Nicotto Town



「海と波乗り達と彼女」のつづき


「もう一人の転校生」 

中学二年生に進級すると 一人の転校生が、やってきた。 
彼女の名前は 海原愛子。 
彼女が自己紹介している声を聞いて、僕は彼女の顔を見た。 
彼女の透き通った声を聞くと 心がすぅっと穏やかな気分になった。 
それとは別に すごく悲しみが 彼女の心にあるように思えた。 
僕が住んでいるこの田舎の町にはいない 
とても均整のとれた顔立ちをした美人だった。 
きっと都会育ちなんだろう。 

彼女は空いている僕の隣の席に座った。 
彼女は 小声で言った。 
「海君ですね。よろしく!」 

僕はびっくりした。 なんで僕の名前を知っているんだろう。 
僕は、小さく頭を下げた。 
「あっ!驚いちゃった ごめんなさい」 
僕のびっくりした顔見て彼女は言った。 
僕は、ますます何が何だかわからなくなって言葉が出なかった。 

彼女はサーフィンの雑誌を僕の机の上置いた。 
「この雑誌の写真に写ってるのは、海君よね」 
確かにその雑誌に載ってる写真は僕だった。 
生見海岸の 取材に来ていた 雑誌の記者が 
僕のライディングしているときと 
インタビューの時に写真撮って 記事にしてくれていた。 

「私は、あなたに会いにこの学校に転校してきたの」 
彼女にそう言われてますますわけがわからなかった。 
彼女は転校する前は ニューヨークに住んでいた。 
彼女の父親は、 国連で働いていた。 
その日は 地球温暖化について 各国の首脳や要人が 国連に集まっていた。 
厳重な警備にも関わらず 国際的テロ組織 「I」 の一人が、
国連前で自爆テロをした。 
首相や要人たちは無事だったが、 
レセプションのために来ていた母も巻き添えで、彼女は、両親を失った 。 
母方の親戚が、ここにいるので ニューヨークからここへやってきた。 
なぜ僕に会うためにこの学校に転校してきたんだろう。 
雑誌で写真を見ただけで 来るんだろうか? 

両親を突然失った彼女は、悲しみのどん底にいた。 
そんなときに手にしたサーフィン雑誌の僕の屈託のない笑顔を見て 
彼女が救われたと言う。 
僕が住んでいる町に親戚がいることを 彼女が知って ここに転校してきた。 
 
彼女は語学が堪能で、仁と同じくパソコンが 仁レベルに詳しかった。 
波がない日は仁の家で3人で二人はお互いハッキングの 
情報交換をしながらハッキングをしていた。 

僕が波乗りをする時は彼女は 教科書や本を片手に ビーチで 過ごした。 
彼女は、僕にはっきり言った。 
「私は国際的テロ組織「I」と戦う」 
「彼らはパソコンを 通じて情報を交換したり 」
「ネットを利用して 仲間を増やしたり 世界中を脅している」 
「だから私はハッキングして 彼らの居場所や、次の攻撃目標を察知する」 
「その情報 アメリカに流して テロ組織を撲滅 してもらう手助けをするの」 
仁も「僕も手伝うよ」と、彼女に言って協力した。 

それ自体がすごく危険なことだと分かっているけど、 
それを止めることは僕にはできなかった。 

僕たちは、もう少しで中学三年生になる。 
                          
                             つづく




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