「天水の不思議沼」
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/04/12 00:58:41
以下は一昨年別の所で上げた小話です。被っていたらごめんなさい。
誰もが心に感じる思い出がある。それは、ふるさとで過ごした何気ないひと時だったり、尽きることを知らない。さんさんと照り付ける太陽のもと、丘の上に建つ小学校では一学期の終業式が終ると、さるのモン太たちは森山先生に連れられて教室まで戻って来た。
「まえに話しておいたように、隣町の花園学園との交流会がある」
ざわつく教室の中先生は話を続ける。
「だれかこのクラスで担当する、二人のお客様をもてなしてくれる人、立候補してくれ」
なんだかひそひそと、めんどくさそうな空気が流れる中、リスのリイちゃんが声を上げた。
「リーッス、俺がやるっす~」
「おお! リイツ君がやってくれるのか、だが一人では荷が重かろう」
「だいじょうぶだよ、親友のモン太がいるっす~」
森山先生は、しかめっ面をしてけん制するサル太の先を越してしかりつけた。
「こら、モン太。そんな顔するんじゃない。これはお前への宿題だ。忘れたら今度こそゆるさんぞ」
「あ! はい。わかりました。それでどうしたらいいんですか?」
「明日の朝、校庭の楠のところで待ち合わせだ。二人のお嬢様がやってくるから、よろしくこの村の良さをアピールするんだ。しかし、あまり遠くへ行ったらだめだぞ。」
「リーッス、俺に任せるっす~」
「よし! それじゃ、モン太にリイツ君たのんだぞ」
「リーッス」
「・・・ふあい」
サル太の返事に眉をひそめる森山先生だったが、「まあよい」と小声で連絡事項を終えた。家路をいそぐモン太の背中を、せわしく降りたり駆け上がったりするリイツ君は言った。
「おいサル太、明日が楽しみだな、先生の言ってた二人はなっから可愛いんだぜ」
「まじで! でも俺そういうの苦手なんだよな~」
「何言ってんだ、おまえに得意なものがあるんかよ。この俺様にまかせろ」
「わかったよ、あしたなさ起こしてくれよな」
道中リスのリイツ君は、ああしてこうして何処そこへと、相変わらずまくしたてると間もなく家にたどり着いた。
夏とはいえどもモン太の住む谷あいは、木々にかかこまれ沢の流れも涼しく流れていて過ごしやすかった。
「お~いモン太、朝が来たぞ~。ちこくだ遅刻だ~」
寝どこまで潜り込んで、あちこちをまさぐるリイツ君に、たまらずモン太は起き上がった。
「ひゃっひゃっ、わ・・・たよ」
身支度をととのえ小学校の校庭までやって来たモン太たちは、楠の方へ目をむけた。すると二人のウサギさんが、ぴょんぴょん跳ねながらかけよって来た。
「うんも~、遅刻なんだからね。なんか特別なとこ連れてってくれないとダメなんだからね」
「ああ! いきなりそれ言うんじゃなくて、自己紹介した方がいいと思うのなの」
ちこちゃん風おかっぱ頭の子は話をつづけた。
「わたし、ああちゃんて呼ばれてるのなの。こっちの三つ編みおさげさんは、ケロPっていうのなの」
はきはきと物おじせずに話しかけてくるとは、さすが花園学園からの女子である。
「リーッス、遅れてわるかったっす~。おれリイツで、こいつが遅刻の原因寝坊助のモン太っす~」
「モ、モン太です。」
二人の姿は小学生にしては少し派手目の出で立ちであり、その都会から吹き付ける風に当てられてたじろいでしまうモン太であった。
「リーッス、これからどこそこへ行くっす~」
「え~! そこ行ったことある~」
「まじっすか~、そっすか~。ほいじゃさ・・・おいモン太、例のあそこはどうだ?」
モン太はその言葉を聞くなり二三歩引いて、リイツ君を隠すように背中を向けて話した。
「リッチー、あそこはまずいだろ。俺たち天水の秘密の場所だからな」
「ちーっ、ほかに何かあるんかよ、モン太」
すると聞き耳を立てていたふうの二人のうち、ケロPが言った。
「ねえねえ、知ってるよ~、その話」
「リッース、なんで知ってるんすか?」
「だって、リイツ君のお姉さんが、うちの学校へ体験留学に来たじゃん。その時知ったのよ」
「リーッス、まじっすかー。姉ちゃんのおしゃべりめ~」
サル太はこの会話に突っ込みを入れた。
「おい! リイツ。男子だけの秘密なんだ。お前が姉ちゃんにしゃべったんだろが」
「リーッス、しらないっす~。きっと寝言でいったんす~」
あくまで責任のがれの言い訳をするリイツ君であったが、モン太はしぶしぶうなずいた。
「リーッス、それでは皆さん、これより天水の不思議の森へ行くっスー」
「お~~っ!」
威勢がいいのは、都会の二人とリイツ君だけであった。
ナラやクヌギの生い茂る道を、沢づたいに上ってゆく子供たち。セミの鳴き声がジュクジュクと降り注ぎ、野鳥の声が木々の小枝を揺らしていた。対岸の、流れが淀んでいるところでは、カワセミがその日の糧を求めて水面へ向けて急降下するのが見えた。
「ねえ! まだ着かないのお?」
「ああ! もう少しだ。あの土手を超えたらすぐそこだ」
ケロPに不意を突かれたモン太だは、ものおじすることなくそう答えた。
「あれ、人見知りするんかと思ったけど、わりと普通じゃん」
「ちげーよ、ちと宿題の事が気になってるだけだ」
「ふ~~ん、そうなんだ~」
「リーッス、ここが例の場所だ」
ちょこまかと小走りに急ぐリイツ君を先頭に、一同は沼の上の方へ降りて行った。
「あのさ、あのあたりの泥の中に、こ~んな大きな貝がいるんだぜ。取り放題だ。」
モン太が指さす先には、浅い水面下にポツンと穴があり、時折小さな泡が立ち上っている。
「え~~~っ、おもしろ~いの、なの」
ああちゃんの口からでた空気は、あたりに流れ出してこだました。
「でっ、どうすんの、どうすんの」
ケロPはぴょんぴょんと準備体操を兼ねて跳ねまわっていた。
「リーッス、のりこめ~~~!」
モン太はこう言って沼に頭を突っ込んだままもがくリイツ君を、そのたびに引き抜いてやった。二人組のお客様は手足もどろんこなり、頬を伝わるしずくも物ともせず、時折にっこりと得も言われぬ笑顔を手向けてきた。
まぶしい、まぶしすぐる。真夏の太陽に照らされたその姿は、とてもまぶしかった。
「ね~!もうこんなにとれたよ~」
「そうなの~」
二人のお客様は獲物を入れた袋を、両の手で持ち上げていた。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「リーッス、俺はまだとり足りないっす~」
「お前はただドロン中に頭をつっとしてただけだろうが」
「リーッス、目印つけたっす~」
「わかった、わかった。また今度にしような」
「リーッス」
一行は沼を離れ、帰り道の沢の淀んでいるところで、泥を洗い流した。
「モン太くんありがとね、とっても楽しかったよ」
「お! おう。よかったな」
「今度はうちの町へ遊びにきてね。待ってるわ、きっとよ」
「・・・」
「リーッス、モン太が赤くなった~。モン太が赤い、モン太が赤い!」
「ばっ! バカ言え。これは元からだ。それに見ろよ、あの夕焼け。珍しくまっかっかだぜ。」
「ふふふっ」
オレンジ色の空が色を増すと、やがて西の空から赤色が沈んで行った。
一同は家路を急いだ。 ~ おしまい ~
文中サル太とモン太がごっちゃになってるのに気づいた。サル太は転校して行った親友の名前で、この物語の前身である中学生の時の課題で作ったお話なのです。このお話を動画にしようかなとも考えておりますが中々進みません。やりたい事大杉、あちこち手を出しすぎなのです。
愛らしい 情景が 浮かんできまし た☆
主人公たちが 動物で 小学生という内容だからかもしれません
童心に返り 昔・・・
皆と 作った事のあった 秘密基地を 想い出します