【第2話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/04/28 22:01:28
「申し訳なかった! 俺としたことが、これしきの荷物でふらつくなんてほんと情けないっ!」
腹の底に響くくらいの大声で、それでいて全く悪びれた様子もなく目の前で大柄の、髭もじゃの男の人が、ガハハと形容するしか他に手はない様子で笑っている。
俺は、その彼が倒れ掛かってきたため、ホムセンで買った小さなBBQコンロを破壊され、それどころか貴重な食材の半額焼き鳥まで土まみれにされてしまっていた。
呆然と、声もなく立ち尽くす俺に
「少年!お詫びだ。俺のテントに来い!」
目の前の髭もじゃ(クマかと思った)男が、俺の手を掴んでぐいぐい引っ張っていくんだわ…。
「あ、あの…」
「なんだ少年!お前今から晩飯だったんだろ?でもその食材を俺が台無しにしてしまったから、お詫びにご馳走しようって言うんだ!」
いやその…
こんな無骨で大雑把なオッサン(失礼!)の作るメシなんておおよそ見当がつくさあ。俺は必死で掴まれた手を振りほどこうとして
「いえ!大丈夫ですよ!お詫びなんていりませんから!」
ガサツでいい加減なキャンプ飯食わされるんなら、俺は空腹のままでいい!
「遠慮すんな少年!」
「俺は18歳です!もう少年って年じゃ…」
「未成年だから少年だろうがっ!」
見てくれ通りの怪力だ。俺は抵抗を諦めて彼に引っ張られるまま歩いていくしかなかったね…
「で…何をご馳走していただけるんですか?骨付きイノシシ肉の丸焼きですか?それともダイコンの1本焼きですか?」
げんなりしたまま、皮肉交じりにそう告げると、俺は彼にすすめられるままローチェアに座った。
「何馬鹿なこと言ってんだ少年!いいからそこで見てろっ」
一喝して、クマおっさんは向かいのチェアに座る。
「うまいもの食わせてやるって言ったろ?だからちょっとそこで大人しく待ってろっ」
クマおっさんが脇に置いたテーブルにまな板を置いて、リュックから小ぶりのナイフを取り出す。
おい、なんだか危険な雰囲気だぞ?…
「少年はキャンプよく来るのか?」
クマはクーラーボックスから取り出したアサツキネギを(案外)器用に刻んでいく。
「いえ…今夜が初めてのキャンプだったんですよ。まだ初心者だから炭火で焼き鳥焼こうって思ってたんですけどね…誰かさんが台無しにしてくれましたけど?」
「まあそうむくれるな少年。キャンプ飯の入門編を教えてやるからよく見とけ」
俺はちょっとふてくされていたんだけどね、あのごっつい手で何を料理できるんだろうって半信半疑で見てたんだよ。
そしたら、ものの20分も経たないうちに、スキレットの中に料理が…
え?
ぇ?
旨いじゃん…
「どうだ少年。これがキャンプ飯ってもんだ。焼き鳥もそりゃいいが、せっかくアウトドアを楽しむんだからこんな料理を作った方が楽しいだろ」
「こ、これ…マジで今作ったんですよね?」
「当たり前だ 少年はちゃんと見てただろ?」
「でもたった20分で…」
空腹だったせいか、紙製の器に入れられた料理はあっという間にカラになったんだ。
「作り方聞きたいか?」
無言でコクコクと頷く俺。
「じゃあ教えてやる。今からもう一回作るからよく見とけ」
クマはスキレットをコンロに置いて、ひと口大に切ったイカと小エビ、それにぶなしめじとブロッコリーをそこにぶち込んだ。
そしてコロコロと軽く炙る。
「これは冷凍食品だからな。解凍されて水っぽいから最初に水分飛ばすんだ」
2.3分炒めたあと、オリーブオイルをどばどばと流し込む。適当なようでいて実は手慣れた繊細な手つきだった。
5分ほどすると、たっぷりのオリーブオイルが煮えたぎり始める。
「ここでニンニクだ。チューブのでもいいけど、俺は皮をむいた奴を使うんだ」
皮むきされたニンニクの粒を何個か投入。
「塩は岩塩な。普通の塩でもいいが風味がまるで違う。コショウは黒コショウでパセリ入れてな」
目の前に繰り広げられる調理タイム。クマの手がまるで料理人のように舞っている。
いつの間にかスキレットの隣に飯ごうが置かれていて、お湯が煮えたぎる中では、半分に折ったパスタが踊っていた。
「パスタは硬めにな。ん これくらいでいいか」
クマはパスタをトングで掴むと、ぱぱっと湯切りしてスキレットの中に放り込む。
「仕上げはカレーパウダーだ。小さじ2杯程度でいい。で、あさつきの刻んだやつと和えて出来上がりだ。これが俺の特製 カレーアヒージョパスタさ」
いや本当にうまかったんだよね…
(続く
危ない出逢い?とか思ってたらクマおじさんだったのね~ww
私は文章を書くことで30年以上メシを食ってきた人間なので、あえて「偉そう」に言わせてもらうと、こういう才能は大事に育てなくちゃダメだよ。そして、誰に何を言われても手放しちゃダメだ。
文章力はすでに持っている。手に入れてしまえば、ケースケさんにとってボールペンみたいんな「道具」でしょ?
あとはそれを使って何をどう伝えていくかにフォーカスだね。続きも楽しみにしています。
外で食べるから美味しさ倍増なんでしょうか?
けーすけさんもこういうの作るのかな~♪
「じゃあ教えてやる。今からもう一回作るからよく見とけ」っていう事は・・・
最初にご馳走になったのも「カレーアヒージョパスタ」だったのかな?
バケットもあるといいですね~w
ストレスフリー♡♡
美味しいキャンプ飯ってゆの、わたしも食べたいヾ(⑉• •⑉)ノ”
あ、大根の1本焼きはいらないけどw
半額焼き鳥より、豪華~~^^で、良かったね(≧▽≦)