Nicotto Town



「初恋」のつづき


「青天の霹靂だ!」

青天の霹靂 (予想だにしない出来事が突然起こる様子)
とは、こういう時に使う言葉なんだろうと僕は思った。

11月の初めに 映画制作会社の担当者から会いたいという連絡があったので僕らは会いに行った。 
担当者は、 
「NHKから連絡があって 紅白歌合戦でこのアニメ映画のコーナーを作りたいということで 
ka-koさんに 出演してもらいたいと言う依頼が来ています」
申し訳なさそうに言った。 

青天の霹靂だ! 彼女が紅白に出演? 
彼女も驚きを隠せない顔をしていた。 
彼女はどう返事をするんだろう。 
彼女は少し考えて 
「私が出演して歌わないとこのコーナーはなくなるのですか?」 
担当者は、 
「それは私には分からないですが・・・」 
困った顔で言った。 

彼女はしばらく目を閉じて考えていた。 
僕はここで今返事をしなくても 
ゆっくり考えて返事すればいいなと思っていた。 

彼女は目を開いて言った。 
「ありがとうございます。 この話お受けいたします」 
彼女は、腹を決めたようだ。 

担当者はホッとして 
「ありがとうございます」 
「NHK の企画が決まったら打ち合わせをしたいと思いますのでよろしくお願いします」 

映画制作会社の事務所を出て僕たちは近くのスターバックスに行った。 
二人ともキャラメルマキアートとシナモンロールを注文し それを持って席に着いた。 

「すごいことになったね」 
僕は言った。 
「ほんとびっくりしたわ!」 
「あなたはいつも私に決めさせるのね」 
「怒ってるのじゃなくて嬉しいの」 
「多くの男性は妻を所有物と 勘違いしている」 
「あなたは、私の意思を尊重してくれる いつも そう」 
「私はいつもあなたが賛成なのか反対なのか それを考えるの」 
「あなたは正直な人だからすぐ顔に出る」 
「今日のあなたは私がどう返事をするのだろうと楽しんでたでしょ」 
「驚いてたいけど嫌な顔はしてなかった」 
「だから私はこの話を受けることにしたのよ」 
彼女はいたずらっぽく微笑みながら言った。 

僕は知っていた。 
彼女は、いつも僕のことを考えながら 行動してくれる。 
僕たちが、高校1年生の時に 突然に彼女から 彼氏ができたと お別れの手紙が来た。 
あの手紙は、中学の時の彼女の友達が僕のことを好きになって 
その友達が手紙に僕と付き合っていてキスをしてラブラブなのよ 
と書いて送っていた。 
その友達は僕が部活の練習が終わって、帰り道で何度か待ち伏せをしていた。 
その友達も彼女と文通をしていたみたいで 彼女の近況の話をしてくれていた。 
3度目に会った時に、彼女に彼氏ができたみたい 
私と付き合ってと半ば強引にキスをしてきた。 
僕は帰宅ルートを変えて、その友達と会うことをやめた。 

彼女は、彼女の友達と付き合っていると、思って僕にあの手紙を送ってきた。 
その時も僕のことを考えて彼女は、辛い思いで僕に別れを告げた。 
結局彼女は、高校時代誰とも付き合わずずっと僕のことを思ってくれていた。 
彼女の見送りの時も、 新大阪のカフェで、僕が嘘で彼女がいると言ったので 
彼女も嘘をついて彼氏がいると言った。 

でも我慢できなくなって 発車間際にホームで彼女は、僕にキスをした。 

キスの意味がわかった。 
だから僕は、こうやって彼女と今一緒にいれる。 
僕もどうしても彼女が忘れられなくて、 
高校時代には、彼女 作らなかった。 
受験勉強とプログラミングと彼女への気持ちを詩にして曲をつけて 
YouTube にアップロードすることに没頭した。 

これからどうなるんだろう?不安より 楽しみの方が、多かった。 
僕は彼女に、 
「分かっているよ。いつも君は僕のことを考えて行動してくれて 痛いほどわかっている」 
そう言うと、 
「当たり前じゃないの。 あなたは私の旦那様だから」 
彼女は微笑んで言った。 


本格的に紅白歌合戦の企画が決まり 正式なオファーが来た。 
映画制作会社と NHK と僕たちのレベルの会社と契約も成立し、 
リハーサルの日程も決まった。 
彼女は NHK の担当者に、 
「アニメ画像を多くして私が映るのを極力少なくしてほしいと」いう依頼をした。 
NHKの担当者は本当にそれでいいのと、驚いていた。 
元々 今年大ヒットしたアニメ映画の企画なので それは了承された。 
彼女はボイストレーニングを 申し込み スタジオに通った。 
スタイリストとのメイク・ヘア・衣装の打ち合わせも終了した。 

大晦日紅白歌合戦の 当日 彼女の歌の順番は、 
NHkニュースの後の後半の最初だった。 

彼女は主題歌を歌った アニメ映画の映像をバックに 
彼女は 歌い切った。 
大歓声が NHK ホールを包んだ。 

僕の両親と姉と妹と彼女の両親とお姉さんも見に来てくれていた。 
彼女のおかげでテレビで見ていた世界に僕たちはいた。 

番組のエンディングでは、彼女は目立たないように 後ろの方で笑っていた。 

彼女は番組スタッフや出演者達との挨拶を終わらせて、 
家族達とも挨拶をして、 僕たちはその晩泊まる事になっていたホテルへ向かった。 
NHK が用意してくれたスイートルームだった。 
部屋に着くと
彼女は早くメイクを落としたいと言って シャワーを浴びにいった。 

その間僕は、ルームサービスで ワインと 
ワインに合うチーズを注文しといた。 
その後僕もシャワーを浴びて 二人で乾杯をした。 

ワインを飲んだら緊張感 は解放されたのか彼女は、そのままぐっすり朝まで寝た。 
僕は彼女の寝顔を見ながら しみじみ あの時広島に行ってプロポーズしたこと 
東京での生活も2年間を振り返った。 
                       つづく





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