【護神】 書き遊び:緋金
- カテゴリ:自作小説
- 2021/04/26 22:08:37
発現は、突然だった。
手のひらから噴き出した炎が、手首・前腕・上腕へと駆け上がるように燃え広がり、緋金を傷つける。
そばにいた幼い弟たちも巻き込んだ。
それが緋金の異能で、己れの身に炎をまとい、触れたものを焼くのだとその時に初めて知った。
が、同時に緋金自身をも焼き尽くす、諸刃の剣。
哀れな愛し子よ。
おまえが生きている時間だけ、私が力を貸してやろう。
護神・渢刃はそんなことを言って降臨する。
緋金はそれによって能力を行使する際に【自身の身体を防御膜でおおい保護する】力を与えられた。
だから、緋金は、生きている。
「朱継、今夜は茶碗蒸しが食べたいっ」
「はいはい」
公休日で特に予定がないはずの朱継に、食べたいものを主張する。
が、雑誌から目を離さずに気のない返事をくれる弟に、緋金はほおをふくらませ抗議した。
「む~~~」
そんな緋金をスルーして、朱継はまったりと蓮茶を楽しんでいる荷葉と、ふよふよを漂う渢刃に問う。
「……何かリクエストある?」
「酒」
「肉」
返ってきたのは何の参考にもならなさそうな答えだ。そんなことより茶碗蒸しっ!
「む~~~」
発現で大火傷を負ったものの護神により九死に一生を得た緋金だが、その後も不幸は続いた。
怪との戦いで父が〝帰らぬ人〟となり、失意のまま母が儚くなり…。
緋金は、15歳を前にして特務に志願し、仮入隊の形で訓練参加を許された。
自慢の集中力を以て、根に根を詰めるような訓練を繰り返し、能力と技術を磨いたが、傷も増え続けた。
結果、6歳下の弟・日向から、表情が消えた。8歳下の末弟・朱継は毎日のように泣いた。
このままでは二人の笑った顔が思い出せなくなると、緋金は怯えた。
「む~~~」
それに比べれば、いまはなんと平和だろう。
たとえ以前とは比べ物にならないほど、渠の深刻さが増していようとも。
「……早くシゴト行きなよ、遅れるよ」
朱継は、根負けしてくれなかった。至極残念です! しょんぼり。
今日、割り振られた仕事は、結界のほころびからハミ出してウロウロしている怪の討伐。
乙種3割、丙種7割と推測されているから、おそらく淡々と片付ければ終わるだろう… という読みは、
ともに戦う相棒が今日は匂宮ロザリンドだと知り、あっけなく崩れ去る。
「緋金~♪ 今日もよろしくなっ!」
「だからヤメロって!」
走ってくる、その勢いのまま抱きついてくるロザリンドことローザだが、
やっていることはハグではなく、突進からの衝突だ。
「むちうちになったらどうするっ」
「やだな~緋金ちゃん、自動車事故じゃないんだからさ~」
「似たようなもんだろう、ブレーキ踏めよっ!」
そんなローザとの掛け合いに、護神・渢刃(ふぅば)は、ギャハハハハと笑っている。
神が、ふわりと宙に浮いたまま腹を抱えるように前かがみになり、くるんくるん回りながら大爆笑する様は、かなり珍妙だが。楽しんでもらえて、何よりだ。
ローザも陽気に笑いながら歩き出すが。
現場に到着し見た光景には、さすがに ぅわっ と顔をしかめた。
「ゴースト型が多いな~、焼却炉でいける?」
「すんなり焼けるのもいるだろうけど、爆発したり分裂して拡散するのもいるかも」
「えーーーっ?」
「ゴースト型は何で構成されてるか、によって対処が違うんだ。幻みたいなモンも微粒子の塊みたいなのもいる。霧みたいな水粒子なら蒸発させればいけるかもしれんけど、万が一、火で爆発する微粒子だったら、私はなんとかなるだろうが、ローザはヤバい」
「コレらが丙種って納得できないーーーっ」
たぶん一体一体の攻撃力は高くなく、相性のいい浄化部隊なら一発で終わる程度だからだろう。
「爆発する瞬間を狙って、止められるか?」
「……やるよ。それと基地に連絡して早めに浄化部隊を寄こしてもらおう」
護神降臨により、緋金は、己れが生み出す炎から自分を完全保護する力を得た。その他の防御力も、大なり小なり上がっている。そのおかげで緋金は、どれほどの攻撃を受けようとも、傷を負うだけで済んでいた。
歳月とともに、日向が笑うようになった。朱継は泣かなくなった。
まさか弟・二人ともが能力を発現し、護神降臨を得て、特務機関に入隊するとは思わなかったが。
「ゴースト型の研究班にも来てほしいな。こんなにいっぱいのサンプルを収集しないなんてモッタイない」
ニヤリと口の端を揚げ、そんな軽口を叩きながら。
……緋金はまず一体、手近な怪を腕で囲い己れの身に炎をまとう。
緋金と怪を囲う狭い範囲に細く火柱が立った。近くにいた一体をうまく巻き込めたが、幻影に近いゴーストにはやはり効果が薄い。
実体を持つ怪のようにガッチリ抱きつけないのが、ひどく残念だ。
ローザは、時を歪める異能を使い、少し前の場所まで一瞬で戻す、その場に留めコマ送りのように変化させるなど、怪が緋金に集中しないよう分散させてくれている。
周囲を巻き込むほどの規模にはならないものの、発火して爆ぜる怪も、やはりいた。
地味に地道に、一体一体、洩らさぬよう慎重に確実に。精神の削られる戦いが続いている。既に、どれほどの時が経ち、どれほどの怪を滅したのか。身体も感覚も麻痺してきていた。
でも、怪を遠ざけ、場に留め、必要に応じて爆ぜないよう〝時〟を凍結し…… それらの切り替えを瞬時に見極め能力を行使するローザのほうが何倍も疲弊しているだろうな、と鈍った頭で考えた。
「緋金ちゃんっっっ」
気づくと、空を見上げていた。大丈夫か? と渢刃(ふぅば)の声が耳元で聞こえる。
「浄化部隊が来たよ~。腹立つくらい一瞬だった!」
身体を起こし周囲を見渡すと、やたらてこずった幻系は一掃され、顔馴染みの研究バカが「もっと早く呼んでくれーーーっ」と吠えていた。
知るかよ、こっちはヘロヘロだったんだ。
「今日もいい汗かいたよねー、緋金っ」
「ゼンゼンよくないっ、冷や汗ばかりだったろう」
「ほら~そこは〝武士は食わねど高楊枝〟ってヤツだよ」
「はぁ~? なんか違う気がするっ」
「ちーちゃんもグッジョブ~」
ローザは早くも自分のペースを取り戻しているが、天降玉砂命こと護神・千玄は青ざめていた。
ローザも、ギリギリだったんだろう。
報告書を書いて提出し帰宅をすると、小どんぶりほどの器が輝きを放っていた。
干し椎茸と干し貝柱を使った、乾物から出る旨みと鶏ガラスープのコラボ。
それに卵液を加えて出来上がったの茶碗蒸し、さらに上から醤油あんがかけてある。
「うわぁぁぁ」
「うるさい、冷める。早く座れ」
スプーンであんと茶碗蒸しを一緒にすくって一口、二口……。
茶碗蒸しそのものは出汁とスープを生かした薄味だが、上に乗ったあんが物足りなさを補う、
緋金の好きな中華風あんかけ茶碗蒸し。
鶏ガラは肉屋で捨て値で買えるけど、ガラを洗い、下茹でした後に血合いを取り除き、
火にかけた後も、こまめなアク取りが必須となるので、
手間を嫌って朱継はなかなか作ってくれないが、今日のは本気の大本命・茶碗蒸しだった。
「おかわりも欲しいっ」
……誰にだって、いろいろある。朱継にも、日向にも、特務のメンバーにも。
もちろん緋金にだって、いろいろある。
「はいはい」
だが、湯気の立つ器を受け取った緋金はいま、たいそう幸せであった。
護神・渢刃(ふぅば) るーしぇさん
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=163987&aid=70015556
他コメント欄に。
緋金は無傷、相手は全身大火傷www 浪漫だよね~ (;ˉ ˘ ˉ) エ?
これいいなぁ そんな目にあってみたい❤︎
はっ もしや 火加減をも自在にできるのかしら。。。
茶碗蒸し好きなんです エビも好きだけど 鳥も好き
あとはですね ローストビーフが好きです^。^
しみるなぁ
心も体もぽっかぽかになりそう (´∀`*)
そしてダシの取り方が面倒!!! ひー そうだ昔はそうしてたんだ(いや今も丁寧な人は?)
粉末ふりふりできる今はずいぶん幸せだ 今度作ってみようかなぁ☆
>似たようなもんだろう、ブレーキ踏めよっ!
ツッコミが素敵すぎるw
緋金ちゃんとローザちゃん ナイスコンビですね~(≧▽≦)
傍で見てるのほんとに楽しそうだw 喜んで眺めてる隊員も多そう♪
三姉弟 誰も欠けないといいなぁ と切に願います(´Д⊂ヽ
一仕事した後の大好物の食事って、至福の一時です~。
この程度の雑魚クラスの怪って、九曜一族にとっては庭掃除くらいの感覚?
戦うというよりも、雑草焼却処分~というくらいの負荷かなぁ。
お仕事、お疲れさまでした!!(微笑)
戦闘シーンもリアっぽくて、いいなぁ
戦闘、頑張った甲斐あったね。
ローザちゃんとの掛け合いもたのしいw
ドーンとぶつかって来るハグも素敵・・チーちゃんは、ハラハラしながらローザちゃんを見守ってます。
能力の発現の様子や、炎の能力との付き合い方、参考になります。
ただ今、かぎろい君のキャラ設定、考えてるの^^
(リアル日本でいうなら昭和8年)
この時代に、ガラスープの素があったとは思えなかったんだ ( ̄~ ̄lll)
あることにしても良かったけど。ある程度、不自由なほうがソレっぽいしw
(*>∇<) NICOTTO DOLLS GALLERY から、追加のお知らせ
〵ノ∪━∪━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
怪と戦う○○の愛し子たちと、子たちを護る護神が続々と集結しました。
ページもライトニングもパワーアップしてますw
ページに「○○の愛し子」の表示とライトニングに預言詩も追加されました。
コーデの参考や異能の設定の参考にも使えます。
ミュミュちゃん製作
✿護神の預言詩(ライトニング)
(みなさんのURLを貼ってます。URLクリックでブログに飛べます)
https://writening.net/page?KvQDvP
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
N I C O T T O ◆ D O L L S ◆ G A L L E R Y
https://sites.google.com/view/dllsgllry
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お急ぎの方はこちらが直通URLになります。
https://sites.google.com/view/dllsgllry/goshin
「護神の預言詩」は、まだまだ募集中です。
こちらまでご連絡を(ロワちゃんの日記です)
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=1104605&aid=69904255
#護神の預言詩 #shindanmaker
https://shindanmaker.com/1055254
リンクチェックとお知らせに伺いました。
あとで小鳥さんがリンクチェックとお知らせにくると思います。
うわ~ん、茶わん蒸し大好きなんですよ~う、私にも下さい~!
(やっぱり、食べ物の感想かよ!w)
戦闘シーンもすごい迫力。
九曜家、みんないいやつだな。
あかねちゃん、弟ふたりのおねーちゃんでおかあさんでもあるんだな。
健気だ。
私の中のあきつぐは冷めてて仕事は早いって感じなんだけど
茶碗蒸しをガラから作るとか ギャップ萌えw
やだ、すてき❤w
戦闘シーンもかっこよかった。
私も書こう。
さっきYureさんのブログでゴールデンリトリバーが
筍を咥えて運んでは、戻ってくるたびに男の人たちに体当たり(たぶん遊んでる)
して、みんなが吹っ飛んでた っていうのを読んだので
ローザのハグと言う名の突進のイメージが重なったw
欧州系の体格で体力ありそうで、さらにはなんか楽しそうにしてるローザを
守ってる護神がちょっとだけ気の毒になったりしてw
昭島拠点にいるのかな? 軍務局あたり?
現在
緋金 27歳
日向 21歳
朱継 19歳
緋金の仮入隊時
緋金 14歳
日向 08歳
朱継 06歳
緋金の能力発現時
緋金 11歳
日向 05歳
朱継 03歳 ……くらいかな?
本来なら緋金は、力を使うたびに火傷するしかなかったんですが、
護神が降臨したことで自分を保護する能力がプラスされて、
緋金は火傷をしなくて済むようになったのです。
誰かにケガを治してもらえているのかな。
自分はこういう戦いの場面をまったく書ける気がしないので
臨場感あるシーンすごいなって思います。
なんこ皆さんのお話読んでいてすごいしか言葉が出てこなくなっている(^^;
てか!
茶碗蒸しー!!(≧∇≦)
ガラスープとるとこからとか(^q^)
あんかけとか!
小どんぶり一人占めしたいー❤️
でかくて頑健ですまんですw
たぶんローザはそんなに疲れてなくて、護神ちはるが消耗した
ことだろうと推察されます。ちーちゃん、お疲れ様~
で!茶碗蒸し!中華風のあんかけの!!
うわーローザにのりうつっておよばれしたいっ!!
朱継くん見かけて突進して、茶碗蒸し~ってわめいて
華麗にスルーされるローザが目に見えるようです・・・・
茶碗蒸しーーーー(☤▽☤)
朱継くん大どんぶりで作ってーーー☆(ゝω・)vキャピー
緋金ちゃんローザと名コンビだねー(*´艸`*)
ごめん、明日の夜ちゃんと読みに来る!!!
ちょっとまっててーーー。
お話は明日読みに来ます。
URLだけライトニングに追加します。
「焼却炉」に笑いましたw
戦いの後の日常ってしみじみ美しいねぇ。
何事もそつなくこなす万能型が、朱継だな。
かわいーなー あかねちゃんとローザ( ´w`)❤ 弟くんたち
九曜家、すこやかだなああ
◆ NICOTTO DOLLS GALLERY ◆◆◆
◆ https://sites.google.com/view/dllsgllry
◆ ・ライトニング ⇒ https://writening.net/page?KvQDvP
◆ ・共通設定要覧 ⇒ https://writening.net/page?Jn62zH
匂宮ロザリンド(におうのみや・ろざりんど) teresaさん
護神・千玄(ちはる) ゆきやさん
護神・荷葉(かよう) ロワゾーさん
護神・渢刃(ふぅば) るーしぇさん
New ⇒ https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=163987&aid=70015556
九曜緋金(くよう・あかね) 和.com
九曜朱継(くよう・あきつぐ)
◆
【言い訳】
teresaさんのお話しは、千駄ヶ谷一の渠の周縁部における戦いでしたが、
それに合わせると、朱継を公休日にできなかったので、茶碗蒸しのために別の戦いにしました。
ちなみに日向がいないのは、しばらく夜間待機が続いているからですw
たまたま家にいる時間が緋金と合わなかったんです ← 三人も出すと私が辛い (;ˉ ˘ ˉ) エ?
【補足】
九曜家の主婦は、基本、朱継です。
こういう家族構成なので、皆それぞれに家事はしますが、緋金の料理(の味)は最悪です。
弟たちが料理を覚えたのは、緋金のせいです。