小説『ラブレス』
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/02/06 13:49:16
桜木紫乃 著
『ラブレス』を読みました。
桜木作品はむかし新聞小説で
『それを愛とは呼ばず』を読んで好きになり
定期的に文庫本を購入してきたのだけれど
今年になって久しぶりに読みたくなり
本書を選んでみました。
北海道の開拓村の極貧家庭で育ち
10代半ばで旅芸人の一座に加わって
故郷を飛び出した女性の話で。
親類の家で育てられ
主人公のいる実家に
連れ戻されてきた幼い妹が
生活環境が粗末かつ不衛生で
父親がお酒を飲んで荒ぶり
母親が無抵抗かつ無気力というありさまに
愕然とするという
序盤からの荒ぶる展開に
おののいてしまいました。
んもう
DV ダメ ゼッタイ。
歌うことへの情熱を胸に抱えつつ
風の流れに身を任せるように
職と住まいを転々とした主人公の
波乱万丈な過去のエピソードと
主人公の人生の隠れた側面を
姪が紐解いていく現在のエピソードとが交錯し
それらのエピソードに
抑制を利かせつつも
ほのかな愁いを帯びた
体温を感じさせるような心情描写が
彩りを添えます。
私は桜木さんの
この心情表現が好きで
一度ツボに入ると
読むのを止められなくなってしまう。
理容師になった妹と
作家になった娘と
市役所職員になった姪の
それぞれの生きかたと想いも
並行して描かれ
それらを通じて
生きることの幸せについて
あらためて考えさせられ
親から子へ命をつなぐことの尊さを
あらためて感じたのでした。
主人公の度重なる不運に
やるせない気持ちにもなったのだけれど
慈雨のようなラストに
涙が溢れました。
もうとにかく主人公が愛おしくて。
桜木作品で泣いたのは初めてかも。
わたしも『LOVELESS』読みました。
主人公の女性がいろいろと不憫で不憫で・・
大事なひとたちを守るために、いろんなことを
心の中にしまいこみながら、それでも一生懸命
前向きに生きて行こうとする。読んでいて
胸が締め付けられそうでした(>_<)
だからこそ、あのラストはほんと泣けました(;_;)
なんだかようやく報われたというか・・
悲しくて切なくて、でも美しいラストだったと
思います。
日記読ませていただき、またその時の感動が
蘇ってまいりました。ありがとうございます^^
どちらかと言うと淡々と客観的で端正な印象でした……
『ラブレス』はまた一味違って、より情動を強く喚起する小説のようですね。
ユウさんの感想を読むと、この作品も読んでみたくなります。(*´ω`)
ある種、生きる事だけに特化して自分も修羅になってしまう人も多いハズですが・・・。
でも、オオトモユウさんの解説を読ませて頂くと
それでもやはり生命的な、家族的な繋がりが人を救うという事(結論)のようですね。
女性にまつわる物語って、広がりがあって、
全然違う人生であってもそれぞれ共感できるところがあるので好きです。
しばらくは余韻が楽しめそうですね(^^)
日本でも、しかもそんなに昔とも言えない時代に
こんなことが普通に行われていたのか、という驚きと
そんな中で這いつくばるようにして生きている人たちの姿に
胸が締めつけらる思いがしたのを覚えています。
『氷平線』は今でも心に残る一冊です。