【第4話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/04/30 22:15:15
「本当にありがとうございました。私はソロキャンプ派なので…忘れ物すると大変だから気を付けてたんですけど、でもドジですね、マッチ忘れるなんて」
火打石とスクレイバーを返しに来た彼女は、ちょっと照れたようにその細身の身体をすこーしだけ揺らせて微笑んでいたんだ。
「いや、アクシデントなんてどんな時にも起っちゃうものですよ。大丈夫ですよ」
俺は、火打石がクマさんの物なのに、何だか自分が手柄を立てたように胸なんか張っちゃって(苦笑
春の陽はすっかり暮れて、周囲はぼんやりと薄暗くなってきてる。
遠目に、あちこちに週にのキャンパーたちが掲げたカンテラの照明が映え始めてきた午後6時半頃のことだった。
彼女が火を借りに来てから、なんだかクマさんの口数が一気に減ってしまってさあ。
「この料理、ダイナミックですよね。うまそ!」
「…」
「ソロキャンプが好きなんですか?俺もソロキャンプってなんだかいいなーって思ってますよ!」
「…」
俺が何か話しかけても、クマさんは無言で、クーラーボックスから取り出した缶ビールを自分一人でぐいぐい飲み始めちゃった。
そんな時に、彼女がこっちのサイトに戻ってきたんだよね…
火打石セットを俺に返してくれた彼女は、クマさんが作ってくれた2品目の料理、テーブルに無造作に置かれているのに気付いてハッとする表情を浮かべてね。
「美味しそうですね… これ、エリンギと玉ねぎを先に炒めて、整形肉のサイコロステーキににんにく醤油を和えたんですね?」
「…」
おい ちゃんと反応しろよ…
しかしだ、
一気に、私小説気味の舞台が転換したのは次の瞬間だった。
「整形肉のサイコロステーキは、やっぱり最後に入れて焼いたんですか?」
彼女が、メガネの奥の目を細めてそう訊ねた時だったんだ。
彼女がそう言った瞬間、今まで貝のように無口だったクマさんが、
「そうそう!そうだよ!よく分かったな!」
でもそれはホントに小さな声で、俺にしか聞こえないくらいだったのは笑っちゃったよ。
「整形肉は火が通りやすくて、形が崩れちゃうから最後に入れるんだ。野菜やキノコは最初に…」
「そうですね。岩塩と醤油で味付けするんですよね」
「そうそう…って? そこまで分かっちゃったのか?」
クマさんの声がノーマルに戻った瞬間だった。
「あ、ごめんなさい。自己紹介もしてなかったですね… 私は桐谷しずかって言います。20歳の、○○大学の2年生です…」
我に返ったように、ペコっと頭下げて自己紹介をしてくる彼女。
へぇ 大学生だったんだ…
化粧っ気ないよなあ… でも素肌は透き通るように白いんだなあ…
俺がそう思った瞬間
「○○大学? マジかっ! お、俺の後輩じゃねーかよっ!」
クマさんさあ…
そりゃ偶然の出会いにテンパったのかもしんねーけどさあ…
俺の背中を思い切りどやしつけるのはやめて欲しいな。
「あ、俺は 天塚蕃(あまつかばん)です…○○大学にこの春入学決まりました。しずかさんと同じですね、あ、18歳です!」
「あ、そうなんですね。天塚クン、よろしくね」
さて、
つぎはクマさん、あんたの番だぞ?
俺たちはお互いに自己紹介しちゃったんで、会話の流れでクマさんのほうを同時に見たんだ。
すっと一瞬、空気が固まったような気がしてさ…
「あ、カンテラ付けるの忘れてた!」
クマさんが立ち上がろうとするのを俺は両手で阻止したんだよね。
「おじさん、自己紹介するターンだよ。カンテラなんて後でいいから」
クマさん、また黙っちゃってね。
そわそわしてるんだ。
落ち着きがない。そんな素振りでさ。
「だからあ… 俺も名前聞いてないしさあ…」
「私もですよ」
しずかさんがいたずらっぽく笑ってそう追い打ちをかけてくる。
「わかったよ少年! 俺は…」
ふむふむ?
はい?あなたのお名前はなんてーの?!
「…かわい ゆう…」
はい? なんですって?
俺の聞き違いかな?
ささ、
も一回大きな声で!
「可愛…優って言います! 27歳です!」
(続く
可愛くて優しいんだヨ
最強無敵!
きょの感想♡♡
すごく面白かったです。
続き楽しみにしてまっすヾ(⑉• •⑉)ノ”
まぁ、人は見かけによらないですからねぇ・・
次回の展開が楽しみ~~~~^^
可愛くて優しいクマさんですねw しかも以外に若かった!
ばん君ははじめ君かと思ってた~
今後の展開を楽しみにしてます♪
〇〇大学……どこだんべぇ?
続きが楽しみです~♪