言わず白藤中将はただ一言、問う。
阿鳥も簡潔に答えを返し、どこか無邪気な、表情を見せた。
果てを感じさせないほど高い空には、ただひときれの雲さえ見えない。
だが頬をなでる風には、わずかに次の季節を感じさせる冷たい線が混じっていた。
「寒いかもしれぬな」
「おそらく…。ただ雪姫が、」
そこで阿鳥はいったん言葉を切り、東の方角に目を向けた。
庭に咲く青紫の桔梗が風にあおられ、まるで阿鳥に頷くように、一瞬ゆらぐ。
その花色は、雪姫の瞳の色であった。花言葉は永遠の愛。
それをぼんやり見つめる阿鳥に、白藤は酒杯に口をつけたまま、上目遣いで先を促した。
近衛を辞して、国司となることを選んだ阿鳥の最初の赴任地は、遠国・相模国だった。
京に近く、大きな影響力を持つ大国・近江国への打診もあった。
白藤中将の思惑も含まれていたであろう。おそらくは打算も、温情も。
だが、阿鳥はいったん京の支配から離れ、雪姫と向かい合う日々を過ごしたいと望んだ。
たとえ2～3年ほどでも。
誰も知らない場所で雪姫を妻とし、その後に、妻を伴い京の近くに戻ろうと思いまする。
阿鳥はそう、白藤中将に願った。
相模国、現在で言えば、川崎と横浜をのぞく神奈川全域であろうと推測される。
その遠さに最初は難色を示されたが、1年限りということで許された。
唯一の懸念は、京を遠く離れることに雪姫がどのような反応を見せるかであったが、
雪姫は一瞬たりとも躊躇することなく、そして是も否もなく、ただ
「雪姫は〝二人であれば温かいから大丈夫〟だと言ってくれました」
その時の様子を思い出したのか、阿鳥の口元に柔らかな笑みが浮かぶ。
白藤中将は、ただ見えぬものを見ているような、幸せそうに微笑む阿鳥をしばし眺め。
「そうか、気をつけて降れ」
「はい」
……これが京の白藤本邸における阿鳥と白藤の、最後の酒席であった。
式鬼・雪姫 ミュ☆ミュさん
白藤中将 ロワゾーさん
藤原阿鳥 和.com
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源氏遊び 有為の奥山 特設サイト ← 流れに沿ってまとめて読めるのは感動です
https://shiro-et-myu.wixsite.com/genji01
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藤原阿鳥というキャラを作って、まるっと一年になりました。
行き当たりバッタリ、先を何も考えずコーデしたキャラがよくぞここまで (ノ≧▽≦)ノ
と思うと、感慨深いものがあります～～～ｗ
＞ 冷たい線が混じっていた
このへんはパクリなのよ～～～ｗｗｗ
秋っぽい言い回しを、著名な文学作品から拝借しただけの切り貼りでーす (((o≧▽≦)ノ彡
プロはうまいよね。
そして第一話の、雪姫の登場がまた魅力的で♥ 私はあれでハマった。
鬼を妻にするんだから、都から離れた方が安全でしょう。
ヘタにバレたら雪姫が危ないし～。
という発想なので、京の近くには戻ると思いますよ、いずれは。
でも京には戻らないだろうな。
だから『白藤本邸での最後』なんです。
近江くらいなら、白藤は、テキトーに遊びに来そうだしｗ
情景の描写がとても美しい。
冒頭から空や空気さえも目に見えるようです。
桔梗が雪姫の目の色で、その花言葉が永遠の愛とか素敵すぎて
自キャラなのに、雪姫が羨ましいとか思ってしまいましたｗ
阿鳥の表情も、白藤中将が杯に口をつけたまま上目遣いに先を促すところとか
ほんと そのまま頭に絵が浮かぶー。
素敵なお話をありがとうございました。
しあわせなふたりのその後❤が読めて本当に私もしあわせだ。
和風幻想譚で出た結果がこれでした。
式鬼
白色の髪、紫色の瞳を持ち、月と秋草の神楽装束をまとってリボンで髪を結った妖です。
とある人間のことが好きで好きでたまらないようです。
私が式鬼のコーデをして、和ちゃんが「とある人間」コーデをしてくれたのが始まりだね。
それが、こんな風に動き出して、熱を持ち、愛おしい存在になろうとは。
ほんと、書き遊びの楽しさだねぇ。
素敵なお話をありがとうございます。
いつかその後のふたりを書きたいです。
それこそ前に言ってた阿鳥が死ぬときに、雪姫も死ぬ呪いを自分にかける話かねー。
呪いじゃなくて祝福か。
平凡で穏やかな毎日を送って、年老いて一緒に死ぬのがいいな。
相模の国での任期が1年ですめばいいけど・・最後の酒席ということは・・（汗）。
でも幸せな日々は、かけがいのないもの。
まさか京から離れると雪ちゃんに何か異変が
とかは考えなくていいんだよね！？！？
こうしてハッピーエンドで終ると分かれば
決戦ものりこえられるー♪
コーデ、なんという色気！
お花見の季節がまた過ぎちゃったしーo(｀ω´*)oｵｲｯ！
ついついフライングなのよーーーっ、ごめん。
季節は秋。限りなく冬に近づいている頃かなぁ。
阿鳥というキャラ、ずいぶん長く付き合ってきた気がするけど？
たった一年しか経ってないという事実は、私としてもか～なり衝撃だったよ、うん……。
本当なら決戦を終えて、さらにミュ☆ミュさんのエピローグを待って……
の後日談なんだけどさｗ
つい走ってしましました _(L〃_ _)ﾉｼ ﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝ‼
阿鳥と雪姫が降っちゃったよーΣ(ﾟ∀ﾟﾉ)ﾉｷｬｰ
ごめんね(;^_^A アセアセ・・・